ホイッスラー展
2014年9月13日~11月16日
京都国立近代美術館
約半年ぶりの関西プチ美術旅行。
京都国立博物館を出て、バスに乗り、岡崎公園で下車。
2番目の訪問先は、京都国立近代美術館。
「ジャポニスム、日本礼讃に染まる秋、京都」。
下車してびっくり。
京都国立近代美術館では、「ホイッスラー展」。
向かいの京都市美術館では、「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」。
首都圏では開催時期も開催場所も遠く離れている2つの展覧会が、実は繋がった展覧会であって、京都にて紅葉を背景にして共演する。
ホイッスラーといえば、母親の肖像≪灰色と黒のアレンジメント第1章≫(←オルセー美術館展で来日中)。
その認識に長年とどまっていて、他作品については、これまでも見る機会はあったのだろうが、認識の外にあった。
近年、ノクターンと題する風景画の存在を知り、三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900」にて1枚を見て、結構魅力的かなと。
まとまって作品を見たことがなく、私にとって未知の画家である。
<ホイッスラー(1834-1903)>
米・ボストン近郊のローウェルに生まれる。9歳から6年間ロシアで暮らす。21歳、画家を志し、パリへ。25歳、ロンドンへ移住。以降主にロンドンで活躍。
展覧会の構成は次のとおり。
第1章 人物画
第2章 風景画
第3章 ジャポニスム
(前半)ジャポニスム人物編
(間)ピーコック・ルーム(特別展示映像)
(後半)ジャポニスム風景編
人物画と風景画という明快な区分。
約130点の出品。うち油彩画(小型の習作的作品を除く)は20点強。
個人的には、風景画に惹かれる。
特に、第3章の後半に4点出品されているノクターンは、実に魅力的で、何度も眺めてしまう。
No.118≪ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ≫テート美
No.123≪ノクターン:ソレント≫ギルクリース美
No.124≪青と銀色のノクターン≫イェール英国芸術センター
No.125≪ノクターン≫ハンテリアン美(グラスゴー大学附属)
また、第2章に登場する風景画も見応えがある。
No.50≪オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後≫ボストン美
No.73≪ブルターニュの海岸(ひとり潮汐に)≫ワズワース・アテネウム美術館
No.74≪肌色と緑色の黄昏:バルパライソ≫テート美
人物画。
本展主催者の押し作品は、第3章前半に登場するジャポニスム人物編であるらしいが、私はそれほどでも。
No.92≪紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン≫フィラデルフィア美
No.96≪白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール≫テート美
No.97≪白のシンフォニー No.3≫バーバー美(バーミンガム大学附属)
No.104≪三人の女性:ピンクと灰色≫テート美
第1章では、次のあたりかな。
No.20≪灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像≫グラスゴー美
19世紀の英国を代表する歴史家・批評家は、画家の母親の肖像を気にいり、モデルとなったという。.
No.30≪ライム・リジスの小さなバラ≫ボストン美
点数的に多い版画。
「ザ・ビューティフル」展で見たテムズ・セット、ヴェネチィア・セット(アムステルダム・セットは確か1点のみ)のほか、人物画の章には、パトロンの家族を描いたフレンチ・セットがある。
唯美主義
「芸術のための芸術(Art for Artʼs Sake)」をスローガンとして、芸術が、旧来の慣習や道徳的な規律を伝えることを目的にするのではなく、それ自体としての純粋な色と形の美、絵画においては視覚の喜びを追求することを目指した。
「ザ・ビューティフル」展では今一つピンとこなかったが、今回ホイッスラーのノクターンを見ることで、少しはイメージできたような気がする。
ラスキン
ホイッスラー≪黒と金色のノクターン-落下する花火≫(デトロイト美蔵)は、ほとんど抽象絵画を思わせるまでに単純化された作品であった。新しい芸術運動の理解者であったジョン・ラスキンもこの作品は理解ができず、「まるで絵具壷の中味をぶちまけたようだ」と酷評した。このため、ホイッスラーは名誉毀損でラスキンを訴えるに至る。ホイッスラーは訴訟に勝ちはしたものの、多額の訴訟費用を支払うために自邸を売却するはめになった。(Wikipedia)
このエピソードの紹介は欠かせないらしい。デトロイトの作品も見たい。
次の巡回先、横浜美術館にも訪問し、ノクターンなどの風景画をもう一度味わいたい。
これをもって今回の関西プチ美術旅行は終了。次回はいつかなあ。