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黄土水《甘露水》-「黄土水とその時代」(東京藝術大学大学美術館)

2024年09月10日 | 展覧会(東洋・アジア美術)
黄土水とその時代
台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校
2024年9月6日〜10月20日
東京藝術大学大学美術館
 
黄土水
《甘露水》
1919年、国立台湾美術館
 
 台湾出身の彫刻家・黄土水(1895-1930)。
 1915年、東京美術学校彫刻科木彫部に入学し、高村光雲に師事する。同校初の台湾からの留学生だという。1922年、研究生を修了する。
 池袋にアトリエを構え、1920〜24年の帝展に4回続けて入選、「台湾美術界唯一の代表」とみなされ、日本の皇族、台湾政界、関係各界の注目を浴び、活躍するが、35歳で病のため逝去。
 
 
    《甘露水》は、大理石による女性等身大の写実彫刻。第3回帝展(1921年)の入選作。
 逝去後台湾に移り、1958年以降所在不明となっていたが、2021年に個人が保管していることが判明。国に返還され、国立台湾美術館の所蔵となり、2023年2月に国宝に指定される。
 
 
 第2〜5回帝展(1920〜24年)に出品し入選した作品の絵葉書が展示。《甘露水》以外の3点は現在所在不明であるらしい。
 
 
 長く不遇であったようだが、近年の20世紀初頭の台湾美術史の再構築に伴い、再評価されるようになり、2023年3月には台湾にて大回顧展が開催されているという。
 
 本展では、《甘露水》のほか、肖像彫刻・動物彫刻などの黄土水作品が計10点、その他関係資料も展示される。
 
 また、その後の台湾留学生10名の卒業制作の自画像や、1名の絵画作品などが展示(東京藝術大学所蔵)。さらに、黄土水が活躍した時代の日本の彫刻家や洋画家の作品20作家35点も展示される(東京藝術大学所蔵)。
 
 
 
  《甘露水》を見ていると、日本の重要文化財指定の彫刻作品2点を思い起こす。
 
 
 
 
順に、
新海竹太郎(1868-1927)
《ゆあみ》石膏原型
1907年、東京国立近代美術館
2000年重要文化財指定
(本展非出品)
 
萩原守衛(1879-1910)
《女》石膏原型
1910年、東京国立博物館
1967年重要文化財指定
(本展には東京藝術大学所蔵のブロンズ像が出品。画像は東京国立近代美術館所蔵のブロンズ像)
 
黄土水(1895-1930)
《甘露水》
1919年(1921年第3回帝展入選)、国立台湾美術館
2023年台湾国宝指定
 
黄土水
《ポーズせる女》
1922年第4回帝展入選、所在不明
 
 
 これら写実的な女性ヌード像は、西洋美術を吸収しようとする近代美術が必ず通る道で、重要文化財指定は主にその史的価値によるものといえるのだろうか。
 
 
 
 訪問日は、東京藝術大学の「藝祭2024」の開催期間中。大学構内や上野公園の広場はたいへんな人手。時間の余裕なく、寄ることはしなかったが、東博の正門前でのパフォーマンスだけは見る。


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