円山応挙展 -江戸時代絵画 真の実力者-
2013年3月1日~4月14日
愛知県美術館
時折敢行する、関西プチ美術旅行であるが、今回は、行き先を変えて名古屋へ。
目的は、名古屋のみ開催となる、円山応挙。
江戸絵画といえば、伊藤若冲や曾我蕭白といった「奇想の画家」ならば相応に興味がある。
一方、円山応挙については、展覧会で作品を見る機会は多く、たまに見入る作品もあるが、基本は素通りしていた。
「正統派」円山応挙をまとめて見るいい機会と、遠征を決めた。
興味が持てず即退館の懸念もあったが、いきなり「大石良雄図」(応挙の肖像画の次の2番目に登場)に強く惹かれ、それが故なのか、約2時間大いに楽しんだ。
圧倒的な技量をもっての「写実」「リアルの追求」。透視遠近法の利用やトリックアートの着想。
それが、円山応挙、の凄さらしい。
本展の構成は次のとおり。
第1章 「リアルに見えること」の追求
第2章 伝統としての写実
第3章 現実空間との連続性=トリックアート
第4章 技法への確信
終章 応挙画はなぜ好かれ/嫌われたのか?
以下、印象に残った作品(展示順)
No13「大石良雄図」
・“等身大の人物画”。大石良雄と、向かって右に女性、左に若者が描かれる。
・女性と若者は、薄い着物から腕や足が透けて見えている。この女性に強く惹かれた。
No26「三美人図」
・“美人じゃない美人図”。No13の女性と比べても、美人を描こうとしたのではないことは確か。
・“小さな目鼻立ちといったパーツを用いながら、三人それぞれの特徴を強調して、似顔絵のように描き分けている”。
No 2「眼鏡絵(日本名所) 三十三間堂通し矢」
・眼鏡絵(日本名所)が9点展示。うち本作は特に遠近法が強調され印象的。
No15「驟雨江村図」
・雨雲の描写に惹かれる。
No40「雨竹風竹図屏風」
・“雨粒や風の線を描くことなく、竹の形と墨の濃淡やタッチの違いだけで、空間の奥行きと、雨に濡れた竹葉の重み、湿った空気や風の音までも感じさせる”。この手の作品は好みである。
N036「昆虫之図(写生帖 丙帖)」
・蛙、蜂、蝉などの写生。
No25「波上白骨座禅図」
・応挙の白骨座禅図は、前にも府中市美の展覧会で見たことがあるが、本作は、それとは別の、小さなサイズの作品だと思う。近くで見ることができ、西洋の外科書や腑分けを通じて学んだという、骨の描写を楽しむことができた。
No49「郭子儀図襖」
No50「松に孔雀図襖」
・本展のメイン、“兵庫県大乗寺の客殿二間、襖24面分のガラスケースなしの障壁画空間の再現展示”。
3分間サイクルで照明を変化させ、夜明けから日没までの時間の経過を再現している。
・「郭子儀図襖」の素直にかわいい子どもたちに惹かれた。蕭白の憎たらしい子どもたちとは違う。
No56「白狐図」
・女性の色気さえ感じさせる狐の図。
会場では「鑑賞ガイド(兼出品作品リスト)」を配布している。
鑑賞ガイドを参照することなく鑑賞したが、結果として印象に残った作品が観賞ガイドに紹介されている作品とかなり重なったのには少し驚き。