東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

2006年のラファエロ展 (ラファエロ展<その3>)

2013年03月16日 | 展覧会(西洋美術)

Raffaello da Firenze a Roma
2006年5月19日~8月27日
Galleria Borghese, Roma

vs

ラファエロ展
2013年3月2日~6月2日
国立西洋美術館


国立西洋美で開催中の日本初のラファエロ展。
思い出すのは、幸せにも7年前に遭遇することのできたラファエロ展。


2006年8月、カラヴァッジョ巡りと題し、5泊7日で敢行したローマ・ナポリ旅行。
当然、ボルゲーゼ美術館も訪問する。目的は、カラヴァッジョの6作品、およびローマ・バロック彫刻の巨匠ベルニーニの初期の代表作「プロセルピナの略奪」「アポロとダフネ」「ダヴィデ」の3点を見ること。
ネット予約時に知ったのは、その時期に「ラファエロ」展も開催されているということ。
僥倖ではあるが、ラファエロ展開催が故に、カラヴァッジョやベルニーニがカットされないか不安であった。


結果として、期待していたカラヴァッジョ6作品やベルニーニ3作品は全て見ることができた。
通常1階に展示されるカラヴァッジョやベルニーニは通常どおりに展示されていた。


ラファエロ展はというと、記憶の限りで正確ではないかもしれないが。
1階は、通常展示のなかに、ぽつぽつと他美術館所蔵のラファエロ作品が混じるという形。
2階は、約半分の部屋がラファエロ展に充てられ、残り半分の部屋は所蔵作品の通常どおりの展示。


購入した図録で展示作品を振り返る。


ラファエロ展のテーマは、「da Firenze a Roma」、つまり、フィレンツェ時代。国立西洋美のラファエロ展でいえば、第2章にスポットをあてている。
出品作品数は51点。うち油彩画が23点(うち1点はラファエロ作ではない)、残りが素描。
国立西洋美のラファエロ展の作品数23点(油彩画18点、素描5点)と比べると、素描はともかく、油彩画は決定的な差はない。


ボルゲーゼ美所蔵のラファエロが3点出品されている。
ひとつが、1502年頃作の「男の肖像」。
ウルビーノ時代の作なので、本展のテーマからは外れるが、ボルゲーゼ美所蔵なので、展示+図録掲載となったのだろう。
2点目は、「一角獣を抱く女」。
2010年東京都美の「ボルゲーゼ美術館展」で来日した作品。
3点目は、「死せるキリストの運搬」。
国立西洋美ではコピーが出品されているが、ボルゲーゼ美はオリジナルを所蔵している。
もともとペルージャ市民の宝物であったオリジナルを、シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿は、教皇パウルス5世の甥の立場を最大限利用し、強奪に近い手口で入手した。
お詫びのためか、世間の非難をかわすためか、翌年、コピー作品をペルージャに送る。それが、国立西洋美の出品作品である。
本展は、この「死せるキリストの運搬」をメインとして構成されているように見えた。


出品の油彩画22点の一覧である。
1:男の肖像(ボルゲーゼ美)
2:騎士の夢(ロンドンナショナルギャラリー)
3:アレクサンドリアの聖カテリーナ(マルケ州立美)
4:若い男の肖像(ブダペスト国立美)
5:男の肖像(リヒテンシュタイン美)
6:一角獣を抱く女:ボルゲーゼ美)
7:祝福するキリスト(トジオ・マルティネンゴ美、ブレーシャ)
8:聖家族と仔羊(プラド美)
9:女性の肖像(ラ・グラヴィーダ)(パラティーナ美)
10:死せるキリストの運搬(ボルゲーゼ美)
11:信仰(ヴァチカン美)
12:希望(ヴァチカン美)
13:慈愛(ヴァチカン美)
14:神と天使(ウンブリア州立美、ペルージャ)
15:プットーとグリフォンを表したフリーズ(ウンブリア州立美、ペルージャ)
16:美しき女庭師(ルーブル美)
17:コロンナの聖母(ベルリン美)
18:カウパーの小聖母(ワシントンナショナルギャラリー)
19:エステルハージの聖母(ブダペスト国立美)
20:アルドブランディーニの聖母(ロンドンナショナルギャラリー)
21:蝋燭の聖母(ウォルター美、バルティモア)
22:ラ・フォルナリーナ(バルベリーニ美、ローマ)


「美しき女庭師」の登場には本当にびっくり。まさかローマで出会えるとは思わなかった。これが本場イタリア開催のラファエロ展の力なのだろう。


他の作品は。国立西洋美のラファエロ展と比べると。


驚いたことに、No4「若い男の肖像」、No8「聖家族と仔羊」、No11「信仰」、No15「プットーとグリフォンを表したフリーズ」の4点は、国立西洋美でも出品されている。
また、No10「死せるキリストの運搬」は、オリジナルでないが、コピー作品が出品されている。
さらに、No12「希望」やNo13「慈愛」は出品こそされていないが、出品されているNo11「信仰」の関連作品であり、つまり3点からなるプレデッラ(祭壇下部の横長の画面)のうち、ボルゲーゼ美では3点とも出品され、国立西洋美では1点のみの出品であるということ。1点でも雰囲気を味わうことができるといえる。
もう一つ、No19「エステルハージの聖母」は油彩画の出品はないが、素描が出品されている。


くわえて、国立西洋美では出品されていないが、最近別の展覧会で来日した作品も2点ある。
No5「男の肖像」は2012年のリヒテンシュタイン美術館展、No6「一角獣を抱く女」は2010年のボルゲーゼ美術館展。


こうみると、22点中11点は、そのものを見ている、あるいは関連作品を見ている、ということとなる。


他にも、強いて言えば、No2「騎士の夢」(これは素晴らしい作品)の代わりに「聖ゲオルギウスと竜」(ルーブル美)とか、No9「女性の肖像(ラ・グラヴィーダ)」の代わりに「無口な女」(マルケ州立美)とか。
No16「美しき女庭師」だって、代わりに「大公の聖母」が来ていると言えないこともない。


No17~21の聖母子シリーズに代わるものこそないが、これはラファエロ全時代を対象とする国立西洋美とフィレンツェ時代に限定したボルゲーゼ美の展覧会の違いから来るものだとも思える。


結論。
国立西洋美のラファエロ展は、油彩画の出品内容から見ると、ヨーロッパのラファエロ展にも劣らないレベルの展覧会といえるのではないか。
東京でそんな展覧会を見ることができるとは、なんとも幸せなことである。



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