大英博物館展-100のモノが語る世界の歴史
2015年4月18日~6月28日
東京都美術館
いよいよ会期末を迎える大英博物館展に3度目の訪問。
開館10分前から入場待ちの列に着いたが、大正解。
混雑する第1章を飛ばして、第2章の≪ウルのスタンダード≫から鑑賞開始。
≪ウルのスタンダード≫にはまだ1~2人しかおらず、じっくりたっぷり鑑賞。
以降、最後の章まで、同じような感じで鑑賞する。
興味のあるモノ中心の鑑賞としたこともあり、実に効率的に進む。
約1時間で一巡し、二巡目に入るが、どの作品も結構な人だかり。特に壁面展示ケース作品には近づくのは困難な状況。
第1章の作品(のうち最初の展示スペースの9点)には、近寄ることもあきらめる。
お気に入り作品は、過去9回掲載した記事で触れてきたところ。
今回の新たなお気に入り作品。
072≪初めての世界通貨(ピース・オブ・エイト)≫
1573-1598年、ボリビア、メキシコ、大英博物館蔵
『どの国でも両替いらず』
かつてのインカ帝国、現在はボリビア領のポトシ銀山で採掘された銀。
当時のスペイン王国の資金源となる。
中南米における産出量の増加はすさまじく、1520年代に年間148kgが、1590年代には3,000,000kgとなる。
その銀で作られたピース・オブ・エイトは、1570年代の最初の鋳造後、大量に生産され、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカに普及し、世界的な優位を確立する。その優位は19世紀になってもなお保ち続ける。
その産出を支える労働力。当初は南米先住民、やがてアフリカ奴隷に頼るようになる。
かつてないほど大量の銀貨の流入は、世界各地で経済を混乱させる。スペイン王国もそのとおりで、16世紀、王国財政を支えた大量の銀貨を頼って戦争を繰り返す一方で、国内の経済活動は衰退し、やがて破壊的な状況に陥る。
本展では、通貨系のモノが何点も出品されている。
一番古いのは、No.22≪リディア王クロイソスの金貨≫紀元前550年頃。
一番新しいのは、No.98≪クレジットカード≫2009年。
世界の歴史を語るには、芸術作品もできるだけ欲しいところだが、柱の一つはやはり通貨ということになるのだろう。
今回の展示のなかでは、ピース・オブ・エイト、のほか、
069≪明の紙幣≫
1375-1425年、中国、大英博物館蔵
『硬貨のイラストが伝える紙幣の価値』
079≪ナイジェリアのマニラ(奴隷貨幣)≫
1500-1900年、ナイジェリア、大英博物館蔵
『奴隷一人の価値は?』
の計3点が印象に残る。
いままで知らなかったことにたくさん触れられる、実にありがたい、実に楽しい展覧会であった。
※会場内の画像は、主催者の許可を得て撮影したものです。