かわいい江戸絵画
2013年3月9日~5月6日
府中市美術館
かわいい江戸絵画の前期に行ってきた。
前期は4月7日まで、後期は4月9日から。それぞれ約1ヵ月間。
総出品数は168点、前後期で全て作品が入れ替わるというのだから、2つの展覧会が連続開催されるようなもの。
2回目用に半額割引券が付いてくるのはうれしいことである。
標題に「かわいい」とあるから、子供や動物の絵が大半かと思っていた。
それは外れてはいないが、必ずしもそれにとどまらない。
展覧会の構成により、「かわいい」の切り口を確認する。
1:幕開け
2:感情のさまざま
・かわいそう
・健気なもの
・慈しみ
・おかしさ
・純真、無垢
・小さなもの、ぽつねんとしたもの
・微妙な領域
3:かわいい形
・幾何学、省略、くりかえし
・子供の形
・つたなさの魅惑
・素朴をめぐる目
・絵本
4:花開く「かわいい江戸絵画」
・虎の悩ましさ
・応挙の子犬、国芳の猫
・かわいい名画選
多数の画家の作品があるが、なかでも伊藤若冲や円山応挙、長沢蘆雪、歌川国芳の作品が多かった気がする。
府中市美のいつもの江戸絵画展と比べると、画家に偏りがあるかもしれない。
例えば、曽我蕭白の作品は、前期は1点のみ(後期も1点)、要は「かわいい」には縁の薄い画家ということらしい。
前期で印象に残ったのは、伊藤若冲「葡萄と栗鼠図」「托鉢図」、長沢蘆雪「唐子遊図屏風」などであるが、トップは、
◇円山応挙「虎皮写生図」(本間美術館蔵)
左側に虎の毛皮の図。虎の毛皮をおそらく実物大で写生したものらしく、屏風化にあたり、後ろ足と尾の部分は収まりきれず裏側に貼ってあるという(裏側は見れない)。
右上の図は、それとは別に、毛皮を台にのせて、虎の形態を想像してみた図らしい。
実物の虎を見ることのできなかった時代、「写生派」応挙はいろいろと工夫していたのだなあと、愛知県美術館の「円山応挙展」を見たばかりの私には、特に印象に残った。
後期も再訪したい。
【追記】
後期も訪問。
◇長沢蘆雪《群猿図屏風》。
左隻は、白を背景に、水辺で戯れる4匹の黒い猿たち。
右隻は、切り立つ黒い岩山の頂点に、ぽつねんと佇む一匹の白い猿。左隻の猿たちを見降ろしている。
三角形の山、猿の対比、印象に残る作品であった。