東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

フランシス・ベーコン展(東京国立近代美術館)

2013年03月22日 | 展覧会(西洋美術)

フランシス・ベーコン展
2013年3月8日~5月26日
東京国立近代美術館


最初の作品「人物像習作II」の前に立ったとき、これは大変な展覧会に来たのかもしれないと思った。


1)いきなり「ベーコン」

回顧展では、まず「その作家以前」の作品から始まることも多い。
キャプションなしには、その作家の作品とは分からないという作品群。
本展は、「ベーコン以前」の作品はなく、いきなり「ベーコン」から始まる。

キャプションによると、次のような背景があるらしい。
・ベーコンは、回顧展にて、1944年頃の作品をスタート地点に置いていた。
・それ以前にも作品を制作しているが、クオリティが高くないとして、可能な限り廃棄していた。
・本展も、ベーコンの意思を踏まえ、1945年頃の作品から始めることとした。

ちなみにベーコンは1909年ダブリン生、ロンドンを拠点に活躍、1992年没。
(35歳頃の作品がスタート地点)


2)きついガラスの反射

鑑賞者が映ること映ること。見事なくらいの反射。
この時代に、しかもリニューアルしたばかりの東京国立近代美なのになあ。

と思っていたら、「ガラスの反射について」と題するキャプションに気付いた。
・ベーコンは、ほとんどの作品について、ガラス+金縁の額という仕様での額装を指示していた。
・ガラス独特の存在感、見る人と絵の間に隔たりを生むという効果を好んでいた。
・ガラスは絵に統一感をもたらす。見る人との間の隔たりにより、対象をできるだけ引き離す。
・作家の意図を尊重し、所蔵者は、当時の仕様の額装をしている。
・反射で見づらいことは問われた作家は、単なる災難にすぎない、将来何も反射しないガラスができることを望む、と答えた。

なるほど。そもそも額装は、展覧会を開催する美術館の問題ではないな。


3)連続する大型作品

出品点数は33点。
少ないようであるが、大半が「人物像習作II」と同様の大型作品であり、かつ最後の部屋は三幅対(3枚で1点の作品)が4点もあるので、出品点数以上のボリューム感である。


フランシス・ベーコンについては、その名前は認識し、作品もいろんな展覧会で見ているはず(今回知ったが、東京国立近代美や横浜美も作品を所蔵している)。
ただ、どんな作風と問われても、叫ぶ教皇は浮かぶものの、あいまいなイメージしかなかった。
「ジョージ・ダイアの三習作」の広告ポスターを見ても、全く食指が動かなかった(なぜ、この作品が広告ポスターに使用されたのか不思議。有名作品なのだろうか)。


通常であれば、レベルが高そうな作品とかそうでもなさそうな作品とか、お気に入り作品とか出てきて、緩急交えながらの鑑賞となる。
しかし、本展では、全ての作品に対して、常に「強」モードの鑑賞を求められた。
お気に入り作品もあげることができない。敢えてとなると、第1章のほとんど全ての作品。
鑑賞後はかなり疲れた。ベーコン作品に不慣れなこともあるが、それだけではないだろう。


本展の構成は、次のとおり。「身体」がテーマである。
1 移りゆく身体 1940s-1950s(17点)
2 捧げられた身体 1960s(8点)
3 物語らない身体 1970s-1992(8点)
世界中の美術館から出品。出品元の美術館名も豪華(日本からは5点)。


客層は若い人たちばかり。年配客は少ない。
さすが20世紀後半に活躍した画家である。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。