挿絵本の楽しみ~響き合う文字と絵の世界~
2017年4月15日~5月28日
静嘉堂文庫美術館
美術館敷地入口。ここから登り坂を少し歩いて美術館建物に辿り着く。
静嘉堂文庫は、古典籍を約20万冊(漢籍12万冊・和書8万冊)収蔵しているとのことである。
本展は、その20万冊から「響き合う文字と絵の世界」の観点で厳選されたのであろう「挿絵本」を、5つの切り口で見せる。
1 神仏をめぐる挿絵
2 辞書・参考書の中の挿絵
3 解説する挿絵
4 記録する挿絵
5 物語る挿絵
以下、印象に残る挿絵本を記載する。
なお、画像は、ブロガー内覧会にて、美術館より特別に許可を頂いて撮影したものです。
「3 解説する挿絵」より
《本草図譜》岩崎灌園撰
江戸時代・1844年頃
日本で最初の本格的な彩色植物図譜。江戸時代の伝統的な本草学の集大成とも称せられる。灌園自ら観察した植物約2,000種を忠実に写生して彩色を施したもので、20余年の歳月を費やし、1828年に完成。野生種のみならず、多くの園芸種や外国産の植物も掲載されている。それぞれに詳細な解説を付し、「本草学の集大成」にふさわしい出来栄えとなっている。数人の絵師が模写し、予約していた多くの大名家に納められた。
灌園自身はシーボルトとも交流があり、西洋のボタニカルアートは知っていたが、本作は本草学であり西洋の影響は現れていない。らしい。
その色鮮やかさを楽しむ。
傳恒《皇清職貢図》
清時代・1761年刊
18世紀後半、清国に朝貢した諸外国約280の民族について、男女一組ずつ人物画を描き、清国との関係や風俗などを簡潔に解説したもの。乾隆帝が、諸民族と接する地方長官に命じて献上された原図が基となっているため、衣装や容貌についての信頼性が高いとされる。
上:大西洋國夷婦
左下:雲南等府乾玀玀婦
右下:土爾扈特宰桑、土爾扈特台吉婦
「4 記録する挿絵」より
旅、探検調査、そして漂流の挿絵本が並べられる。
《東韃紀行》間宮林蔵述
1810年春、間宮林蔵は単身、樺太西海岸から対岸シベリアに渡り、黒竜江下流で清の交易状況を視察して帰国する。本書はその見聞をまとめたもの。
《環海異聞》
1793年、石巻から江戸に向かう途中で難破、アリューシャン列島の島に漂着。1804年、希望した4名がロシア艦で帰国。同行したロシア使節は日本に通商を求めたが、幕府は拒絶。ロシア側は、帰途、択捉島、利尻島、礼文島などを攻撃。幕府が北方警備、蝦夷地経営の重要さに目覚める契機となった。
本書は、ロシアでの見聞および帰国途路の記録(帰国者からの聞書き)に、仙台藩医大槻玄沢(1757-1827)自身の知見を補って著したもの。江戸時代の漂流記の代表作である。
《亜墨新話(初太郎漂流記)》
1841年秋、13人の乗組員を乗せて兵庫を出帆した樽廻船永住丸は、犬吠埼の沖で風雨のため難破。4ヶ月余の漂流の後にルソン・メキシコ間を運航していたスペイン船に救助される。一行はカリフォルニア半島南端に上陸、そこからメキシコに足を踏み入れる。
本書は、2年後に帰国した乗組員の一人からの聞書きを、前藩主・蜂須賀斉昌の強い要請により、阿波藩の識者たちがまとめたもの。
《広東漂船雑記》
1796年、広東省の大型漁船が仙台領石巻近くの海浜に漂着した事件を記録したもの。大槻玄幹編。
絵巻とは異なった「文字と絵が同じ所で支え合って成り立っている」様を楽しむ。
書籍の展示は、1冊につき見開き2頁限りの宿命。他の頁も見たいな。