東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

サンジミニャーノのエロチックな壁画

2017年09月23日 | 西洋美術・各国美術
巖谷國士
『ヨーロッパの不思議な町』
筑波書房、1990年初版
「イタリアの不思議な町」の章から抜粋。
 
 
(ボローニャの他に)もうひとつ、別の「百塔の町」がある。サンジミニャーノがそれである。
   いまは14の塔だけがのこり、どことなくロマンティックな後光を帯びてしまっているトスカーナ州の観光地のひとつだが、草ふかい丘のかなたからこの城郭都市を遠望し、ゆっくりと近づき、やがて門をくぐり、そびえたつ塔また塔を見あげたときの感動は、予想を上まわるものがある。トゥーリストでいっぱいになっていても、ここは誇り高い不思議な町だ。
   サンジミニャーノの14の塔は、いずれも角ばった直方体に近いすがたをしている。ほとんど異星の都市のビル街か、それとも墓地を思わせたりする。これも、不思議を可視のものにするイタリアにしかありえない町だろう。
 
 
 
 
 
   1990年代の冬のこと、フィレンツェ旅行の際、ついでに周辺の町も、とサンジミニャーノ観光を試みる。
 
   巖谷氏の文章と掲載写真が私の行き先選択に大きな影響を与えたのだろう、美術については情報ゼロの状態だが、塔が見れれば充分。
 
   早朝、フィレンツェから電車(バスが便利だと後で知る)でシエナへ。13時まで、大聖堂、大聖堂付属美術館、カンポ広場、市庁舎および国立美術館を超駆け足で見学した後、バスでサンジミニャーノへ。
 
   ツーリストオフィスで紹介してもらった宿は、オフシーズン、町でただ1軒の営業だったよう。部屋に案内してくれた宿の主人は、窓からの眺望を自慢気に私に見せるが、私は素っ気ない反応をする。が、翌朝、窓から見える朝焼けのトスカーナの丘陵の美しさに感嘆することとなる。

   サンジミニャーノでは美術作品を鑑賞することなく終わる。が、土産物屋にあった絵葉書に驚愕する。
   こんなエロチックな、普通にエロチックな絵があるのか。
   サンジミニャーノの何処かにあるのか。サンジミニャーノにあるなら見たいものだが、オフシーズンの午後遅くでは開いていないだろう(当時の美術館の開館時間は、午前中、せいぜい13-14時までが多かった印象)し、翌日は朝一で戻る予定だし。
 
 
 
 
   以降、気になる存在であり続けている本作《結婚の諸場面》は、サンジミニャーノのポポロ宮殿(旧市庁舎)3階にある市立絵画館の「ポデスタの部屋」にある壁画で、1303-10年頃にメンモ・ディ・フィリップッチョが制作したとのことである。
 
 
 
 
   今回確認すると、サンジミニャーノには魅力的な美術作品が多数あるようだ。じっくり鑑賞したいものである。
 
タッディオ・ディ・バルトロ
《地獄》
サンジミニャーノ大聖堂
 


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