ウフィツィ美術館展
黄金のルネサンス ボッティチェリからブロンヅィーノまで
2014年10月11日~12月14日
東京都美術館
<公式HPより>
本展は、≪パラスとケンタウロス≫をはじめとするボッティチェリ作品を多数紹介するほか、アンドレア・デル・サルトやポントルモ、ブロンヅィーノら、16世紀のフィレンツェ美術を牽引した主要な画家たちの約80点に及ぶ作品を通じて、豊かで多様なフィレンツェ・ルネサンスの真髄に迫ります。
<本展の構成>
1章 大工房時代のフィレンツェ
2章 激動のフィレンツェ、美術の黄金期の到来
3章 「マニエラ・モデルナ(新時代様式)」の誕生
4章 フィレンツェ美術とメディチ家
ボッティチェリ以外の作品について。
1~2章 フィレンツェ美術の黄金時代
ペルジーノ
サプライズが、ペルジーノ。
ペルジーノらしい作品、ペルジーノらしくない作品が、2点と1点。いずれも見応えあり。2007年の損保ジャパン美「ペルジーノ展」以来のファンなので、うれしい。
No.16≪哀れみのキリスト(ピエタのキリスト)≫1497年頃
フィレンツェ貯蓄銀行蔵。フレスコ画。サヴォナローラの戒めに従った作品として、その世界では評判がよかったとのこと。
No.17≪悲しみの聖母≫1500年頃
工房作品。ペルジーノのイメージに合わない、くっきりはっきりした油彩画。北方絵画を模写したものだろう。
No.18≪聖母子と二人の聖人≫1490-1500年
パラティーナ美術館蔵。ラファエロの初期作品にこんな表情があったなあ。
ギルランダイオ
フィリッポ・リッピ
フィリッピーノ・リッピ
大工房代表。
後者二人は、形だけ出品。
ギルランダイオ作品は、大作で、今修復したばかりような立派な祭壇画。ただ、ギルランダイオに期待してしまう世俗性には欠ける。
No.03≪聖ヤコブス。聖ステファヌス、聖ペテロ≫1492-94年
アカデミア美術館蔵。
なお、ギルランダイオの弟子バルトロメオ・ディ・ジョヴァンニが3作品、フィリッポ・リッピの弟子ヤコボ・デル・セライオが4作品と、大工房らしく弟子作品は厚い。
3~4章 マニエリスム
展覧会副題には「ブロンヅィーノ」の名前があり、展覧会説明にも「アンドレア・デル・サルトやポントルモ、ブロンヅィーノら、16世紀のフィレンツェ美術を牽引した画家」とあって、アンドレア・デル・サルトやポントルモ、ブロンヅィーノが厚いものと勝手に想像していたが、それは期待しすぎだったか。
アンドレア・デル・サルト
No.48≪自画像≫
No.47 素描(聖母子、聖ヨセフ、幼い洗礼者聖ヨハネ)
No.46≪ピエタのキリスト≫アカデミア美術館
例外はアンドレア・デル・サルト。ヴァザーリによるエピソード付きの≪自画像≫もよいが、通常描かれる悲しむ聖母や女性たち・天使をカットし、キリストのみに限定したというフレスコ画≪ピエタのキリスト≫は会場の照明効果もあって印象的。
ポントルモ
現存しない原画の「模写」1点。
前回≪パラスとケンタウロス≫来日時の1980年の展覧会では、≪受胎告知≫(サンタ・フェリチタ教会、フィレンツェ)が出品されているので、今回は、前回と同等か前回より上のレベルを期待していたのだが。
ロッソ・フィオレンティーノ
肖像画2点。
ブロンヅィーノ
No.67≪公共の幸福の寓意≫
他、素描1点、工房作のメディチ家のミニ肖像画6点、下絵担当のタペストリー1点
数は揃えているが、期待する冷たさに欠ける。
No.67は、それらしい寓意画だが、小さいのはいいとしても、冷たさが。
冷たい肖像画が欲しかったところ。
最後に展示のアレッサンドロ・アッローリは感じのよい作品。
No.74≪受難の象徴をともなう嘆きの聖母≫
シニョーリア広場を描いた作品は、お約束の出品。
No.75≪シニョーリア広場の「敬意の祝祭」≫
本展は、まずはボッティチェリ6点の展覧会と考える。
全盛期の作品≪パラスとケンタウロス≫は圧倒的であるし、さらに初期から晩年までのボッティチェリの魅力的な作品が並ぶ。
さらにプラスで、好みの画家や作品(私の場合はペルジーノなど)を楽しむことができるのだから、これがイタリア・ルネサンス展であることを思うと、充分すぎるほど。極めて満足度の高い展覧会である。