藝大コレクション展 2020 - 藝大年代記(クロニクル)
2020年9月26日〜10月25日
東京藝術大学大学美術館
定期的に開催される藝大コレクション展。2020年度は、諸情勢により当初予定より約3ヶ月半遅れての開催。
2部構成で、本館地下2階の展示室で展開される。全16頁のカラーパンフレットが用意されている。
【本展の構成】
第1部 「日本美術」を創る
おもに東京美術学校のコレクション形成で重要な時期を、作品とともに紹介する。
イントロダクション
1 1889年 東京美術学校と最初期のコレクション
2 1896年 黒田清輝と西洋画科
3 美校の素描コレクション
4 1900年 パリ万博と東京美術学校
5 1931年 官展出品・政府買上作品
第2部 自画像をめぐる冒険
東京美術学校の卒業制作、そして自画像を年代順に紹介しながら、学史を辿る。
・イントロダクション
・自画像コレクション
・卒業制作
・ヨーゼフ・ボイスと東京藝術大学
第1部では、藝大コレクションの名品を素直に楽しむ。
・原田直次郎《靴屋の親爺》1886年
・高橋由一《鮭》1877年頃
・鏑木清方《一葉》1940年
など。
国宝《絵因果経》は、天平時代(8世紀後半)の制作だが、色鮮やかで状態が良く見えるのは何故なのだろう。
第2部では、100点を超える自画像の展示に長い校史を感じさせられる。
生徒の卒業制作の一環でつくられた「自画像」コレクションは、1898年から、戦中戦後の混乱期(1942-49頃)および戦後の約20年間(1955-76)の中断を除いて、継続されており、現在6,000件超が所蔵されているという。
1898年から1954年までに制作された自画像100点超が上下2段展示。
中国や朝鮮・台湾出身の生徒の自画像も多い。
一方、女性の生徒の自画像はほとんどない。1946年までは男子校だからなのだが、それでも戦前期に女性の自画像が1点登場する。それも白人女性。外国人女性を特例で受け入れることがあったらしい。
マリー・イーストレーキ(1886〜1925)
《自画像》
1907年3月
アメリカ国籍で「祖父は日本に近代歯科医学を初めてもたらせた人物、父は英国辞典の刊行や英語教育で名高い人物、母は日本人、普通に日本語を話すが容貌はアメリカ人風」の女性であったようで、卒業後も意欲的な姿勢を見せていたが、「1913年に日本人の銀行員と結婚し、消息を絶ってしまった」という。
私は知らなかったが、その世界では知られた女性であるようだ。
大学の門は僅かな隙間を残して閉められている。美術館訪問者は美術館以外の大学敷地に入ることを禁じられている。2階のレストランは美術館訪問者に開かれているが、1階の昔ながらの大学食堂は学生・教職員関係者以外の利用は禁じられている。平日であったが、学生自体をあまり見かけない。
100年前に描かれた結城素明先生の卒業制作の作品(1897年)、5年前にも見たのですが、改めて今日見て感銘を受けました。
今年は藝祭も中止になってしまって…、まぁ、同展が開催にこぎつけただけでも、よしとしましょう。
コメントありがとうございます。
期待していたよりもずっと楽しめる展覧会でした。
私的には、原田直次郎の肖像画です。埼玉県立近代美術館で開催された回顧展はもう4年前のことになりました。
藝大美術館の次の展覧会「渡辺省亭」展も期待しているところです。