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若冲「動植綵絵」、小野道風「屏風土代」 - 【後期】「日本美術をひも解く - 皇室、美の玉手箱」展(東京藝術大学大学美術館)

2022年09月13日 | 展覧会(日本美術)
日本美術をひも解く - 皇室、美の玉手箱
2022年8月6日〜9月25日
東京藝術大学大学美術館
前期1:〜8/28、前期2:〜9/4
後期1:8/30〜、後期2:9/6〜
 
 宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する皇室の珠玉の名品74件に、東京藝術大学のコレクション8件を加えた82件。
 
 2021年に宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品として初めて国宝に指定された全5件が出品される。
 
・小野道風《屏風土代》(後期2) 
・《春日権現験記絵》
 (巻四:前期2、巻五:後期2)
・《蒙古襲来絵詞》
 (前巻:前期2、後巻:後期2)
・狩野永徳《唐獅子図屏風》(前期1)
・伊藤若冲《動植綵絵》30幅中10幅(後期1)
(芍薬群蝶図、梅花小禽図、向日葵雄鶏図、紫陽花双鶏図、老松白鶏図、芦鵞図、蓮池遊魚図、桃花小禽図、池辺群虫図、芦雁図)
 
 
 
 前期に引き続き、後期を訪問。
 前期から巻替えまたは場面替えされる絵巻が目当てだったが、一番楽しんだのは、伊藤若冲《動植綵絵》となる。
 
 
 
伊藤若冲
《動植綵絵》30幅中10幅
江戸時代、1757年頃〜1766年頃
 
 若冲《動植綵絵》を観るのは、最大320分の入場待ち行列がニュースとなった2016年の東京都美術館「生誕300年記念 若冲展」以来6年ぶり5度目。
 過去4度の鑑賞は、30幅全ての展示(ただし、初見であった2006年の三の丸尚蔵館では5期に分けて6幅ずつの展示)であった。
 今回は10幅の展示ということで、重点鑑賞ポイントに置いてなかったが、実際に目の前にすると、10幅でも充分すぎるほどの見応え。
 濃厚な画面なので、一度に観るにはこのくらいの点数がちょうど良いのかも。
 私の鑑賞時(夜間開館のある土曜の午後4時過ぎ)は、少し待てば最前列で鑑賞できる状況。
 
展示順に、
・芍薬群蝶図
・老松白鶏図
・紫陽花双鶏図
・向日葵雄鶏図
・蓮池遊魚図
・池辺群虫図
・芦鵞図
・芦雁図
・梅花小禽図
・桃花小禽図
 
 今回は特に「池辺群虫図」。
 池の周りの小宇宙。
 虫、爬虫類、両生類、たくさんの種類(60種類以上らしい)の小さな生き物たちが画面中に細密に描かれているのを、一所懸命見つめる。
 
 隣の「蓮池遊魚図」、魚たちのみならず、装飾的な蓮の描写に見惚れる。
 他の画、紫陽花、向日葵、白い鵞鳥、直下する雁も、楽しい。
 
 
 
小野道風
《屏風土代》
平安時代、928年
 
 書は関心外なので、価値は分からないが、「新指定の国宝を実見した」ことが重要。
 
 また、鎌倉時代(13世紀)に描かれた伝 頼寿 筆の《小野道風像》(軸装)も出品される。
 筆に全身全霊を傾ける横顔肖像を面白く見る。
 
 
 
《蒙古襲来絵詞》後巻
鎌倉時代・13世紀
 
 初見となる《蒙古襲来絵詞》全2巻。
 前期は、前巻(詞9・絵10場面)の展示。
 公開は、絵が第5〜7場面、長さベースでは全体の2割強くらい。
 
 後期は、後巻(詞7・絵11場面)の展示。
 公開は、絵が第2〜3場面、長さベースでは全体の4分の1くらい。
 
絵2
石築地前を出陣する季長一行
絵3
兵船で漕ぎ出す季長たち
 
 全体から言えば、ごく一部しか見ていないこととなり、物足りなさが残る。
 
 
 
《絵師草紙》
鎌倉時代・14世紀
 
 過去何度か見ている絵巻。
 全1巻、絵は3場面。
 公開は、前期が第1場面、後期が第2場面。
 
第1場面(前期)
 貧しい生活を送る宮廷絵師のもとに、ある日突然、伊予国に知行地を賜るとの吉報が届く。
 絵師一家は大喜び、親類縁者や弟子たちを集めて、飲めや歌えやの宴を開く。
 
第2場面(後期)
 宴会の翌日、伊予国の知行地を検分するために派遣した使者の文を受ける。
 領地の農民たちは、農作業ではなく武術の稽古に励むばかり、年貢米は他の者が取り立ててしまっていて何も残っていない。
 その報告に絵師は落胆、一家は落ちぶれるばかり。
 
 次の第3場面は、残念ながら本展では公開されない。
 そういえば、これまで第3場面を見たことはないかもしれない。
 今回の後期展示のように、第2場面のみの公開だと、公開面積が少なすぎて、肩透かしを食らった感じ。
 
 
 
岩佐又兵衛
《をくり(小栗判官絵巻)》巻二
江戸時代・17世紀
 
 全15巻、全長約324メートルにも及ぶ大作。
 2015年の三の丸尚蔵館「絵巻を愉しむ」展で初めて実見。第1・7・8・11・13・15巻が数場面ずつ公開、その奇想天外のストーリー展開と、又兵衛風のくどすぎる場面展開に、虜になる。
 2019年の東博「御即位30年記念 両陛下と文化交流」展では、第10巻の19段のみの公開と、物足りなかった。
 
 今回の公開。
 前期展示が第1巻の2〜6段(全9段中)。
 後期展示が第2巻の5〜9段(全9段中)。
 
 第2巻は、元服した小栗の妻選び。
 
 髪の長いを迎ゆれば、蛇身の相とて、送らるる。
 面の赤いを迎ゆれば、鬼神の相とて、送らるる。
 色の白いを迎ゆれば、雪女、見れば見醒めもするとて、送らるる。
 色の黒いを迎ゆれば、げす女、卑しき相とて、送らるる。
 
 と、3年の間に72人もの御台を迎えるが気に入らず送り返した(半月に1人の計算となる)小栗は、御台を決めてもらおうと、鞍馬詣に向かう。
 途中、深泥池の畔で横笛を奏でると、その音を聞きつけた深泥池の大蛇が小栗を見初める。
 
 本格的なストーリー展開/グロテスク描写はまだ先だが、又兵衛風の描写を面白く観る。
 
 
 
その他は、
 
《春日権現験記絵》巻5(前期は巻4)
《北野天神縁起絵巻(三巻本)》巻下(後期は巻中)
尾形光琳筆《西行物語絵巻》巻3(前後期で場面替え)
《酒伝童子絵巻》巻4(前期は巻2)
 
など、絵巻を中心に楽しむ。
 
 絵巻の展示は、保存上の理由か、展示スペース上の理由もあるのか、ごく一部の巻の展示で、公開する場面もその一部、となりがち。
 一度にもっとたっぷり観たい。
 そんな機会を、新施設移行後の三の丸尚蔵館は設けてくれるだろうか。
 
 
 
 私の関心は、江戸時代以前の絵巻/絵画に集中したが、明治時代以降の作品も多く出品されている。
 
 通期展示の高橋由一《鮭》1877年頃、前期は北斎《西瓜図》とのペア展示であったが、後期はペア作品がない。ただ、壁が変わって距離もあるが、壁に沿って鑑賞していくと、若冲《動植綵絵》10幅と並び展示となる。意外と違和感がない。
 後期展示の安藤緑山《柿置物》1920年、そのリアルな柿ぶりを楽しむ。
 
 
 
【本展の構成】
序章 美の玉手箱を開けましょう
1章 文字からはじまる日本の美
2章 人の物語の共演
3章 生き物わくわく
4章 風景に心を寄せる


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