東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

堀江物語絵巻(MOA美術館)

2012年05月21日 | 展覧会(日本美術)

絢爛豪華 岩佐又兵衛絵巻(3期)堀江物語絵巻
2012年5月11日~6月5日
MOA美術館


 山中常盤、浄瑠璃に引き続き、第3期の堀江物語絵巻に行ってきました。
 堀江物語絵巻は、又兵衛の作とする説は否定されているそうですが、その残酷さ度合いでは3絵巻中ナンバー1といいます。
 どれだけ残酷なのかを期待しての訪問。


 堀江物語絵巻は全12巻、1巻あたりの長さは11.78~12.51メートル、全長は約148メートルと、山中常盤、浄瑠璃とほぼ同じです。
 このため、展示方法も山中常盤、浄瑠璃と全く同じです。つまり、全12巻が公開されていますが、全ての巻がフルオープンというわけではない。
 フルオープンあるいはほぼフルオープンと考えてよいのが、第1巻、第3巻、第9巻、第10巻。それ以外の巻は5割から8割程度の公開。これは山中常盤、浄瑠璃、堀江とも全く同じです。


 堀江の見どころである(?)残酷な場面が含まれる巻は、第5~8巻、第11巻、それからカッコ書きで第12巻(図版で確認したわけではなく、あらすじからの想像)。
 つまり、残酷な場面が含まれる巻は全てフルオープンの対象外となっています。


 このため、(あらすじから想像するに)残酷な場面の多くが今回の公開対象から外れています。


第5巻。
 公開は最初の2場面目まで。「堀江は伏兵とたたかい、まず2名の首を切り落とす」までが公開対象。
続きの
 「堀江と従者たちは、原の息子3人を倒すなど、奮戦し、敵を大敗させる」
 「堀江は、残った従者4人のうち1人に、母と妻への形見の品を渡して届けるよう命じ、忘れ形見の月若が生き永らえることができたら、出家して親の菩提をとむらうよう申しつけ、三人の従者とともに腹を切る」
 「逃げた原の家来は戻ってきて、堀江と従者たちの首を切り、長持ちに入れて運ぶ」
は公開対象外。


第6巻。
 公開対象は、前半部分の「夜が明け、姫は堀江の館に戻ると言い出す。原は姫を留め置きつつ、国司のもとにいって謀り、姫を堀江の館に送るとみせかけ、国司の館に連れ込んでしまう」とおとなしい場面。
 続きの「その間、原の館へは堀江をはじめとする敵味方の首と屍骸が運び込まれ、企てに反対した次郎を除いて他の息子たちは皆討ち死にしたと告げられる。泣き叫ぶ家族。」
は公開対象外。


第8巻。
 公開対象は、後半部分の「残された月若は、国司の意向で淵瀬に沈められるところを郎党の情けで朽木の洞に捨てられる」とおとなしい場面。
 前半部分の「姫の屍骸は原の邸へ届けられる。仰天した姫の母は、夫の原につかみかかり、子を皆失ったのはあなたのせいだ、自害せよと迫る。憔悴した原が嫁たちの手で奥に退いたすきに、母は刀を口にくわえ、姫の元に体を倒して自害する」
は公開対象外。


第12巻。
 公開対象は、後半部分の「堀江の館跡に新しい館を建て、昔の郎党が次々に集まり、堀江は富貴の家となる」とどうでもいい場面。
 前半部分の「太郎は、存命であった原を連れださせ、汝は仇だが、母の父でもあると、命だけは助け、原の頭髪をそり落として笑い者にする」
は公開対象外(これは残酷ではないか)。


以上のとおり、5、6、8、12巻の残酷な場面はほぼきれいに公開対象外となっています。


逆に第7巻と第11巻では公開対象に残酷な場面が含まれています。それも実に強烈な場面が。


第7巻。
 公開対象。
 「姫は国司に懇願して赤い母衣に包まれた夫の首と対面する」
 「姫は夫の首に抱きついて消え入るように泣く」
 「国司は首を縁下に蹴落としたが、姫はそれでもなお、母衣に抱きついて泣く」


 赤い母衣に包まれた夫の首を運んできた女官。夫の首に抱きつく姫。国司に蹴落とされて縁下に転がっている堀江の首。まるでサロメの世界。


 これら3場面は強烈ですが、それでもなお第7巻では、最初の「原は堀江たちの首を国司の許に運ばせる(戸板にたくさんの首を乗せて担ぐ)」場面、最後の「姫は、国司の刀で自害する」場面が公開対象外として残っています。


第11巻
 公開対象。
 「安藤は二人の子と国司の妻を縄にかけて引き出し、国司の妻の目の前で二人の子供を刺し殺す」
 「そのあとで国司の妻の首をはねる」


 子と妻に直接手を下したのは、堀江の子・太郎ではありませんが、その場面に姿はありますので、太郎の指示(承認)による行為でしょう。
 ちなみに、会場では、絵巻の場面を説明するキャプションがほぼ各場面ごとに用意されていますが、第11巻のこの2場面についてはキャプションをつけていません。会場に用意されているチラシもこの場面の説明は避けています。


 その後の場面で、国司に対して太郎自身が手を下します。


 これらはすごい。描写自体に強烈なインパクトはないですが、どういう光景かちょっとでも想像してみると、強烈すぎる場面。う~ん。この絵巻を見るためだけに熱海を訪れる私のような観客は別として、1回の鑑賞での残酷な場面のボリュームとしては、確かにこの7巻と11巻の数場面で十分かもしれない。
 温泉ついでに、MOA美術館といえば光琳の「紅白梅図屏風」だよねえ、とのイメージで訪れる観客にとって、残酷な場面が満載の絵巻・・・。子供も多いし、心臓の弱い人も多いだろうし。


 となると、この絵巻の主要な(残酷)場面を一通り実物で鑑賞するには、どうやらこの先何年(何十年?)の期間が必要となるようです。


 さて、今回の訪問で3絵巻を無事皆勤。
 「すぐにでもまた見たい」「じっくり見たい」のが山中常盤。お気に入りです。
 「今回見ていない(残酷な)場面をいつか見たい」のが堀江。
 「今後は、第4巻~第5巻の場面の一部を見て、雰囲気を味わえば充分かなあ」が浄瑠璃。
というところでしょうか。 



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