東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「ボッティチェリ特別展 美しきシモネッタ」(丸紅ギャラリー)

2022年12月09日 | 展覧会(西洋美術)
丸紅ギャラリー開館記念展3
ボッティチェリ特別展
美しきシモネッタ
2022年12月1日〜2023年1月31日
丸紅ギャラリー
 
「一枚だけの、美術展。」
 
 
 2021年11月に開館した丸紅ギャラリーを初訪問。
 
 丸紅が所蔵するボッティチェリ《美しきシモネッタ》、ただ1作品だけの展覧会。
 
 来歴や、真贋をめぐる騒ぎ、モデルであるシモネッタの生涯など、本作品にまつわる情報が取り囲む。
 
 本作品は、2016年の東京都美術館「ボッティチェリ展」以来、6年ぶり(1969年の丸紅所蔵後では)8度目の一般公開となるようだ。
 
 
 
 現時点でシモネッタを描いたといわれるボッティチェリ作(工房作を含む)の肖像画として、本展では、丸紅のほかに、フランクフルトのシュテーデル美術館、ベルリン国立絵画館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、オックスフォードのアシュモリアン博物館(素描)、フィレンツェのピッティ美術館の5点を挙げる。
 そのうえで、別女性がモデルの可能性が高いもの、工房作・後年の模作の可能性が高いものを除き、丸紅、フランクフルト、オックスフォードの作品をボッティチェリがシモネッタを描いた肖像画とし、3点を比較したパネルを用意する。
 
 なお、「リッチモンドのクック卿旧蔵」作品は、本展では、シモネッタの肖像画とは考えにくいとして、除外されている。
 
 
 
 書籍の展示にも注目する。
 
 他の画家が描いたシモネッタの肖像画として、コンデ美術館が所蔵するピエロ・ディ・コジモ作品がパネル紹介される。
 あわせて1899年刊行のコンデ美術館所蔵カタログが展示され、同作品の図版掲載ページを見せる。当時はポッライウォーロ作とされていたようだ。
 
 来歴については、かなり丁寧に紹介されていて、私的には初めて知る情報も多く、興味深く読む。
 あわせて、過去の所蔵者時代の書籍。
 本作をボローニャで発見・購入したJ=B=Pルブラン(女性画家ヴィジェ=ルブランの元夫)による『1807年から1808年にかけて行ったスペイン、南仏、及びイタリア旅行で蒐集した全作品復刻版画選集』。なんと、チマブエ作と書かれている。
 ロンドン個人蔵の時代、1892年冬季のロイヤルアカデミーの展覧会に出品されたときの展覧会カタログ(2018年復刻版)。
 ベルリン個人蔵の時代、当所蔵者が所蔵する絵画をまとめた1914年刊のカタログ。
など。
 
 真贋騒ぎについても、発端となった1969年10月の讀賣新聞記事から、疑いが晴れるまでの経緯が紹介されている。
 
 
 1点特化型の展覧会も楽しいもの。
 
 
 丸紅1階ロビーに置かれた巨大写真。
 
 外からも見える。


7 コメント

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Unknown (k-caravaggio)
2022-12-14 19:30:01
むろさん様
コメントありがとうございます。
シュテーデル美術館については、きちんと調べたことはないのですが、過去の来日作品では、東日本大震災を東京で経験したフェルメール《地理学者》もありますが、一番印象的なのは、2002年京博の展覧会に出品されたレンブラントの大画面《目を潰されるサムソン》ですね。この一枚を再見するためだけでもフランクフルトに行きたいです。
岡田氏の書籍についてご紹介ありがとうございます。図書館で借りたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。
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シモネッタの肖像画に対する考え方 (むろさん)
2022-12-13 01:38:19
岡田温司著「ヴィーナスの誕生 視覚文化への招待」(みすず書房2006年)にシモネッタの肖像画等に向き合う時に心掛けておくべきことが述べられていました。
「シモネッタ伝説はボッティチェリの芸術を味わおうとするとき、無視できない額縁を提供している」「今日の私たちが学問的な厳格さという名目のもとで、あまりにも厳密に意味や象徴を同定しようとすることは、かえって絵をやせ細らせ、鑑賞体験を貧困なものにしてしまうことになりかねない」として、当時の宮廷愛と騎士道、誌的夢想など(シモネッタ伝説もその一つ)をイメージの源泉としてプリマヴェーラやヴィーナスの誕生ができあがったことを論じています。なかなかに興味深い考え方であり、お読みでないならご一読されることをお勧めします。
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シュテーデルのシモネッタ (むろさん)
2022-12-12 01:28:57
ボッティチェリ工房作でシモネッタの肖像とされる作品では、丸紅、シュテーデル、ベルリンの3点が優れていると思っています。シュテーデルの絵は石鍋氏の「フィレンツェの世紀」の表紙にもなっているし、シモネッタが胸に下げているカメオについて18章のロレンツォ豪華王のカメオコレクションの中で詳しく論じられています。フランクフルトへ行ったのはもう30年以上前なので記憶も薄れていますが、シュテーデルはあまり大きくない美術館なのにファン・エイク、フレマールの画家、フェルメール、レンブラントなど珠玉の作品が多いので、是非訪れていただきたい美術館の一つです。

ロンドンNGのシモネッタの肖像とされる絵は丸紅の絵をもっと地味にしたような感じであり、あまり評価されていないのか展示されることが少ないようです(何度か行っていますが見た記憶がありません)。裏面に天使の絵がありますが、これはあまりボッティチェリらしくない作品です。

シモネッタとジュリアーノのジョストラのこと、「プリマヴェーラ」や「ヴィーナスの誕生」との関係などは若桑みどり著「フィレンツェ」(世界の都市の物語13文芸春秋1994年)に簡潔に書かれています。なお、シモネッタとされる肖像画とジュリアーノとされる肖像画が右向きと左向きで数点残されていることは、これらの絵の目的が単なる人気のあった美男美女ということではなく、パッツィ家の陰謀事件を受けたメディチ家による政治的な宣伝の意図があったことを思わせます。

丸紅ギャラリーへは(展示の解説が興味を引くので)近いうちに行こうと思っています。
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Unknown (k-caravaggio)
2022-12-11 07:04:19
むろさん様
コメントありがとうございます。
むろさんさんからいただいたコメントを再読させてもらってから本展を鑑賞しました。
いつもありがとうございます。
シュテーデル美術館の作品を私も観てみたいですね。
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シモネッタ (むろさん)
2022-12-10 01:24:25
昨年10/5の貴ブログ記事「丸紅ギャラリーが開館」に対して投稿したコメントがシモネッタに関する情報としては詳細に書いたつもりなので、これを再度ご確認いただくとよろしいかと思いますが、この1年でこれに付け加える情報は特にありません。
https://blog.goo.ne.jp/k-caravaggio/e/ac0b2eb926a10746fa5283f54e8a229a#comment-list

この中で取り上げたシモネッタの肖像として見ていないのは、クックコレクションの絵とアシュモレアンの素描ですが、今後も見られる可能性は低そうです。(オックスフォードへも行ったのですが、シモネッタの素描は展示されていませんでした。)シャンティイはピエロ・ディ・コジモの絵以外でもボッティチェリ工房の豊穣の寓意やラファエロの聖母子・三美神など、見るべき作品がたくさんあり、イタリア・ルネサンス好きにとっては(フランス国内ではアヴィニョンとともに)お勧めの町です(但しベリー公の時祷書の展示はコピーです)。

各シモネッタ作品の真贋判定ですが、ライトボーンのカタログレゾネを始め、研究者の意見としては(丸紅もクックコレクションも含め)どれも工房作と判定されているようです。(矢代幸雄や摩寿意善朗は「もし真筆があるとすれば、このノアーク博士のシモネッタ(=現丸紅作品)」としていますが。)
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Unknown (k-caravaggio)
2022-12-09 12:51:44
KAZU様
コメントありがとうございます。
1作品の展覧会も楽しいです。
丸紅ギャラリーは、日曜日は休館(月曜日は開館)ですので、ご留意ください。
引き続きよろしくお願いいたします。
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Unknown (kazu)
2022-12-09 09:56:06
以前朝日新聞にも載っていてとても気になっていました。1作品の展覧会もいいですね。
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