【講演会】グエルチーノとバロック美術
宮下規久朗氏
2015年5月17日
国立西洋美術館
盛り沢山な内容を1.5時間で収めるため、展開がスピーディ、7章だての話だったがその章名もメモしきれないほど。
レジュメやかろうじてメモに残したことをもとに記載する。
グエルチーノの美術史的位置
1)ボローニャ派の巨匠
ボローニャ派第2世代。その前後を合わせてもベスト5に入る。
2)盛期バロックの先駆者
ローマでバロックの潮流を作る。
3)バロック的古典主義の巨匠
ローマから故郷に戻るのを機に、バロックはやめて、バロック的古典主義へ。
⇒18-19世紀はアカデミズムの権化。
20世紀後半から注目される(それはカラヴァッジョと同様)
1992年の生誕400年の回顧展(独、米、伊)で決定的。
チェントは、グエルチーノの聖地、世界中から人が押し寄せる。
グエルチーノの8割くらいを堪能できる展覧会。(←これはすごいこと)
(以下、本展出品作に対する話から)
1)ラ・カーラチンナ
No.01 ルドヴィコ・カラッチ≪聖家族と聖フランチェスコ、寄進者たち≫
独学で絵を学んだグエルチーノ。師と言えるのがこのカラッチの祭壇画。
ラ・カーラチンナ(「大切な乳房」の意のチェント方言)と呼ぶ。
この絵が同時に来ているのは、すごいこと。
もう1枚師と言える絵が存在する。
ルドヴィコ・カラッチ≪聖パウロの回心≫1587-88、ボローニャ国立絵画館蔵。
2)青い色彩の獲得
No,15≪キリストから鍵を受け取る聖ペテロ≫ほか
グエルチーノ様式を確立。
空の、美しい青い色彩。グエルチーノの青。
3)敢えて影にした聖母像
No.13≪ロレートの聖母を礼拝するシエナの聖ベルナルディーノと聖フランチェスコ≫
ロレートの聖母像は、実は黒い木彫像。
その聖母像を黒く描くのではなく、天使が持ち上げたカーテンの影にする。
4)グラン・マッキア(偉大なる斑点)
No.17≪聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス≫
グエルチーノの特徴、光と影の部分が入り乱れる。
5)手が小さすぎる赤ちゃん
No.26≪聖母と祝福を授ける幼児キリスト≫
最初は気にならなかったが、指摘されて一度意識すると、どうしても気になる。
6)衣服の襞はバロックの要
No.27≪聖母のもとに現れる復活したキリスト≫
グエルチーノの一つの到達点。バロックと古典主義の中間点。
襞はバロックの要。人の感情を表情ではなく、襞で表わす。
最高傑作の一つ。ゲーテもイタリア紀行で絶賛。
7)遠くから見ても明快
No.41≪説教する洗礼者聖ヨハネ≫
青い空にくっきり、遠くから見ても明快、安定感、がポイント。