没後65年 モーリス・ユトリロ展
2020年3月4日〜3月15日
日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/aa/22ca04e5cbbf61e8f3db5d47b8680f57.jpg)
没後65年のユトリロ展に行く。
本展は2部構成。第1部が海外の個人コレクションからの出品、第2部が国内の個人コレクションからの出品となっている。
本展の興味深い点の一つが、ユトリロ(1883〜1955)の「家族」の作品もあわせて出品されていること。
母シュザンヌ・ヴァラドン(1865〜1938)。
ヴァラドンについては、2015年損保ジャパン美術館「ユトリロとヴァラドン」展でまとまった数の作品を見ている。シャヴァンヌやルノワールなどの画家のモデルとして、あるいは、ユトリロの母親として著名な存在であるが、当時の女性画家としても見応えがあると感心した記憶がある。
本展では、油彩2点、素描2点と、物足りない出品数となっている。
継父アンドレ・ユッテル(1886〜1948)
画家を目指しているユッテルは、1914年、友人ユトリロの母親ヴァラドンと結婚する。ユッテル28歳、ヴァラドン49歳、義理の息子ユトリロ31歳の時である。
ユトリロ作品売却の儲けで豊かな暮らしを送ったとされるユッテルであるが、絵の制作は続けていた。本展の第1部では冒頭から、ユトリロと張り合うかのように、ユッテル作品がユトリロ作品と交互に、ほぼ同じ点数が登場する。風景、静物、人物、裸婦など分野も多岐にわたる。と思っていたら、第1部の後半になるとユッテル作品は消え、ユトリロ作品のみになっている。1926年の別居と1932年の離婚を反映しているのだろうか。いずれにせよその作品は特にコメントするほどのものではない。
妻リュシー・ヴァロール(1878〜1965)
1901年に彫刻家と結婚し、1909年に離婚。
1915年にベルギーの裕福な銀行家と2度目の結婚をし、1933年に死別。
1935年にユトリロと3度目の結婚。
2度目の結婚相手の銀行家は美術品コレクターで、ユトリロやヴァラドンと面識があったらしい。自らの先が長くないと考えたヴァラドンが今後のユトリロを委ねるべく画策したもの。この時、ユトリロ51歳、ヴァロール56歳。
ユトリロの新管理人・ヴァロールは、ユトリロを家に閉じ込め、好きなワインも水でおもいっきり薄めたものしか与えず、ただただ絵画制作奴隷のように扱ったとの逸話が残っているが、驚いたことに、自らも絵画制作を行なっていたらしい。ユトリロの作品と自らの作品を抱き合わせて販売していたとの逸話も紹介されている。
本展には、日本初公開だというヴァロールの油彩画4点が出品。ユトリロの肖像画もある。が、特にコメントするほどのものでもない。
本展の興味深い点のもう一つは、本展第2部にあたる「八木ファインアート・コレクション」。
神奈川県在住の八木英司氏が蒐集したユトリロ作品27点、ヴァラドン1点、ルノワールの人物小品6点が展示。ユトリロ作品27点はすべて、1910年代までの制作年となっている。
本展は、日本橋高島屋では当初会期(3月4日〜15日)どおりに開催予定であるが、次の巡回先である京都高島屋および横浜高島屋での開催は中止が発表されている。
また、日本橋高島屋では、ユトリロ展の後に予定していた展覧会「没後220年 京都の若冲とゆかりの寺」(3/18〜4/6)については中止が発表されている。