つきしま かるかや-素朴表現の絵巻と説話画
2013年6月11日~8月18日
日本民藝館
日本民藝館は、初訪問。
昨年サントリー美の「お伽草子」展で素朴絵に多少関心を持ち、そのような絵を期待しての訪問である。
京王井の頭線駒場東大前駅が便利とは認識していたが、外出の都合により小田急線東北沢駅から向かった。
気がつくと、京王井の頭線駒場東大前駅の1つ隣の池ノ上駅にいる。線路に沿って進み、ようやく到着。
徒歩15分のはずが、30分強かかった。
チケット購入時に展覧会パンフレットをもらう。
出品リストはというと。2階大展示室前の休憩コーナーの窓のところに、特にそれと示さずに置いてあるのに気づいた。これなしには、会場内の説明が最小限に抑えられているため、どこをどう動けばよいかわからないところであった。
メイン作品は、タイトルのとおり、次の2作品である。
1:≪つきしま(築島物語絵巻)≫
室町時代(16世紀)
全2巻、10図
日本民藝館蔵
2:≪絵入本 かるかや≫
室町時代(16世紀)
全2帖、46図。
サントリー美蔵
この2点は期間中の展示替えが多い。
≪つきしま≫は、期間中2回。
≪かるかや≫は、期間中なんと8回である。
私の訪問時は、≪つきしま≫は第5,6,9図、≪かるかや≫は26-31図が公開されていた。
感想は、というと、いずれも私にはヒットしなかった。
≪つきしま≫の素朴絵ぶりは、特に有名らしいが、公開されていた場面に恵まれなかったということにしておこう。
≪かるかや≫以外の展示品は、日本民藝館所蔵作品。
楽しく鑑賞したが、特に楽しく眺めたのが、十王図屏風など何点かあった地獄絵。
地獄絵というのは、絵の巧拙にかかわらず、逆に素朴/稚拙であるがゆえに、一層効果が出る、というものなのかもしれない。
【展覧会パンフレットより】
日本絵画史上、素朴美の極みに達したといえる室町時代の絵巻「つきしま」と絵入本「かるかや」。従来これら中世の素朴な画風の説話画類は、絵画史においてそれほど重視される存在ではありませんでした。当館創設者の柳宗悦は、早い時期にこれらに注目した一人です。日本民藝館が開館する1 年前の1935 年のこと、「表がぼろぼろで粗末にされていた」状態だったという絵巻を眼にした柳は、その類い稀な美しさに驚嘆し、直ちにそれを購入します。調査の末、その物語が平清盛の経ヶ島築島の説話「築島物語」であることを突き止め、自ら編集にあたった雑誌『工藝』63 号(1936年)を「つきしま」の特集号とし、「こんなにも無法に幼稚に描」かれながら、「まがひもなく美しい」「画境」を持ったものと評し、極めて高い評価を与えています。
(省略)
本展は、これらの二つの説話画を軸に、お伽草子を題材とした絵巻や丹緑本、「曽我物語屏風」などの物語絵、大津絵や記録絵巻、十王図を始めとする仏教説話画など、柳宗悦蒐集による館蔵の素朴表現の絵画を中心に展示紹介するものです。
近年このような絵画類は、「素朴絵」として高く評価されつつあります。当館が蔵する絵画群は、多くがこの素朴絵の系譜に連なるものですが、その中でも「素朴」を意識して描いたものではなく、無作為のままに生まれた、天然で無垢な画風のものが多く集められているのが特徴でしょう。これらはもともと、上手く綺麗に描くことを目的とせず、物語の内容を説明するために添えられた挿絵であったり、祭礼の行装や技芸の奥義などを記した記録画であったりしたために、自然と無作為の画風が生じたものと考えられます。
これらを未熟で野卑な表現とみなすのは容易ですが、柳が「端々しい美しさ」と評したように、類い稀な美を持つものと見る視点があれば、一転して肯定的な価値を持つものへと変容します。本展出品の素朴表現の絵画群は、中近世という古い時代に描かれたものですが、現代において、より大きな意味を持つものに思われてなりません。