プラド美術館展
ベラスケスと絵画の栄光
2018年2月24日〜5月27日
国立西洋美術館
本展は、7章構成で、各章にベラスケス作品1点が配置されるのが基本形となっている。
しかしながら、第6章「静物」にはベラスケス作品は配置されていない。
なぜなら、プラド美術館は、ベラスケスの「風俗画」「厨房画」を所蔵していないからである。
ベラスケスは、宮廷画家になって以降、「風俗画」「厨房画」を制作していない。
宮廷画家になる前、セビーリャで活動していた初期は、風俗画・厨房画を制作している。ただし、19世紀のベラスケス再評価時に世間にあった作品は国外に流出してしまい、プラド美術館には残念ながら来なかったということらしい。
プラド美術館が所蔵するベラスケスのセビーリャ時代の初期作品としては、本展出品作である《東方三博士の礼拝》のほか、師フランチェスコ・パチェーコとされる男性の肖像、修道女の全身像など、宗教画および肖像画の計4点程度となっているようだ。
ベラスケスの主な「風俗画」「厨房画」を確認する。全てプラド美術館の所蔵ではない。
《卵を料理する老婆と少年》
1618年、99×128cm
スコットランド国立美術館
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本展会場内の解説パネルにて、ベラスケス「厨房画」の代表作として触れられている作品。
土焼きの鍋の中の2つの卵。陶器の壺、皿、真鍮の鉢、少年の持つメロン、後ろの壁の籠。
1813年からロンドンにあり、1955年にスコットランド国立美術館が購入。
《三人の音楽家》
1616-18年頃、90.4×113.2cm
ベルリン国立美術館
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2012年の国立西洋美術館「ベルリン国立美術館展」で来日。実に貴重な作品が来日していたのだなあ。
いつの頃からかロンドンの個人蔵となり、1906年に購入。
《マルタとマリアの家のキリスト》
1618年、60×103.5cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
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窓の向こうの聖書の場面は置いといて、前景の、すり鉢でニンニクをすりつぶす少女と老婆のいる台所。皿にのせた魚4匹、卵2個、スプーン、小さな壺。
スペインの貴族が所蔵していたが、おそらくスペイン独立戦争時にイギリスに渡る。1892年、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが寄贈を受けて取得。
《セビーリャの水売り》
1620年頃、103×81cm
アプスリー・ハウス、ロンドン
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/e5/3b9077a7145b696ae605663536a1dbbe.jpg)
大きな素焼きの壺。ガラスのコップ。
もとは王室コレクションであったが、1813年のスペイン独立戦争時に他の絵とともにフランスに持ち去られ、ウェリントン公爵が取り返す。スペイン王室に返却するつもりであったとされるが、その後、スペイン王が戦勝の褒美としてそのまま下賜した扱いとしている。
《食事をする二人の若者》
1618-20年頃、64×105cm
アプスリー・ハウス、ロンドン
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/94/118c93173873f4ca0f42e03843694779.jpg)
画面左側の、皿、乳鉢、水差し、オレンジ。
《セビーリャの水売り》と同じ経過でロンドンに来たのかな?
ベラスケスに限らないことではあるが、19世紀にイギリスは精力的にヨーロッパ大陸の名画をかき集めていたようだ。