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マリオット・ディ・ナルドの祭壇画プレデッラ「聖ステパノ伝」(国立西洋美術館常設展示室)

2020年06月25日 | 国立西洋美術館常設展示
    マリオット・ディ・ナルド(生没年不明)は、1394-1424年にフィレンツェで活動した、フィレンツェの後期ゴシック絵画の末期に位置する画家。
    同時代の画家としてはジェンティーレ・ダ・ファブリアーノやロレンツォ・モナコといった国際ゴシック様式の画家が挙げられる。
 
    画家は、1408年、フィレンツェ近郊のサント・ステーファノ・イン・パーネ聖堂にある世俗同信会の礼拝堂のために《聖母戴冠》を主場面とする多翼祭壇画を制作する。
    その後、祭壇画は分解され散逸する。
 
    国立西洋美術館が所蔵する作品3点は、その祭壇画のプレデッラ。初期キリスト教時代の聖人である聖ステパノの物語が描かれている。
 
    他のパネルの現在の所蔵状況は次のとおり。
 
ミネアポリス美術研究所
・中央パネル《聖母戴冠》
・左ピラスターパネル上段《聖バルトロマイ》
・右ピラスターパネル上段《聖アントニウス》
 
ポール・ゲッティ美術館
・左翼パネル《聖ステパノと聖ラウレンティウス》
・右翼パネル《洗礼者ヨハネと福音書記者ヨハネ》
 
グランド・ラピッズ美術館
・左ピラスターパネル中段《聖フランチェスコ》
・左ピラスターパネル下段《聖シルウェステル》
・右ピラスターパネル中段《聖ドミニクス》
・右ピラスターパネル下段《司教聖人》
 
    他、旧ミュンヘン個人蔵の2点の小型パネル《聖ペテロから助祭に叙任される聖ステパノ》《悪魔つきの女の治癒》がプレデッラの左右両端部分をなしていたものと推定されている。
 
 
    なお、1996年には、研究企画展「イタリア・ゴシック祭壇画の再構成:マリオット・ディ・ナルドの《聖母戴冠》」が開催されている。
    ミネアポリス美術研究所所蔵の3点、グランド・ラピッズ美術館所蔵の4点の貸出を受け、国立西洋美術館所蔵の3点とあわせて計10点からなる展示であった。
 
 
マリオット・ディ・ナルド
《「聖ステパノ伝」を表した祭壇画プレデッラ》3点
1408年
購入(1994年)
 
《説教する聖ステパノ/ユダヤ法院での聖ステパノ》
30×57.3cm
    ステパノ(青い助祭服を着る)は女たちに囲まれて説教をしている。異教徒の2人の老人がステパノと議論をするが、対抗できない。 
    ステパノは大勢の老人に囲まれて建物の中にいる。場所は、ステパノが引き立てられたユダヤの法院で、聖者は大祭司と長老たちを論難する。
 
 
 
《聖ステパノの殉教/聖ステパノの埋葬》
29×53.9cm
    ステパノは激怒した人々によって石で打たれ、殉教する。 
    埋葬されるステパノ。 
 
 
 
《聖ステパノの遺体を運ぶ航海/聖ステパノと聖ラウレンティウスの遺体の合葬》
29.6×57.5cm
    イエルサレムに滞在していた総督の妻ユリアナは、夫の遺骨と誤って、ステパノの遺体を舟でコンスタンティノポリスに運ぶ。その航海の間、悪魔が嵐を起こす。 
    テオドシウス帝の命により、ステパノの遺体はコンスタンティノポリスからローマに移される。そこで、聖ラウレンティウスの遺体とともに合葬される。
    
 
参照:国立西洋美術館HP
 
 
 
   他の14-15世紀イタリア絵画も楽しく見る。
 
14世紀シエナ派
《聖ミカエルと龍》
40.5×19cm
購入(1969年)
 
15世紀フィレンツェ派
《聖ベロニカ》
41×28cm
購入(1972年)
 
 
   6/18から4カ月弱ぶりに再開された国立西洋美術館の常設展示室。
 
   こうして西洋美術の貴重な作品を身近に楽しめることは、ありがたい。改めて認識する。

 



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