東京でカラヴァッジョ 日記

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コンスタブルvsターナー -「コンスタブル展」(三菱一号館美術館)

2021年03月18日 | 展覧会(西洋美術)
テート美術館所蔵
コンスタブル展
2021年2月20日〜5月30日
三菱一号館美術館
 
 
   英国の画家コンスタブル。
   その作品を各種展覧会で時々見ることはあったが、丁寧だが普通の風景画という印象にとどまり、これまで特段興味を抱くことはなかった。
 
   それでも、例外的に強い印象が残る作品が3点ある。
 
 
1)コンスタブル
《水門を通る舟》
1826年、101.6×127.0cm
ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン
華麗なる英国美術の殿堂
ロイヤル・アカデミー展
- ターナーからラファエル前派まで -
2014年9月17日〜11月24日
東京富士美術館
 
 
2)コンスタブル
《コルオートン・ホールのレノルズ記念碑》
1833-36年、132x108.5 cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
2020年6月18日〜10月18日
国立西洋美術館
 
 
3)コンスタブル
《主教の庭から見たソールズベリー大聖堂》
1825年頃、87.9×111.8cm
メトロポリタン美術館
メトロポリタン美術館展
大地、海、空 - 4000年の美への旅 
2012年10月6日~2013年1月4日
東京都美術館
 
 
 
   ジョン・コンスタブル(1776〜1837)は、イングランド東部に位置するサフォーク州イースト・バーゴルトに生まれる。その土地が英国のどこに位置して、どういうところなのか、全く感度がないが、故郷の風景を好んで描いたという画家の作品を見る限りは、美しい緑の風景が広がっているところらしい。
 
   画家の父は製粉業を営み、裕福であった。画家は3男3女の4番目で次男。長男が体が弱かったため、後継ぎとして期待されたようだが、反対する父を説得して画業に進む。父はしかるべき金銭的援助を続け、家業は結局三男が継いだらしい。
 
   1775年生まれのターナーとは1歳違い(コンスタブルが1歳下)。現在ではともに英国の国民的巨匠とされる2人だが、ロイヤル・アカデミーの正会員になったのは、ターナーが1802年の26歳のときであったのに対し、コンスタブルは1829年の52歳のときで、その前年に12歳下の妻を結核で亡くしている。若き天才ターナーと、認められるまで年月を要したコンスタブルというところだろうか。
 
   本展で面白いのは、コンスタブルとターナーとの対決、1832年のロイヤル・アカデミー展での逸話。
 
   ターナー《ヘレヴーツリュアスから出航するユトレヒトシティ64号》と、コンスタブル《ホワイトホールの階段、1817年6月18日》とが並んで展示されることとなる。
 
   仕掛けたのはターナー。
   ターナーは、「寒色の銀色がかった自身の海景画」と「燃えるような色彩を散りばめたコンスタブルの大型作品」が並んでいるのを見て、分が悪いと判断したようだ。
   まず、画面の右下方に、鮮やかな赤色の塊を付け加える。そして、ヴァーニシング・デイ(最終仕上げの日)と呼ばれる手直し期間に、その赤色の塊をブイの形に整える。寒色画面に1点の赤色。
   仕掛けられたコンスタブルは「奴はここにやってきて、銃をぶっ放していったよ」と後日語ったという。
 
 
ターナー
《ヘレヴーツリュアスから出航するユトレヒトシティ64号》
1832年、91.4×122.0cm
東京富士美術館
 
コンスタブル
《ホワイトホールの階段、1817年6月18日》
1832年発表、130.8×218.0cm
テート
 
   両作品が並んで展示されるのは、このロイヤル・アカデミー展を除けば3回目、日本では初めて。
 
   どちらに軍配を挙げるか鑑賞者の判断。
   ちなみに、三菱一号館美術館ツイッターの「いま見たいのはどちら?」アンケートでは、
・第1回(開幕前)
   ターナー58.8% コンスタブル41.2%
・第2回(開幕後)
   ターナー49.5% コンスタブル50.5%
だったようだ。
    「見てどちらがよかったか?」アンケートであれば、私はターナーに1票かなあ。このご時世にロンドンから来てくれた作品という意味ではコンスタブルなのだろうけど、なんかカナレット的であるけどカナレットほどではない感があって。
 
   コンスタブルは1837年に60歳で心不全により、ターナーは1851年に76歳でコレラにより死去している。画業は15年ほどターナーが長かったこととなる。
 
 
 
   さて、私的コンスタブル作品選の更新。
 
   冒頭記載の3点に本展出品の次の作品を付け加えることとしたい。
 
4)
コンスタブル
《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》
1816-17年、101.6×127.0cm
テート
   船を操る少年、船を引っ張る係りの馬に乗る少年、船と馬をつなぐロープを外そうとする少年。水門を通り抜けるというのは大変なのだ。
 
 
 
【本展の構成】
1:イースト・バーゴルトのコンスタブル家
  1.1:初期の影響と同時代の画家
2:自然にもとづく絵画制作
  2.1:同時代の画家たちによる戸外制作
3:ロイヤル・アカデミーでの成功
  3.1:ハムステッド、およびコンスタブルと同時代の画家による空の研究
4:ブライトンとソールズベリー
5:後期のピクチャレスクな風景画と没後の名声
  5.1:ロイヤル・アカデミーでの競合
  5.2:イングランドの風景
 
 


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