「山本大貴」展に続いて、千葉県立美術館のコレクション展示を見る。
第5期コレクション展 「名品5 ー 肖像画を中心に」として、35点が展示されている。一部の作品を除き撮影可能。
特に興味深く見たのは3点。
うち、クールべ《眠る人》は、撮影したものの画像不良。
よって、本記事では椿貞雄の肖像画2点を取り上げる。
椿貞雄(1896〜1957)。
山形県米沢市生まれ。1927年から亡くなるまで船橋市に在住した「千葉ゆかりの画家」。
2017年千葉市美術館の歿後60年の回顧展を見て、岸田劉生(1891-1929)への見事なまでの追随ぶりに感心した記憶がある。
1914年、画家を志し、地元の旧制中学を退学し、上京する。
偶然に京橋で観た劉生の個展に圧倒され、面会を求める手紙を出し、受け入れられ、師事するようになる。
椿の下宿と劉生の自宅が偶然近かったらしいが、その後劉生が藤沢の鵠沼に引っ越すと、椿も同様に引っ越す。
劉生が娘の麗子をモデルに描きだすと、椿も同様に姪の菊子をモデルに描きだす。
劉生が東洋的写実に対して関心を持つと、椿も追随し、日本画(墨彩画)の制作も行うようになる。
自画像、肖像画、風景画、静物画、いずれも劉生と瓜二つ。劉生派というか、劉生の追随者というか、劉生のレプリカのようなものというか、当時から批判があって椿本人も悩んでいたらしく、また劉生も劉生風の理屈で擁護したという。
劉生の死後は制作に行き詰まり、見かねた周囲の勧めもあり、半年間の欧州遊学。その後「独自の画境」に達したとされるが、そこは私の関心範囲外。
椿貞雄
《八重子像》
1918年、61.0×50.4cm
千葉県立美術館
椿貞雄
《横堀角次郎兄像》
1921年、41.3×32.0cm
千葉県立美術館
今回は展示されていないが、千葉県立美術館は、2017年の回顧展のメインビジュアルであった《自画像》1915年 も所蔵している。
劉生作品かなと思って近づくと、劉生風の椿貞雄作品であったということをしばしば経験するのだが、今回もそのパターンであった。
千葉県立美術館は、劉生作品を1点所蔵するが、風景画であるためだろう、今回は出品対象外。
岸田劉生
《霽れたる冬之日》
1917年、54.7×59.0cm
千葉県立美術館
座りこんでいるのは、娘の麗子。3歳頃。
劉生が麗子像を描きだすのは、本作制作の翌年からである。