東京でカラヴァッジョ 日記

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丸紅ギャラリーが開館

2021年10月05日 | 展覧会情報
   2021年11月1日、丸紅ギャラリーが開館するという。
 
 
丸紅本社ビルの3階。
最寄り駅は、東京メトロ東西線の竹橋駅(東京国立近代美術館と同じ)。
休館日は、日曜日・祝日、年末年始など(月曜〜土曜は開館)。
開館時間は、10〜17時。 
入場料の支払は、現金不可(交通系ICカード等電子マネーまたはクレジットカードのみ可)。 
コンセプトは、「古今東西の美が共鳴する空間」。
 
 
丸紅コレクションを展示するようだ。 
 
開館記念展1
「日仏近代絵画の響き合い」 
2021年11月1日~2022年1月31日
 
 
 
   私的に気になるのは、日本唯一のボッティチェリ《美しきシモネッタ》の展示。
 
   過去数回、直近では2016年の東京都美術館「ボッティチェリ展」で見ているが、次の機会はいつ?
 
   現時点では、2022年秋の開館記念展3「美しきシモネッタ展」での公開を予定しているという。
   将来的に、SOMPO美術館のゴッホ《ひまわり》のように常設展示されるか、もしくは、常設展示的に、例えば、毎年数ヶ月ずつ展示されるようになると有難い。
 
 
   まずは一度訪問したい。

 



2 コメント

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ボッティチェリのシモネッタ (むろさん)
2021-10-05 12:50:35
丸紅ギャラリーの開館情報、ありがとうございます。シモネッタもそのうち出ると思います。私も1988年の「ゴッホのひまわり」と同時公開以来、2016年の都美ボッティチェリ展までに公開された4回とも全て見に行きましたが、今後は展示回数も増えると思うので、見たくなったら行きます。

ついでにシモネッタのことを少し。
ふくろうの本 図説「ルネサンスに生きた女性たち」川出書房新社2000発行 にシモネッタ・ヴェスプッチで一項目を取り上げ、出身地ポルトヴェーネレやジェノヴァのシモネッタゆかりの場所・建物の写真や馬上槍試合(ジョストラ)のことなどを書いています。この本はフィリッポ・リッピの若い妻、尼僧ルクレツィアやイザベラ・デステなども扱っています。

丸紅がシモネッタの絵を入手した経緯については、芸術新潮1969年12月号に詳細に書かれています(読売新聞1969年10月6日朝刊記事が発端「1億5,000万円 名画にナゾ 美術書と違う部分」)。また、朝日新聞社のアエラ1991年12/31-’92年1/7合併号に「フィレンツェの興亡と戦後日本 メディチ家の教訓 500年前のバブル大崩壊」という特集で「美しきシモネッタ 500年の流浪」という記事が出ています。これらを読むと、シモネッタの贋作騒動で、購入の仮契約をしていた山種美術館がキャンセルしたので、輸入を代行した丸紅が引き取り、その後シモネッタを購入した時の社長であった桧山広会長が、購入7年後の1976年にロッキード事件で田中角栄元総理らとともに逮捕されたことなどもあり、長い間公開されなかった理由が分かります。

また、シモネッタに勝利が捧げられたジュリアーノの馬上槍試合については、池上俊一編「原典 イタリア・ルネサンス人文主義」名古屋大学出版会2010発行 にアンジェロ・ポリツィアーノ著「ジュリアーノ・デ・メディチ殿の馬上槍試合に捧げるスタンツェ」という詩の日本語訳が掲載されています。このスタンツェについては、昔出た矢代幸雄や摩寿意善朗のボッティチェリの本で、ウフィツィのヴィーナスの誕生やプリマヴェーラに関係するごく一部が翻訳されていましたが、全文の日本語訳が読めるのはこの本だけです。

ボッティチェリ作のシモネッタの肖像画とされている絵は丸紅の他、フランクフルトのシュテーデル、ベルリン絵画館、個人蔵(英国リッチモンドのクックコレクション旧蔵)、ロンドンNG(丸紅とよく似た絵で色彩がやや地味)、オックスフォード・アシュモレアンの素描などがあります。研究者が一致してボッティチェリの真筆としている絵は一つもなくて、私も全て工房作だと思います。クックコレクション旧蔵の絵が「斜め前向きで乳汁を絞り出している」という形であること以外、全て同様の上半身横顔の絵(ベルリン絵画館のみ左向き)です。メディチ家ゆかりのカメオのペンダントを着けているという点で、シュテーデル作品は重要だと思います。また、絵の出来がいいのは丸紅とシュテーデル作品でしょうか。これら以外ではフィレンツェのピッティにシモネッタとされてきた絵がありますが、上記の作品と比べ、装飾品や衣服が地味なので、今ではシモネッタではないとされています(ボッティチェリ作品ではないとする研究者も多い)。別の画家の絵ではシャンティイ・コンデにあるピエロ・ディ・コジモの作品、フィレンツェ・オニサンティのヴェスプッチ家礼拝堂にあるギルランダイオ作のフレスコ画「慈悲の聖母」に描かれたヴェスプッチ家一族中の女性像(右から3人目)が従来からシモネッタとされています。シャンティイの絵は少し後の寓意的な絵であり、シモネッタの肖像画ではない(少なくともボッティチェリ工房の一連の絵とは違う性質の絵)と思いますが、オニサンティの絵はボッティチェリ工房の一連の絵よりも少し若い18か19歳頃のシモネッタの肖像である可能性は高いと思います(ボッティチェリの絵と顔があまり似ていないのが気になりますが)。

シモネッタの死因について、従来は結核と言われてきました(シュテーデルで2009年に発行したボッティチェリ展の図録中で、Hans Körnerという人がシモネッタ関連の論考「SIMONETTA VESPUCCI The Construction, Deconstruction, and Reconstruction of Myth」を書いていて、ここにもtuberculosis;結核 とあります)。しかし、最近アメリカの医学関係の雑誌に、イタリア人研究者がシモネッタの絵やヴィーナスの誕生の顔の輪郭の変化を調べ、腫瘍によるホルモンの分泌異常による腫れで顔のラインが変化しているので、これが死因であると発表した、という記事がイタリアのニュースに出ていたそうです(下記URL)。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/la-venere-di-botticelli-mori-di-un-raro-tumore-diagnosi-dopo-oltre-500-anni_it_614f3cc0e4b06beda46fbe20
https://www.leggo.jp/arte/venere_di_botticelli_morta_tumore_ultime_notizie-6218378.html
(itをjpに変換しているので、itに戻してお読みください。)

私もイタリア語の翻訳サイトを使って読んでみましたが、「特徴の変化は乳汁漏出が描かれている“寓話的な女性”で特に明白」とあり、この絵は個人蔵(クックコレクション旧蔵、下記URL)の作品です。私は見たことがありませんが、表情や輪郭に特別不自然な感じは受けません。この絵よりもベルリン絵画館の絵(下記URL)の額が大きいことが以前から気になっていましたが、これがその病気の特徴であるならば、クックコレクション旧蔵の乳を搾って出している女性像の額も同様に大きいという気がします(他のシモネッタの絵では額の大きさはそれほど目立たない)。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Botticelli_-Simonetta_Vespucci_as_Maria_Lactans.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sandro_botticelli,_ritratto_di_profilo_di_una_ragazza,_forse_simonetta_vespucci,_1460-65_ca._01.JPG
このニュース記事、最初は冗談かと思ったのですが、世の中には変わったことをまじめに研究している人もいるものだ、と感じました。文献に出ている結核と今回の腫瘍による分泌異常のどちらが正しいのか、美術史専門家の意見も聞いてみたいものです。
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Unknown ()
2021-10-05 20:30:11
むろさん 様
コメントありがとうございます。
また、ボッティチェリ《シモネッタ》の詳細情報をお教えくださり、ありがとうございます。

まず、丸紅作品の取得経緯について、芸術新潮1969年12月号とアエラ1991年12/31-92年1/7合併号を確認したいと思います(2冊とも近くの図書館で在庫をを確認済み)。

挙げていただいた他のシモネッタ作品9点について、コンデ美術館のピエロ・ディ・コジモ作品以外は、その存在すらよく認識していなかったので、ネットなどで画像を確認したいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。
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