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【画像】東京国立近代美術館のパウル・クレー - 2023年3月のMOMATコレクション

2023年03月20日 | 東京国立近代美術館常設展
 今期(2023/3/17〜5/14)の「MOMATコレクション」展示。
 
 
 2021年度の新収蔵、パウル・クレー(1879-1940)の油彩作品がお披露目されている。
 
 
パウル・クレー
《黄色の中の思考》
1937年、98×47cm、2021年度新収蔵
クレーが生涯に「黄色の中」とつけた作品全4点のうち3点が1937年作です。
この年、クレーは難病から復調の兆しを見せ、制作を本格的に再開します。
明るく穏やかな黄色には、快復を期待する思いが込められていたのかもしれません。
縦長の画面、左下の階段状の形、太い線による形が混み入った上部と細い線による形が整理された下部との対比から、縦方向の運動が意識されます。
上から下への運動と見るなら、錯綜し不明瞭な状態が、下降につれ明確で整然とした「思考」へと結晶化する様と捉えられます。
逆に、思考を巡らせるほどに状態は複雑化していく、という上昇運動と見ることもできるでしょう。
印象的な右下の人物は「思考」の中の一要素とも、思考の主体とも考えられる謎めいた存在です。
 
 
 新収蔵作品のお披露目とあわせて、東京国立近代美術館所蔵の他のパウル・クレー作品のすべて、油彩5点および版画9点が展示される。
 
 
パウル・クレー
《山への衝動》
1939年、95×70cm
 下部には、登山列車か戦車のような乗り物と、下敷きになって倒れる人。
 上部には、絡み合った木々や山のような形。
 
 
パウル・クレー
《花のテラス》
1937年、40.6×55.2cm
 
 
パウル・クレー
《破壊された村》
1920年、30.4×25.3cm
 中央の黒い十字架を掲げた教会のほか、いくつかの白い建物、大きな赤い太陽、燭台など
 
 
パウル・クレー
《花ひらく木をめぐる抽象》
1925年、39.3×39.1cm
 
 
パウル・クレー
《小さな秋の風景》
1920年、48.5×34.5cm
 1922〜24年にかけてドイツに滞在した美術家・美術評論家の仲田定之助(1888-1970)がドイツから持ち帰った作品で、日本で公開されたクレーの実作として最初期のもの。
 本展示では、日本において最も早い時期に制作された抽象的な彫刻のひとつとされる仲田の作品《首》1924年と並んで展示される。
 なお、仲田は、ドイツ滞在中にバウハウスを訪問し、カンディンスキーやクレーに面会しているという。
 
 
パウル・クレーの版画作品より。
 
パウル・クレー
《ペルセウス(機知は苦難に打ち勝った)》
1904年、10.0×12.4cm
 
 版画作品4点
右より
《ホフマン風の物語》1921年
《内面から光を発する聖女》1921年
《櫛をつけた魔女》1922年
《バウハウス展のための絵はがき 崇高な面(1923年)》1923年
 
 
パウル・クレー
《刺のある道化師》
1931年、29.8×23.7cm
 
 
 
 さて、新収蔵のパウル・クレーは「購入」とのことだが、おいくらだったのだろう。
 独立行政法人国立美術館のウェブサイトにて確認することができる
(297M)
 
 
 
【蛇足】
 セザンヌ《大きな花束》1892-95年は、セザンヌ回顧展のため、2022-23年にかけてシカゴ美術館(2022/5/15〜9/5)とロンドンのテート・モダン(2022/10/6〜23/3/12)に出張していたとのこと。


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