プラド美術館展
ベラスケスと絵画の栄光
2018年2月24日〜5月27日
国立西洋美術館
トーレ・デ・ラ・パラーダ(狩猟休憩塔)。
狩猟休憩塔自体は、16世紀の中頃、マドリードの北方郊外に、王太子時代のフェリペ2世の命により建設されたもの。
フェリペ4世は、ブエン・レティーロ宮殿の造営が一段落した1635年から、狩猟休憩塔の大幅な増改築に着手する。1638年には完成したようだ。
狩猟休憩塔の内部装飾として、絵画制作が発注される。その数、最終的には173点。
ブエン・レティーロ宮殿の装飾絵画800点なので、数では劣るが、建物の規模を考えると、狩猟休憩塔の装飾絵画の濃密度は、ブエン・レティーロ宮殿以上であっただろうと考えられている。
173点の内訳
(本展出品作はうち6点)
ルーベンスおよび工房ならびにフランドルの画家
神話画 63点
動物・狩猟画 50点
ベラスケス作品
11点(または10点)
カルドゥーチョによる宗教画
26点
風景画
17点
その他
6点
ルーベンスとその工房に発注された神話画63点は、その下絵は全てルーベンスが制作し、完成作は他の画家に下絵に基づき制作させたという。
2015年の三菱一号館美術館「プラド美術館展」で、ルーベンスによる「狩猟休憩塔(トーレ・デ・ラ・パラーダ)の装飾用下絵(ボツェット)」3点および他の画家による「ルーベンスの下絵(ボツェット)に基づく狩猟休憩塔 (トーレ・デ・ラ・パラーダ)のための完成作」1点が出品されていたのを思い出す。
本展では、113点のうち2点が出品。
神話画
N o.10
ルーベンスの工房
《泣く哲学者ヘラクレイトス》
対作品として《笑う哲学者デモクリトス》が制作されている。ベラスケスはこれら作品も意識して、《イソップ》《メニッポス》を制作したとされる。
動物・狩猟画
N o.50
パウル・デ・フォス
《犬と肉の寓話》
肉切れをくわえた犬。橋を渡るとき、他の犬が肉を持っているのを見て奪い取ろうとして口を開けたら、くわえていた肉を川に落としてしまう。他の犬とは、実は川面に映った自分自身の姿であった。というイソップ寓話を描いたもので、微笑ましい作品であるが、縦横2メートルの大画面で描くほどの主題なのか?
ベラスケス作品は11点(または10点)は、次のとおり。
◯印の4点は本展出品作。
✳︎印の1点は狩猟休憩塔に展示されなかった可能性が高い作品。
✳︎✳︎印の1点は、プラド美術館所蔵作ではなく、何故かロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵作。
◯《狩猟服姿のフェリペ4世》
《狩猟服姿の枢機卿ドン・フェルディナンド親王》
《狩猟服姿の王太子バルタサール・カルロス》
《イソップ》
◯《メニッポス》
◯《マルス》
《道化カラバシーリャス》
◯《バリェーカスの少年》
✳︎《道化エル・プリモ(道化セバスティアン・デ・モーラ)》
《本を持った道化の肖像(道化ディエゴ・デ・アセド)》
✳︎✳︎《王の布囲い狩り(テラ・レアル)》
この時期、ベラスケスは、ブエン・レティーロ宮殿、狩猟休憩塔と二つの大規模な装飾プロジェクト運営に関わるとともに、あわせて22点ほどの装飾絵画を提供しており、非常に多忙であったに違いない。
狩猟休憩塔は、18世紀初めに火災で焼失し、現存していない。