東京でカラヴァッジョ 日記

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ブエン・レティーロ宮殿「諸王国の間」の装飾絵画

2018年03月15日 | プラド美術館展2018
プラド美術館展
ベラスケスと絵画の栄光
2018年2月24日〜5月27日
国立西洋美術館

 
   ブエン・レティーロ宮殿。
 
   フェリペ4世の趣味の館として、マドリードの郊外、現プラド美術館のすぐ裏に造営された離宮。
   1630年頃に建築が始められ、1635年に主屋がほぼ竣工(全体の竣工は1640年前後)。
 
   その装飾として、スペイン国内の画家のみならず、ローマ・ナポリを拠点として活動するイタリアの画家にも発注するなど、大量の絵画が調達される。その数800点以上。
 
    宮殿内で唯一の政治的な公式空間である「諸王国の間」〜約35×10メートルの細長い部屋〜は、スペイン王国と王を讃える次の絵画で装飾される。
・前国王夫妻、現国王夫妻、現王太子の騎馬像  計5点
・「スペイン戦勝画」連作12点
・〈ヘラクレス伝〉連作10点
 
✳︎これら作品のうち、今回の展覧会では4点が出品されている。
 
 
   ブエン・レティーロ宮殿は、19世紀初めの対仏独立戦争にて大半が焼失するが、「諸王国の間」は焼失から逃れる。軍事博物館として使われていたが、近年軍事博物館は退去し、現在プラド美術館の別館として使用すべく準備中であるらしい。
 
 
 
   「諸王国の間」を彩った絵画作品を確認する。
   ◯印が展覧会出品作を示す。
 
 
 
1  前国王夫妻、現国王夫妻、現王太子の騎馬像 
 
→ ベラスケス作
 
◯《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》
1635年頃、211.5×177cm
 
《フェリペ4世騎馬像》
1635年頃、303×317cm
 

→ベラスケスと工房
 
《フェリペ3世騎馬像》
1635年頃、300×212cm

《王妃マルガリータ・デ・アウストリア騎馬像》
1635年頃、297×212cm

《王妃イサベル・デ・ボルボン騎馬像》
1635年頃、301×314cm
 
 
 
 
2 「スペイン戦勝画」連作12点
 
   ベラスケスを含む、スペイン画家8人による12点。競作とも言える。
   三十年戦争におけるフェリペ4世即位以降のスペイン軍の勝利が題材となっているとのこと。
 
 
【ベラスケス】1点
 
→ベラスケス(1599-1660)
 
《ブレダ開城》The Surrender of Breda
1635年頃、307×367cm



【ベラスケスと同年代の画家】3名4点
 
→スルバラン(1598-1664)
 
《カディス防衛》The Defence of Cadiz against the English
1634-35年、302×323cm


→フェリクス・カステーリョ(1595-1656)
Castello, Félix

《セントキッツ島回復》The Recovery of Saint Kitts Island
1634年、297×311cm


→ジュセペ・レオナルド(1601-1652)
LEONARDO, JUSEPE

《ブリザック救援》The Liberation of Brisach
1634-35年、305×333cm

《ユーリッヒの開城》The Surrender of Jülich
1634-35年、307×381cm


 
【ベラスケスより年長の画家】3名6点

→ビセンテ・カルドゥーチョ(1576-1638)
CARDUCHO, VICENTE

《フルーリュスでの勝利》The Victory at Fleurus
1634年、297×365cm

《ラインフェルデン攻略》The Storming of Rheinfelden
1634年、297×357cm

《コンスタンツ救援》The Relief of Constance
1634年、297×374cm
 
 
→エウヘニオ・カシェス(1574-1634)
CAJÉS, EUGENIO

《プエルト・リコのサン・ファンの奪還》The Recapture of San Juan in Puerto Rico
1634-35年、290×344cm

《カドレイタ侯爵によるサン・マルタン島からのオランダ人の追放》
La expulsión de los holandeses de la isla de San Martín por el marqués de Cadreita
✳︎消失


→フアン・バウティスタ・マイーノ(1581-1649)
MAÍNO, FRAY JUAN BAUTISTA

《バイーアの奪還》The Recapture of Bahía de Todos los Santos
1634-35年、309×381cm
 


【ベラスケスより年少の画家】1名1点

→アントニオ・デ・ペレーダ(1611-1678)
Antonio de Pereda

 ◯ 《ジェノヴァ救援》The Relief of Genoa by the II Marquis of Santa Cruz
1634-35年、290×370cm 



3〈ヘラクレス伝〉連作10点
→全て、フランシスコ・デ・スルバラン作。
   スルバランといえば、宗教画や静物画のイメージが強いが、こういう絵も制作しているのですね。

   ベラスケスと1歳違いのスルバラン。生地からセビーリャに移り画家修業を行う。セビーリャでの修業時期もベラスケスとほぼ完全に重なる。修業後もセビーリャで活動。1634年、「諸王国の間」装飾に参加するため一時セビーリャを離れるが、翌年には戻る。晩年の1658年にマドリードに活動の場を移す。

 
 《ネメアの獅子と戦うヘラクレス》Hercules fighting the Nemean Lion
1634年、151 x 166 cm
 
◯《ヘラクレスとレルネのヒュドラ》Hercules and the Hydra
1634年、133 x 167 cm

《ヘラクレスとエリュマントスの猪》Hercules and the Erymanthian Boar
1634年、132 x 153 cm

《アルペイオス川の流れを変えるヘラクレ》Hercules diverting the Course of the River Alpheus
1634年、133 x 153 cm

◯《ヘラクレスとクレタの牡牛》Hercules and the Cretan Bull
1634年、133 x 152 cm

《カルペとアビラ山を隔てるヘラクレス》Hercules separates Mounts Calpe and Abylla
1634年、136 x 167 cm
 
《ゲーリュオーンと戦うヘラクレス》Hercules defeats King Geryon
1634年、136 x 167 cm

《ヘラクレスと地獄の番犬ケルベロス》Hercules and Cerberus
1634年、132 x 151 cm

《アンタイオスと戦うヘラクレス》Hercules fighting with Antaeus
1634年、136 x 153 cm

《ヘラクレスの死》The Death of Hercules
1634年、136 x 167 cm


 
  上記作品の現所蔵は、全てプラド美術館である。


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