ファンタスティック-江戸絵画の夢と空想
2016年3月12日~5月8日
府中市美術館
2016年のテーマは「ファンタスティック」。
なんとも緩い設定である。
その分、魅力のある多様な江戸絵画作品を楽しめる。
今回も作品は前後期完全入替制。4/10までの前期は75点、4/12からの後期は78点出品される。
まず、本展の構成と前期出品点数を記載する。細かくセクション設定がなされている。
第1章 身のまわりにある別世界:25点
・月:5点
・太陽:3点
・黄昏と夜:3点
・花:1点
・木立と自然の威容:4点
・動物の世界を想像する:2点
・天空を考える:4点
・これもファンタスティック?:3点
第2章 見ることができないもの:28点
・海の向こう:3点
・伝説と歴史:8点
・神仏、神聖な動物:7点
・地獄:4点
・妖怪、妖術:6点
第3章 ファンタスティックな造形:6点
・金、霞、しなやかな形:2点
・見上げる視線:3点
・非日常な色:1点
第4章 江戸絵画の「ファンタスティック」に遊ぶ:16点
お気に入りは3点。偶然だが、全て6曲1隻の屏風画となった。
第1章 黄昏と夜より
山口素絢(1759-1818年)
《四条河原夕涼図屏風》(画像は部分図)
黄昏どき。見通しがきかなくなってくる時間帯。河原に人々が涼を求めて集まっている。台の上に寝そべる人、宴会を楽しむ人。屋台では、ちょっとした食べ物販売、娯楽提供など。画左下には、なんと、人魚の見世物小屋。入場者たちは、特段驚くような素振りもなく、ごく普通に人魚を楽しんで見ている。
同じセクションの夜の光景を描く銅版画2点もよい。
亜欧堂田善(1748-1822年)
《品川月夜図》
松本保居(1786-1867年)
《四条川原夕涼之図》
夜の作品が今回特に気になったのは、カラヴァッジョ展の影響かな。
第4章より
曽我蕭白(1730-1781年)
《仙人図屏風》
なんといっても、亀がかわいい。
【解説より】
大きな亀が、波の上を、不思議な重力に包まれたかのように歩いています。
《楊梅図屏風》
本作は1939年に上野の展覧会で出品されて以降、所在不明であったが、1998年に京都に現れ、現在は大阪の個人蔵。
第一印象はピンとこなかったが、会場内の解説を読んで改めて見ると、作品が違ったふうに見え始める。
色は退化しているものの、画家がイメージした極楽浄土の風景が伺えて、実に魅力的。
前期の一押し作品。
【解説より】
右上の雲の間に「楊梅(やまもも)」の小さな赤い実が見えます。署名も印章もありませんが、「楊梅」という珍しい題材や描き方の特徴などから、作者は俵屋宗達であり、後水尾上皇が亡くなった母の供養のために描かせたものと推定されています。たなびく雲や金色に輝く向こう岸、川の波も全て極楽浄土の象徴と考えられています。
後期も訪問予定。
2度目の訪問は半額となる割引券付き。