現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展
2014年6月20日~8月24日
東京国立近代美術館
台湾資本の電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションによるヤゲオ財団のコレクション展。
西洋および中国の近現代美術、約40作家、74点が展示される。
解説キャプションには、「市場評価額」の話がやたら出てくる。
サンユウという中国の作家は、同時代に同じくパリで活躍した藤田嗣治と「市場評価額」の比較がなされる。
ザオ・ウーキーという中国の作家(2013年没、ブリヂストン美が作品を多く所蔵)は、「3番目の奥さんは、パリ市立近代美術館のキュレーターだった」という話で締められる。
いつもの解説とは、なんか違う。
帰宅後に気付いたが、実はゲームが用意されていて、そのヒント(参考事例)が解説キャプションに記載されていたのだ。
どんなゲームかは、出品リストの裏に説明されている。
会場の最後に、「コレクター・チャレンジ」というゲームを用意しました。そこには、本展から選んだ20点の作品と家の模型が置いてあります。そして作品を複数選んでいただくと(上限5点)、本展が独自に算定した市場評価額の合計金額が出るようになっています。
自分が暮らしたい空間をつくるべく、美術作品を組み合わせていただきたいのです。ただし、その合計金額が50億円を超えないように。
複数を選ぶ仕組みとしたのは、きっと個々の市場評価額がすぐにはわからないようにするためなのだろう。
美術作品の経済的な価値について考えさせることが本展の狙いのひとつであるらしい(美術館はすべてが時価の「寿司屋」という例えはどうかな、所有欲が満たされるわけではないし)。ゲーム、やりたかったな。
本展には、ウォーホル、リキテンスタイン、ロスコ、杉本博司、リヒター、グルスキー、ベーコンなど聞いたことのある作家の作品もあるが、聞いたことのない作家も多数。
出品作を見る限り、なんでもあり、ではなく、一定の水準を感じる。
現代美術に極めて疎い私は知らないが、世界的に活躍し評価されている作家ばかりなのだろう。
印象に残った作品
トーマス・シュトゥルート(1954-)
≪アルテ・ピナコテーク、自画像≫2000年
そういえば昔、本作家のミュージアム・シリーズの写真集を本屋でみかけた。展示されている作品とそれを見る人をいっしょにした写真作品。
私にとっては、アルテ・ピナコテークに行って、デューラーの≪自画像≫を拝みたい衝動に駆られる作品。
マルレーネ・デュマス(1953-)
≪若い少年たち≫1993年
南アフリカ生まれ、アムステルダムで活躍する女性作家。2007年に東京都現代美で個展が開催(未鑑賞)。
本油彩画は、全裸の少年たちが壁に沿って並んで(並べさせられて)いて、自然とナチスを想起させられる。
ロン・ミュエク(1958-)
≪若者≫2009年
≪若いカップル≫2013年
オーストラリア生まれ、英国で活躍する、ハイパーリアリズムの人体彫刻で有名な作家。2008年に金沢21世紀美で個展が開催(当然未鑑賞)。作品の巨大さが話題なようで、十和田市現代美が高さ4mの女性蔵を所蔵。本展の彫刻は、高さ65cmと89cm。
前者は、黒人の若者が、右わき腹から血が出ているのを見て、あれ心当たりないなあ、みたいな顔をしている。
後者は、白人のカップル、男性といい、女性といい、実にリアルな表情、しぐさに感心。
メイン・ビジュアルを務めるマーク・クイン≪ミニチュアのヴィーナス≫は、なぜこれを?と訝しんだ作品。
まあ、作家は世界的に活躍しているようだけれども。
(なぜか、屋外にも)