絢爛豪華 岩佐又兵衛絵巻(Ⅰ期)山中常盤物語
2012年3月3日~4月4日
MOA美術館
山中常盤物語絵巻は初見。びっくりしました。こんな絵巻だとは。
1巻約12.5m、全12巻150メートルに及ぶ絵巻物。
全12巻が展示されていますが、展示室のスペースの都合でしょうか、全ての巻が12.5メートル公開されているわけではありません。
12.5メートル公開されているのは、第1巻、第3巻、第9巻で、実質12.5メートル公開されていると考えてよいのは第10巻。
それ以外は、5割から8割程度の公開です。
山中常盤物語絵巻といえば、牛若丸の母親である常盤と侍従の裸の場面が有名で、何かとよく図版を見かけます。
裸が登場するのは第4巻と第5巻です。裸が登場する場面は概ね公開対象となっているようですが、裸が登場する全ての場面が公開されているわけではないようです。
まず感心したのが12.5メートル公開されている第3巻。
常盤と侍従が、奥州に向かって徒歩の旅を続ける場面。旅の苦労が伺える場面がこれでもかと続きます。そして、最後のほうの場面で常盤は重い病の床についてしまいます。
京を立ち、山中の宿で重い病の床についたわけですが、山中の宿は現在の岐阜県関ケ原町ということなので、この先の奥州までの距離を考えると、なんとも早い病の床と言わざるを得ません。
しかし、旅の苦労がうかがえる場面の連続は、重い病の床についてしまうのも仕方がない、と納得させられます。
そして、第4巻と第5巻。
第4巻は、3場面が公開。
1場面目は、盗人が(常盤なのか侍従なのかは分かりませんが)女性が着ている小袖を剥ぎ取る場面。
2場面目は、裸で震える二人。おそらく常盤が「肌をかくす小袖を残すがなさけ、さもなくば命もとっていけ」と叫んでいる場面。といいますか、叫んでいるようには見えないので、叫ぶ前か叫んだ後の場面。
3場面目は、盗人が常盤の胸元を刺す場面。侍従が常盤にすがろうとしています。
次の場面は公開されていませんが、常盤にすがろうとした侍従が胸元を刺される場面なのでしょう。
第5巻。
まず、宿の主人と奥さんが常盤を抱えている場面が3場面続きます。常盤の胸元からは血が流れています。
印象的なのは、その3場面にいずれも、侍従が概ね同じような姿で、軒下で裸で血を流して転がっていることです。グロテスクの極み。
4場面目は、宿の主人と奥さんが高札が立っている墓を悲しそうに見つめる場面。常盤の遺言どおりに土葬して高札をたてたのです。
5場面目以降は、牛若丸に場面が移ります。
個人的に一番衝撃的だったのは、12.5メートル公開されている第9巻と実質12.5メートル公開されていると考えてよい第10巻。
第9巻は6場面。
1場面目。牛若丸は6人いる盗人をやり過ごすや、一番後ろにいた盗人を切り倒した直後の場面。首および両足のふくらはぎ辺りを切り落とすという荒業。
2場面目。牛若丸を囲む5人の盗人。端には、首および両足のふくらはぎ辺りを切り落とされた盗人が転がっています。
3場面目。牛若丸を攻撃しようとする5人の盗人。牛若丸も攻撃態勢に入ります。端には、首および両足のふくらはぎ辺りを切り落とされた盗人が引き続き転がっています。
4場面目。3人の盗人が切り倒されました。一人は胴体を横に真っ二つ。一人は右肩から左脇にかけて真っ二つ。もう一人は今まさに頭から股へ縦に真っ二つにされている途中です。かなり衝撃的。なお、最初に切り倒された、首および両足のふくらはぎ辺りを切り落とされた盗人も転がっています。残りの二人の盗人は外へ逃げようとします。
5場面目。外へ逃げる二人を追う牛若丸。切り落とされてしまった4人の盗人も屋内に転がっています。前場面では頭から股へ縦に真っ二つにされる途中にあった盗人も、この場面では真っ赤な切り身になっています。
6場面目。今まで切り倒された4人はそれぞれ異なる切り倒され方だったので、残る二人も異なる切り倒され方なのかと期待したら、それは違いました。残る二人は、屋外で胴体を横に真っ二つで転がっています。そして、先の4人が屋内に転がっています。
第10巻がこれまたすごい。
1・2場面目。宿の主人が牛若丸ひとりで6人の盗人を倒したことに驚く場面。6人がそれぞれ切り倒されたままの姿で転がっています。
3場面目。これがまた衝撃的。10数人の人出を集め、死体を藁で包み、縄で結んでいる場面。
4場面目。これがまた衝撃的。死体を包んだ藁をみんなで運び、淵に沈めている場面。
う~ん。第9巻と第10巻には、本当にまいりました。血が満載。心臓の弱い人は気を付けて。
第Ⅱ期の浄瑠璃物語、第Ⅲ期の堀江物語も見に行く気になりました。