東京でカラヴァッジョ 日記

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「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展(国立新美術館)

2019年05月09日 | 展覧会(西洋美術)
日本・オーストリア外交樹立150周年記念
ウィーン・モダン
クリムト、シーレ 世紀末への道
2019年4月24日~8月5日
国立新美術館


   ウィーン・ミュージアム(ウィーン市立歴史博物館)の改修工事に伴い、同館所蔵の主要作品がまとめて公開される。出品数は東京展は約400点、大阪展は約300点、たいへんなボリューム。歴史博物館だけあって、多様な切り口でウィーンを紹介する。


【構成】
 
第1章:啓蒙主義時代のウィーン
 -  近代社会への序章
1  啓蒙主義時代のウィーン
2  フリーメイソンの影響
3  皇帝ヨーゼフ2世の改革
 
第2章:ビーダーマイアー時代のウィーン 
 -  ウィーン世紀末芸術のモデル
1  ビーダーマイアー時代のウィーン 
2  シューベルトの時代の都市生活
3  ビーダーマイアー時代の絵画
4  フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー -自然を描く
5  ルドルフ・フォン・アルト -ウィーンの都市景観画家
 
第3章:リング通りとウィーン
 -  新たな芸術パトロンの登場
1  リング通りとウィーン
2  「画家のプリンス」ハンス・マカルト
3  ウィーン万国博覧会(1873年)
4  「ワルツの王」ヨハン・シュトラウス
 
第4章:1900年―世紀末のウィーン
 -  近代都市ウィーンの誕生
1  1900年―世紀末のウィーン
2  オットー・ヴァーグナー -近代建築の先駆者
3-1  グスタフ・クリムトの初期作品 -寓意画
3-2  ウィーン分離派の創設
3-3  素描家グスタフ・クリムト
3-4  ウィーン分離派の画家たち
3-5  ウィーン分離派のグラフィック
4  エミーリエ・フラーゲとグスタフ・クリムト
5-1  ウィーン工房の応用芸術
5-2  ウィーン工房のグラフィック
6-1  エゴン・シーレ -ユーゲントシュティールの先へ
6-2  表現主義 -新世代のスタイル
6-3  芸術批評と革新
 
 
   女帝マリア・テレジア(1717〜80)の肖像画から始まる本展。
 
 
メッサーシュミット
《究極の愚か者》(「性格表現の頭像」シリーズより)
1770年以降
 
   先のルーヴル美術館展で名前を覚えたばかり、メッサーシュミットの彫刻「性格表現の頭像」シリーズの1点が出ている。これは雪花石膏(白い半透明の石)製。
 
 
《メッテルニヒのアタッシュケース》
19世紀前半
 
   19世紀ウィーン美術の紹介は「ビーダーマイヤー時代」から始まる。その言葉はしばしば聞くが、作家も作品も思い浮かばない。本展でもイメージをつかむに至らず。本展示品は、あの宰相が所有していた赤いアタッシュケース実物の展示。その鍵も無造作っぽく置かれている。その前隣展示のウィーン会議版画で、同様のケースを持つ宰相が描かれている。
 
 
グスタフ・クリムト
《旧ブルグ劇場の観客席》
1888年
 
   第3章1にクリムト作品が1点登場。「画家のプリンス」ハンス・マカルト(1840〜84)が44歳で急逝したことで、巡ってきた新ブルク劇場の装飾事業、その関連で、クリムトと同僚のマッチュは、ウィーン市議会から、取り壊す旧劇場の内部の記録画制作を依頼される。マッチュは客席から舞台を見たところを担当する(非出品)。逆に舞台から客席を見たところを担当したクリムトは、小さい画面にたくさんの貴族や富裕市民の姿をその素性が特定できるほど克明に描く。特定できる人数だけで、なんと131人!それ以外のエキストラだろう人物も含むと200名ほど描き込まれているだろうか。
 
 
グスタフ・クリムト
《愛(「アレゴリー:新連作」のための原画 No.46)》
1895年
 
   第4章3-1のクリムトのコーナー。寄り添う若い男女。その上部に浮かび漂う不気味な頭部、幼児1、若い女性1、老女っぽい女性たぶん5。これらは「運命」の擬人像であるらしい。幼児から老年期に至る人生の諸段階。若い恋人たちに恨みを持つ亡霊たちではなかった。
 
 
グスタフ・クリムト
《パラス・アテナ》
1898年
   アテナ(ミネルヴァ)は、正義のために闘う神であり、学問・芸術の守り神。右手に持つ裸体の女性像は、真理の擬人像。
   金色の衣装に混ぜられたオレンジ・青などの色、左腕にとまっているかのようなフクロウ、なども印象的に残る。
 
 
《ウィーン分離派展ポスター》
第5〜19, 21, 23, 40, 49回
1900〜05, 12, 18年

   ウィーン分離派展ポスターがずらっと並ぶ一画。第18回がクリムト作、第49回がシーレ作。私的には第19回のホドラー。
 
 
グスタフ・クリムト
《エミーリエ・フレーゲの肖像》
1902年
 
   本展のメインビジュアルであるクリムトの「生涯の伴侶」を描く肖像画は、なんと本展で唯一写真撮影可の展示品。撮影した人間が言うのもなんだが、撮影する人が多く、近くでじっくり鑑賞が困難な状況であることに不満。本作は、クリムトが展開する装飾的な肖像画のなかでは初期作品とのこと。
 
 
 
   第4章6-1のエゴン・シーレのコーナー。シーレの油彩画5点、素描13点が展示(他コーナーにウィーン工房ポストカード3点の展示あり)。
   油彩画《自画像》《ひまわり》《美術批評家アルトゥール・レスラーの肖像》《ノイレングバッハの画家の部屋》《イーダ・レスラーの肖像》のなかでは、最初の3点を中心に見る。
   シーレの素描は、さすがの風格。女性裸像も多いなか、着色、たらし込み技法?が印象に残る《男性裸像》1912年を推す。
 
 
   第4章6-2のオスカー・ココシュカのコーナー。ココシュカの素描3点、ポスター1点、ウィーン工房関連13点がまとまって展示。
   ポスター《「クンストシャウ、サマーシアター」の項目、『殺人者、女たちの希望』のポスター》1909年は、戯曲の宣伝ポスター。上部に大きくココシュカの名前があるることに違和感も、実はココシュカ自身が手掛けた戯曲、それなら納得。男女の性の戦いがテーマの戯曲。図は、骸骨のような女性と赤い体を捻じ曲げられた男で、結構なインパクト。
 
 
 
   手元の古めのクリムト画集/シーレ画集に掲載されている同館所蔵のクリムト油彩作品/シーレ油彩作品は全て出品されている。さすが改修工事に伴う引越し展。
 
 
   以上、クリムト、シーレ、ココシュカ+他の展示品若干について記載したが、展示品は大量で、切り口も多様。時間に余裕をもって訪問したい。
 
 
オスマントルコ対ハプスブルク2019@六本木


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