SMBC ART HQ Part2
「Portraits – Obayashi Collection」
2023年8月25日〜10月20日
三井住友銀行東館1Fアース・ガーデン(丸の内)
三井住友フィナンシャルグループが実施するアート事業「SMBC ART HQ」の第2弾を再訪する。
テーマは、「Portraits」。
株式会社大林組会長の大林剛郎氏による大林コレクションから33点、三井住友銀行コレクションから3点、計36点の「人物画やそれに近い手法で制作された現代美術」が展示される。
入場無料。撮影可。
【本展の構成】
序:大林氏自身のポートレイトとそれに関連した作品
1:現代美術以前の「古典的な人物画」
2:1970年代から90年代に評価を確立したアーティストたちの作品
3:主に2000年代以降に注目されるようになった、比較的若い世代のアーティストの作品
出品リストの裏面には、大林氏による展覧会解説が掲載されている。
再訪時は、その解説を参照しながら、作品を見ていく。
そのなかで、興味深く見た3点について、画像とその解説を記載する。
3点とも、本展の構成では、セクション3に属する。
加藤泉(1969〜)
《無題》
2020年、大林コレクション
原始的とも評される、人間に植物、昆虫などの要素が入り混じった特異な生命体の表現で知られる作家です。
彼が描く「人のようなもの」は名づけることのできない原初的な存在であり、それが何に見えるかは鑑賞者の解釈に委ねられています。
リネッテ・イアドム=ボアキエ(1977〜)
《6pm、マラガ》
2009年、大林コレクション
ロンドンを拠点に活動するガーナ系イギリス人の画家です。
彼女が描く人物には具体的なモデルは存在せず、個人的な記憶や書物、美術史などの断片的なイメージに基づいています。
また、彼女は一貫してアフリカ系の人物のみを描いていますが、そこには西洋美術史に内在するレイシズムを解体するという意図も込められています。
トイン・オジー・オドゥトラ(1985〜)
《とても貴重》
2023年、大林コレクション
ナイジェリア出身の作家は人間の皮膚の質感を極めて精緻に描きこんだ人物画で知られています。
彼女の絵にもモデルは存在しません。
人物画の美術史的な伝統とコミックやSFなどのサブカルチャーから影響を受けた彼女は、複数の絵画の制作を通じてオリジナルな〈物語〉を紡ぎ出していきます。つまり、個々の絵はその〈物語〉のひとコマでもあるわけです。
このような解説が鑑賞の「とっかかり」として用意されているとありがたい。
現代アートは、「とっかかり」がないと、向こう側がまったく受け付けてくれないものが多い。
以下は、最初の訪問時の記事に取り上げた現代アート3点を改めて記載する。
「とっかかり」なしで相応に楽しんだ作品。
3点とも、本展の構成では、セクション2に属する。
杉本博司(1948〜)
《ダイアナ、プリンセス・オブ・ウェールズ》
1999年、大林コレクション
ダイアナ妃本人を撮影したポートレートかと思っていたら、その正体は、ダイアナ妃の蝋人形。
言われたら確かに、蝋人形らしい不気味さがある。
村上隆(1962〜)
《デビルKO2ちゃん》
2004年、大林コレクション
当時22歳のタレント・佐藤江梨子さんが美少女フィギュアに扮する。悪魔バージョン以外にも、ウェイトレス、ナース、女学生などがあるらしい。
これがアートだから、現代アートは難しい。
本展一番のお気に入り。
ハンス=ペーター・フェルドマン(1941〜2023)
《100年》
大林コレクション
0歳から100歳までの101人の写真で構成される。
上記の部分画像は、最上段が11〜17歳、次の段が31〜37歳、以下、51〜57歳、71〜77歳、91〜97歳。
同一人物ではないけれども、20年単位での時間の推移を感じる。
不可逆的な月日の流れ。
自分の位置を確認し、それまでのこと、この先のことを思う。
ドイツの作家。今年亡くなられたようだ。享年82歳。