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米国株式会社・LLC法人所得税の解説(上)

2021-01-05 | 税制

2017年税制改革法案(Tax Cuts and Jobs Act)に基づき、米国(アメリア)では全世界所得課税及び新しいテリトリアル課税(源泉地国課税)が採用されています。

 

全世界所得課税とは、米国国内及び国外で発生したすべての所得に対し米国の所得税を納付しなければなりません。全世界所得課税制度の下で、米国内国歳入庁(IRS)は米国納税義務者の国外源泉所得に対する二次管轄権を有します。海外税率が米国の税率より低い場合、米国でその差額を支払う必要がります。海外税率が米国の税率より高い場合、企業は比較的高い海外税率で税金を支払い、国外源泉所得の税額控除を享受できます。

 

新しいテリトリアル課税とは、外国会社の株式の10%以上を所有する米国会社は、当該外国会社による配当金に対して100%の配当控除を受けられますが、この場合外国税額控除を享受できません。なお、外国会社の株式の売却を通して得た収益金に対しても配当控除を享受できます(配当控除額は保有期間の制限があり、規定により米国会社が配当落ち日前の365日からの731日以内に当該外国会社の株式を保有する期間が365日を超える必要があります)。

 

米国で最も人気のある会社形態は「株式会社」と「LLC(有限責任会社)」です。なぜかというと、この2種類の会社形態は所有者の個人責任を最大限に減らすからです。但し、両者は課税上の違いがあります。

 

会社は独立的な法人実体とみなされ、法人税申告書を提出し、且つその利益に対し法人所得税を納付しなければなりません。会社が利益を得て利益の一部又は全部を所有者に分配する際、二重課税が生じます。つまり、会社はその利益に対し法人税を支払うと同時に、会社の所有者はその受取配当金に対し個人所得税を申告する必要があります(所有者は自然人の場合)。但し、会社は所有者に配当金を支払わないことができます。この場合、二重課税は発生しません。

 

通常、LLCはPass-Through Entity(パススルー企業)とみなされます。つまり、LLC自体はその利益に対し法人税を納付しなく、全ての損益をその所有者(メンバー)に転嫁し、メンバーはその個人所得税においてLLCの損益状況を反映する必要があります。

 

なお、LLCは株式会社として納税することを選択できます。

 

1. 米国税務上の居住者会社

 

米国又はいずれかの州の法律に基づき米国で設立された会社は米国会社になります。米国会社は米国で業務または資産を有するかどうかにかかわらず、米国の税務上の居住者会社に属します。会社の管理地点に関連するその他基準の下で会社が米国の内国法人になりません。

 

2. 連邦所得税率

 

米国の税務上の居住者及び非居住者である会社に対する連邦所得税率は21%です。会社の州所得税は、州によって異なります。米国の9つの州(アラスカ州、フロリダ州、ネバダ州、サウスダコタ州、テキサス州、ワシントン州、ワイオミング州)では州法人税が徴収されません。

 

LLCはもともと連邦所得税を納付せず、それに代わってLLCの各メンバーはその個人(個人および実体を含み)所得税申告書上の利益に対し税金を支払う必要があります。メンバーが個人の場合、連邦所得税率は10%から37%まで、且つ自営業者税(税率15.3%)の納付が必要です。メンバーが法人実体の場合、連邦所得税は21%の均一税率になります。

 

3. 外国人株主に適用される連邦源泉徴収税率

 

米国で商業活動または非商業活動に従事する外国人は源泉徴収税を支払う必要があるかもしれません。ここの「外国人」とは、外国個人または外国法人・実体を指しますのでご注意ください。

 

(1) 営業収入:外国人株主(外国会社・実体に適用)はその米国で進行する貿易または業務につながる収入に対し、関連費用を控除した後、21%の均一税率で所得税を申告・納付する必要があります。この場合、源泉徴収税の納付が不要です。

 

(2) 営業外収入:外国人株主の営業外収入は、利息、配当金、家賃、賃金、保険金、年金、補償金、給料、報酬及びその他固定収益・定期収益、利潤及び収入を含みますが、これらに限りません。源泉徴収義務者(会社又は個人)は30%の源泉徴収税率(税収優遇政策が適用されるかもしれない)で外国人の当該総収入に対し源泉徴収をする必要があります。以下連邦源泉徴収税の例をご参照ください。

 

(a) 外国個人:課税年度において米国で183日以上滞在する非居住者である外国個人は、米国内で資本資産を売却、交換することにより得た純収益に対し30%の源泉徴収税を支払う必要がある。

(b) 外国会社:専利権、著作権、のれん、商標権、特許権及びその他類似資産を販売、交換することにより得た収益(生産力がもたらす料金に限ります)に対し30%の税額を支払う必要がある。

(c) 外国会社:外国会社のある特定の証券投資で受け取った利息に対する課税が取り消される。

 

4. 米国源泉所得

 

(1) 米国内で得た収入は通常、米国源泉所得とみなされる。

(2) 米国内で米国貿易又は業務を通して得た収入は米国源泉所得に属する。

(3) 内国会社によって支払われた配当金は米国源泉所得に属する。

(4) 内国会社又は米国政府によって支払われた利息は米国源泉所得に属する。

(5) 米国の無形資産(特許権、版権を含み)の使用料は米国源泉所得を生じる。

 

5. 国外所得

 

(1) 米国外で得た収入は通常、国外源泉所得とみなされる。

(2) 米国外で対外貿易又は業務を通して得た収入は国外源泉所得に属する。

(3) 外国会社によって支払われた配当金は国外源泉所得に属する。

(4) 外国会社又は外国政府によって支払われた利息は国外源泉所得に属する。

(5) 他の国での無形資産(特許権、版権を含み)の使用料は国外源泉所得を生じる。

 

6. 控除項目(株式会社とLLCに適用) 

 

事業控除とは、会社の日常経営を行う過程で発生した支出を指します。当該課税年度において、日常業務を経営するために発生し、またはすでに支払ったあらゆる一般費用又は必要な費用は控除を受けられます。

 

(1) 貸倒れ

 

発生主義の下で、納税義務者は納税を目的として直接償却方法を使用し貸倒れの金額を相殺しなければなりません。

 

(2) 利息支出

 

一般業務に係る利息費用については、当該課税年度に日常経営のために負担している債務により発生した、または既に支払った利息支出は、以下のabcの累計額を超えてはいけません。

 

(a) 利息収入

(b) 納税者の当該課税年度での調整した後の課税所得額の30%

(c) 納税者が自動車を購入するとともに、当該資産を抵当に入れたことで負担している債務により発生した利息支出

 

上述30%の制限は不動産業及び農業に従事する企業、及び過去3課税年度での平均年間収入が2,500万ドルを超えないあらゆる納税者に適用されません。

 

投資のためのローンにより発生した利息支出は投資の純収入に限ります。

 

(3) 創立費と開業費

 

会社は最高5,000ドルの創立費及び最高5,000ドルの開業費を控除できます。創立費又は開業費がそれぞれ50,000ドルを超えた場合、各項の費用はそれぞれ5,000ドルを控除することができます。5,000ドルを控除した後の残りの創立費又は開業費は、これから180ヶ月以内に相殺できます。

 

(4) のれん、特許権、商標権

 

のれん、特許権、商標権は当該無形資産を取得した当月からの15年以内に、定額法を採用して相殺しなければなりません。

 

(5) 接待交際費

 

ビジネスで発生した食費の50%は控除できますが、娯楽費は控除できません。

 

(6) ビジネスギフト

 

ビジネスギフトの支出は受取人1人につき年間最高25ドルを控除できます。受取人が複数いる場合、控除額は受取人の人数に25ドルをかけるものです。

 

(7) 生命保険料

 

被保険者である従業員によって保険金受取人を指定された生命保険の保険料は、従業員福祉として控除できます。

 

(8) 役員報酬

 

上場会社がCEO/CFOに支払う100万ドルを超えた報酬部分を控除できません。

 

(9) 重大な損失や破損

 

通常、保険又は他の方式を通していない補償する重大な損失や破損はすべて控除できます。

 

(10) 寄附金

 

認可された慈善団体に寄付する会社は、受けられる控除の最高額が課税所得額の10%相当額であり、当該年度に残った控除されていない寄附金が翌年以降5年間にわたって繰り越されることができます。課税所得額とは、以下の各項を控除する前の収入を指します。

 

(a) あらゆる寄附金控除額

(b) 株主の受取配当控除額

(c) あらゆるキャピタルロス(Capital Loss)の繰越控除額

 

(11) キャピタルロス・キャピタルゲイン(Capital Loss/Capital Gain)

 

会社のキャピタルロスはキャピタルゲインとしか相殺できない、その他業務収入と相殺できません。純キャピタルロスは3年間の繰戻しと5年間の繰越が認められ、且つキャピタルゲインとしか相殺できません。

 

(12) 繰越欠損金(NOL)

 

会社の繰越欠損金は課税所得の80%までに制限されます。繰越欠損金の繰越期間が無期限になります。

 

(13) 株主の受取配当金の控除額(株式会社のみに適用)

 

配当金の三重課税を避けるために、会社の受取配当金に対する控除が受けられます。配当控除額は株主が保有する株式の割合によります。

 

要求:会社の株主は配当落ち日前の45日からの91日以内に、被投資会社の株券を45日以上保有しなければなりません。持株比率により計算した控除率は下表をご参照ください。

持株比率

配当控除率

0% - <20%

50%

20% - <80%

65%

80%以上

100%

 

株主の受取配当金の控除額は以下のいずれか少ない額になります。

(1) 受取配当金の50%/65%

(2) 課税所得の50%/65%(当該課税所得は株主の受取配当控除、欠損金繰越控除及びキャピタルロスの繰越を含まない)

 

注意:株主の受取配当の控除は個人サービス会社(Personal Service Corporation)、個人持株会社(Personal Holding Company)及び小規模株式会社(S Corporation)に適用しません。


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