シンガポールで設立された会社は、シンガポールの会社法及び所得税法(Income Tax Act)の規定に基づき、シンガポールの住所を会社の登記住所として登記し、シンガポール居住者である会社秘書役を1人選任し、年1回の株主総会を開催し、年次報告書(Annual Return)を提出し、財務諸表を作成しなければならず、且つ特定の規定に従いその年次財務諸表に対する監査がシンガポールの公認会計士によって行われなければなりません。
また、会社は期限内に内国歳入庁(IRAS)へ法人税申告書及びその証拠書類(例えば、監査済財務諸表、およびForm IR8A(年間給与明細書・給与所得証明書)等)を提出する必要があります。
会社法によるコンプライアンス要求
会社秘書役(Company Secretary)
シンガポール会社法に基づき、全てのシンガポール会社は設立後6ヶ月以内に秘書役を1人選任しなければなりません。秘書役に就任する者はシンガポール居住者でなければなりません。シンガポール居住者とは、シンガポール国民、永住権保持者、EP保持者、S Pass保持者またはアントレパス(起業家ビザ)保持者を指します。
会社秘書役の業務は以下の通りです。
(1) 代理取締役名簿及び実質的支配者名簿の準備及び保管
(2) 取締役会及び株主総会の議事録・書面決議書の作成及び保管
(3) 会社の各法定記録帳の作成及び保管
(4) ACRAへ法定申告書類及び変更通知を提出する
登記住所(Registered Office)
全てのシンガポール会社は設立された日からシンガポールにおける登記住所を有しなければなりません。登記住所とは、会社までの連絡・通知を受け取り、且つ会社の法定名簿及び法定記録帳を保存する住所です。登記住所は毎営業日の通常営業時間内に最低5時間運営し、且つ公衆に訪問可能でなければなりません。登記住所がシンガポールにおける物理的な住所でなければならないので、メールアドレスを登記住所とすることができません。
現地取締役(Local Director)
シンガポールの非公開株式会社はシンガポール居住者である取締役を最低1名選任しなければなりません。当該現地取締役は以下の要件を満たさなければなりません。
(1) シンガポール国民、永住権保持者、アントレパス(EntrePass)保持者又はEP保持者
(2) 年齢が満18歳
(3) 完全な法的能力を有する
(4) 取締役になる資格を失った者(破産者で復権を得ない者など)ではない
会社名及び個別企業登録番号(UEN)の記載義務
会社名は会社印鑑、および会社又は会社の代表が発行・署名した全てのビジネスレター、勘定書、領収書、官報、出版物、為替手形、約束手形、裏書、小切手、注文書、レシート及び信用状等においてはっきりしたローマ字で明記されなければなりません。
個別企業登録番号(法人登記番号)は会社又は会社の代表が発行・署名した全てのビジネスレター、勘定書、領収書、官報及び出版物などにおいてはっきり明記されなければなりません。
会社オフィサー(Officer)及び情報の変更
取締役、最高経営責任者(CEO)、秘書役及び監査人の変更(委任及び辞任を含む)がある場合には、変更後14日以内にACRAへ通知しなければなりません。
また、取締役、最高経営責任者(CEO)、秘書役及び監査人の個人情報に変更(国籍、パスポート番号又は住所等の変更を含む)が生じた場合には、変更後14日以内にACRAへ通知しなければなりません。さもなければACRAによって罰金が科せられます。
年次株主総会
年次株主総会(Annual General Meeting: AGM)は会社の法定会議であり、年に1回開催しなければなりません。会社はAGMにおいて株主へ年次財務諸表を提出する必要があり、株主は会社の財務諸表及び経営状態について質問することができます。また、株主は会社の重要事項(例えば、取締役の選任または配当金を出すこと)の決定について投票を行うことができます。
シンガポールの非公開有限会社は会計年度末日から6ヶ月以内にAGMを開催しなければなりません。さもなければ、会社及びその全てのオフィサーは会社法に違反したことにより最高5,000シンガポール・ドル(以下、Sドル)の罰金が科せられます。
年次報告書(Annual Return)
シンガポールの非公開有限会社は会計年度末日から7ヶ月以内に年次報告書(Annual Return)をACRAへ提出しなければなりません。さもなければ、会社及びその全てのオフィサーは会社法に違反したことにより最高5,000 Sドルの罰金が科せられます。
CorpPassの登録及び維持
コープパス(CorpPass)はオンラインで行政サービスを利用する際に必要な法人専用の暗証番号「シンガポール・コーポレート・アクセス」です。例えば、シンガポールの会計企業規制庁(ACRA)のウェブサイトに会社の法定書類を提出する際、又は内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore: IRAS)のウェブサイトに法人所得税を申告する際に、コープパスが必要です。
規定に基づき、全てのシンガポール会社はCorpPassを申請しなければなりません。CorpPassは企業と政府との間で取引をすることに使える唯一の認証手段です。