隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

ステラに思いを馳せて~『青い瞳のステラ、1962年夏』より

2007年02月03日 17時09分31秒 | VARIOUS SONGS
  「MY FAVORITE SONGS」の第1回は玉置浩二の「西棟午前六時半」でした。よかったら、ココを見てください。結構、「タイトルに数字」って、ツボなのかも(笑)。

★もっとブルージーなイメージだったけど
 「究極のベスト」とかいうシリーズで、柳ジョージとレイニーウッドの1枚をレンタルショップでみつけました。
 『雨に泣いてる』の「weeping in the rain」のフレーズがなぜか耳について離れなかったり、ギターサウンドと声が一時期クラプトンとかぶったり…、とくにすごいファンというわけではなかったのですが、ちょっとどこかで気になる存在ではありました。その程度なんだけど、でも『青い瞳のステラ~1962年夏』はね、もううまく言えないくらい好き。この曲をその究極ベストで見つけました。
 今調べたのですが、これって1980年リリースなんですね。初めて聴いたとき、なんだかすごく古い曲のように思えて。1962年じゃないにしても、でも60年代の歌だと思っていました。
 たぶんラジオかなんかで聴いて、あのせつないイントロと、やっぱり歌詞ですね、頭から離れなかった時期がありました。もう何年も耳にしていなかったけど、タイトルもいいし、想像をかきたてる言葉は頭のどこかに残っていたんだなあ。
 だけど、今回本当に久しぶりに聴いて、印象はずいぶん違ったなあ。アレンジがもっとブルースっぽいっていうか、アンニュイなイメージだったんだけど、華やかにストリングスなんて入ってて、ギターソロなんかもあったような気がしてたんだけど、そうじゃなかったし。
 80年代、90年代のいわゆるJ-POPって、音楽としてもどんどん深くなって、ロックやブルース、R & Bというようなジャンルが進化していって、リスナーの耳も肥えたのかも(と自画自賛)。『青い瞳のステラ~1962年夏』はある意味、古きよき歌謡曲のテイストもあるような。今の時代にはじめて聴いたら、私はひょっとして「アレンジ、ダサい!」なんて思ったかもしれない。昔出会っててよかった(笑)。

★あくまで私なりの『青い瞳のステラ~1962年夏』を
 それでも、当たり前だけど歌詞は変わらないから。やっぱり歌詞が強い曲はずっと残ります、私の中で。
 イントロのアレンジは記憶と違っていたけど、「赤いキャンディー 包んでくれたのは~♪」だけ聴いて、もう胸が震えました。ああ、これだー!ってね。
 著作権の問題もあるし(当たり前ですけど)歌詞をすべて書けないのが残念。歌詞のすべてに、匂いがあり、思いがあり、しっとりしていて、でもどこか乾いていて…。その言葉の流れときれいなメロディーが相乗効果で盛り上げてくれる。柳ジョージのボーカルはあまり感情移入しないから、私にはそれも好ましい。
 そして、そういうものをすべて超えて「いい!」と思えるのは、言葉ではなく、言葉の間にある見えないものが、聴く人にさまざまイメージを伝えてくれるってところだな。言葉は何も説明していないのですよ。ステラという人の境遇も、今はもう「芝生の下に眠っている」ステラと、彼女を「あんた」と呼びかける男との関係も。
 だからどんなふうに感じてもいいのだけど、でもちゃんと見えてくるのです。この男が海の見える丘にあるステラの墓の前で昔をしのんでいる姿が。1962年の夏、たぶん横浜とか横須賀あたりで、少年の頃に出会った、そのときすでに「色褪せたブロンドの髪」をした盛りを過ぎた女性ステラとの思い出。
 年上のアメリカ人女性との恋愛と解釈する人もいるだろうけど、私はあくまで、少年が見た疲れた女性の悲しい歴史です。当時の少年にはわかるはずもなかった女性の過去。戦後アメリカから流れてきて、米兵相手の毎日を過ごして、ひょっとしたら愛する人もいたかもしれないけど、結局故郷に帰ることもできずに、いつか帰りたいけれど、きっともうできないだろうとあきらめていた女の悲しさ。20年近くもこの国に暮らしながら「片言まじり」でしか日本語を話せないステラは、きっとこの国とも、この国の人間とも心を通わせることなく、ずっと故郷のテネシーに思いを馳せていたんだろう。この国の人たちは、いかがわしい商売をしていた女として、この人を受け入れることもなかったんだろうな。
 「派手な化粧 ふりまくオーデコロン」のステラに、少年はテネシーワルツの「ちょっといかしたステップ」を習って、きっと一緒に踊ったんだろうな。楽しい思い出もあっただろうけど、ステラのかもし出す雰囲気に少年なりにせつなさを感じていたのかもしれない。そういうものを思わせる情景を描写した歌詞が秀逸。
 大人になって、今はもういないステラに向かって、ほら、まだ覚えているよ、「あんたにおそわった ちょっといかしたステップ」。そんなところで眠っていないで、「褒めておくれよ」と語りかける。そして、長い寂しさから解放されて、ステラの魂は海をわたって故郷のテネシーに戻れただろうか、そうであったらいいのにと願いながら、きっと心の中で「テネシーワルツ」を歌っているのだろう。

★きっとそこにステラがいます
 海の見える丘に立つステラの古い家。色のおちた囲いに白いペンキを塗る少年に語りかけるステラ。夏の風が心地よく吹き、海を行く船が見える。
 そういう風景がきっと聴く人それぞれに浮かんで、知らない時代の知らない土地であっても思いが湧きあがる…、そういう歌詞でありメロディーだと思います。
 もし聴いたことがないという方がいらしたら、レンタルショップでもネット配信でもさがしてみてください。そしてよかったら、1962年夏のステラに会いにいってください。

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24 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (若年寄)
2008-07-19 20:56:22
柳ジョージ&レイニー・ウッド、ツアー決定。
その前にフジロック出演。
> http://search.pia.jp/pia/search_all.do?select=all&kw=%E6%9F%B3%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8&go.x=29&go.y=10
返信する
ありがとうございます。 (かけら)
2008-07-25 13:14:53
若年寄さん

お知らせありがとうございます。
ツアーがあるんですね。
今でも、こういう古い曲をライブで聴かせてくれたりするのかなあ。

でも彼のあの声を聴くだけでもいいですよね。
ライブは未経験なので。
ありがとうございました。
返信する
Unknown (若年寄)
2009-01-03 23:41:33
1月25日に横浜でやりますよ。往年の名曲ずらり。
柳ジョージ&レイニー・ウッドのことならこちらへどうぞ。
http://www.g-yanagi.jp/
http://www.rainywood.jp/
http://hpcgi1.nifty.com/benzoo/epad.cgi
返信する
ありがとうございます。 (かけら)
2009-01-04 00:42:56
「べんぞうの掲示板」におじゃましました。
熱い思いがつづられていて、うれしくなりました。
ライブ、一度聴いてみたいです。
お知らせ、ありがとうございます。
返信する
Unknown (乃松松)
2019-12-28 01:00:54
そうですね!
最高すぎる この曲に
最高すぎる 感想を ありがとうございます。
返信する
Unknown (かけら)
2019-12-28 10:38:21
乃松松さん

コメントありがとうございます。

「最高すぎるこの曲」にこの感想は恥ずかしいのですが、10年前に書いたここを訪れてくださる方も多くて、さすが!この曲だなといつも思っています。

年に何回か聴くたびに、やっぱり心のどこかに必ず響いて、ふっと立ち止まりたくなる・・・そんな楽曲です。

ありがとうございました。
返信する
Unknown (ひー)
2020-03-28 01:30:46
母親の車借りてちょっと用事に出て偶然流れた曲がこの曲でした。気づけばリピートしてました笑
僕自身まだ20代ですが何故かとても懐かしい感じがしました。
返信する
うれしい・・・ (かけら)
2020-03-28 12:38:35
ひーさん

こんにちは。
コメント、ありがとうございます。
20代のあなたがこの曲に反応してくださったこと、私はこの曲の関係者じゃないのに(笑)、なんだかとてもうれしくなりました。

私の感じる懐かしさとあなたが感じた懐かしさは,同じではないかもしれないけれど、同じ時間を過ごせたようで。

コメント書いてくださってありがとう。
鬱々とした日が続いているけれど、今日はいい日になりそうです。
あなたにとってもそうでありますように。
返信する
Unknown (ひー)
2020-04-15 02:41:45
返信ありがとうございます。

自分は何か小さい頃の地元の田舎風景や友達、今よりも若い両親や兄弟を思い出しました(^^)
それと、軍人さんと結婚して海外に居る2人のおばぁちゃんですね。1人は日本に帰ること無く天国に行ってしまいました。
2人目のおばぁちゃんは今年帰国予定だったのですがコロナの影響で今年は断念せざるを得ないかもしれませんね汗
お互いコロナ対策をしっかりやって乗り切っていきましょう!
返信する
お互いに! (かけら)
2020-04-16 08:06:35
おはようございます。

いいえ、こちらこそありがとうございます。
古い記事なのに、この歌の魅力からなのでしょう、いまだにコメントをくださる方がときどきいらして、本当にうれしく思っています。

ひーさんのおばあさまにもきっとそれぞれに深いドラマがおありなのでしょうね。
そして、なかなかしぶとそうだけれど一日も早く見通しがついて、もうひとりのおばあさまが帰国できますように・・・。

ひーさんも本当に気をつけて、毎日をお過ごしください。
ありがとう!!
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