2019.03.06(水)
『はじめての街』(2016年 イタリア)
監督 イヴァーノ・デ・マッテオ
出演 マルゲリータ・ブイ(マリア)/ヴァレリア・ゴリノ(カルラ)/
アンドレア・ピットリーノ(ヴァレリオ)/カテリーナ・シュルハ(ラリッサ)/
ブリュノ・トデスキーニ(マチュー)
夫のDVから逃れて、息子ヴァレリオとともにローマからトリノに来たマリア。
その街に暮らす古い友人カルラのもとに身を寄せ職を求めるが、それは決して、たやすい暮らしではない。
学校に馴染めず友達ができないヴァレリオの寂しさや苛立ちも募る。息子はもう、母親がその心の中をどうにか垣間見ることができるような幼い子どもではない。
追いつめられる母親の表情には疲れが色濃くあらわれ、このままで大丈夫なのかと不安ばかりが募っていく。
それでも、人生は捨てたもんではない。
親友カルマはどこまでも明るく強く、そして適度な距離を保ってそばにいてくれる。
人生の酸いも甘いも噛み分けたようなパブのオーナー、マチューはヴァレリオの言葉を静かに受け止めて見守ってくれる。
公園に立つ若い売春婦への淡い思いと、彼女との優しい時間は、ヴァレリオにはショックな出来事で終わってしまったけれど、でもきっとスノウドームにこめた思いはいつかきちんと思い出になるだろう。
そして、ラスト。
はじめて誘われて仲間とサッカーに出かけるヴァレリオの後ろ姿、それを窓から見送る母マリアの涙・・・。
ここに力強く迫ってくるのが、This Is My Life(La Vita)のシャーリー・バッシーの声。
歌詞の字幕なんて見なくたって、「生きていくことはきついけれど、そう悪くはない」、そんなふうに歌っていることは十分に想像できるではないか。そんな幕切れ。
マリアとカルマは対照的な二人だけれど、どちらも地に足をつけて生きている。
この役者たちの安定した演技がすべてを支える。どちらも大ベテランの役者だそうだ。カルマ役のヴァレリア・ゴリノは『レインマン』でも、カルマと共通するような温かい女性を演じていた。マリア役のマルゲリータ・ブイが映画の進行とともに疲れていくさまが表情や身なりに表現され、暮らしていくことだけで疲弊していく母親の悲しみが迫ってくる。
少年の心情も、丁寧に細やかに描かれる。
ラリッサとヴァレリオのエピソードが思いがけず心に残る。謝罪の手紙は飛ばされてラリッサの目に触れることはなかっただろうけど、少年のやり場のない悲しみと怒りは、その後にラリッサに何かを残しただろうか。
人生はそんなに悪くはないけれど、きっとそんなに甘いものでもない。この母と息子の先々がハッピーである保証は何もない。
だけど、下がったり滑り落ちたりしても、ときに誰かに出会ったり優しくされたりすることだってあるさ、それだけじゃなくワタシが誰かを喜ばせることだってあるかもしれない・・・。
シャーリー・バッシーの歌に不覚にも流してしまった涙は、そういう意味だったのかな。
この方が画面に映ると、不思議な安心感がありました。
佐々木すみ江さん、大好きな役者さんです。
このエピソード、これこそ、最後まで演劇人として現役だったという証明ですよね。
https://www.j-cast.com/2019/03/04351818.html?p=all
今日は、ココでDJ 草野が教えてくれたPete Dello & Friendsのアルバム『Into Your Ears』を聴きながら仕事していた。
牧歌的な雰囲気もあり、でもだらけさせないしっかりしたメロディーが巧みな曲たち。
1971年といえば、プログレやハードロックのバンドたちがドカンドカンと大きな足音をたてて、ただただ前進していた激動?の時期。
そんなときに前時代を彷彿とさせるような、こんな音のアルバムがリリースされていたんだなあ。
曲調とジャケットが微妙に違和感で、むしろおもしろいなあと思っていたんだけれど、これを描いたロジャー・ディーンは、イギリスのかなり有名なイラストレーター、アートディレクターで、ロックのアルバムも多数制作している。とくにイエスとの関わりが深かったそうです。知りませんでした(-_-;)。