2024.12.12(木)
『こんばんは、父さん』
at 俳優座劇場
https://nitosha.com/nitosha48/
作・演出 永井 愛
出 演 風間杜夫 萩原聖人 竪山隼太
12年ぶりの再演。
コチラで感想を書いていました(少しは若かったので・・・なのか、無意味に言葉数が多くて恥ずかしい)。
平幹二郎/佐々木蔵之介/溝端淳平さんらのことを「チャーミング」と形容したあのときの私は、うーん、きっとそれでよかったんだろう。
12年はついこの前のようにも感じるけれど、でも私の記憶はすでにさだかではないので、同じものを観た、という感覚はない。
父親が窓から入ってくるシーンや古い工場のセットなど、ラストの胸にしみるやりとりなど、ああ、と思うところもあるけれど。
私が大好きな、永井さんの『こんにちは、母さん』(2004年、加藤治子/平田満)のあのせつない物語と、この『こんばんは、父さん』での矢が四方八方から放たれるような言葉の応酬は、ま反対ではあるが、親子のつながりを鮮明に浮かび上がらせる共通点をもっている。
無神経なままに自分の信念を家族に押し付け息子を縛り、それが自分のできることだと背負い続けて、結局家族も仕事も失った父親は、それでも果敢に自己弁護を続ける。
40代になったエリートコースまっしぐらだったはずの息子は、仕事に失敗し家族とも離れ、今ではもう稼働していない父親のかつての栄光の工場の2階に逃げ込んでいる。
ヤミ金の取り立て屋の若者は、その父親からどうにか取り立てようと画策するが、うまくいかない。彼も土壇場で追いつめられているのだ(おぞましい研修センター行き寸前らしい)。
古い工場のなかで、時は行ったり来たりしながら、父親と息子のこれまでが私たちに披露される。
男とは、人とは、そして親とは、息子とは、と並べても、まっとうに生きることの難しさと、それとは逆に道を踏み外すことのあっけなさは、紙一重なんだと思わせる。
現実には、そこには大きな隔たりがあると思うのだが、舞台上での三人の葛藤を見ていると、その境目はあっけないほどに危うい。
そして、自己を主張することは最初容易くても、相手の気持ちを受け入れ始めると、ま、その先を生きることは、なんと困難か。
そんなどうでもいいことを感じながら、彼らのやりとりを含み笑いで流しながらきいている。
それでも、若者に救いを与え、「ちゃんと生きろよ」と送り出すだけの度量と人生経験を、その初老の父親と中年になりかかった息子は持ち合わせていることがすごいではないか。
ラストの語らいは、やっぱり心にしみる。行き違いがいくらあっても、激しく言い合ったからこそ、あの優しい笑みが交わされるのだ。
幼いころのように、階段に座って父が酒を吞む様子を眺める息子、その視線の先に少し恥ずかしそうな、でも誇らしげな父親。
今は何をしているんだ?とお互いに問いかけ、今の仕事を説明する姿には、よけいなものを捨て去った息遣いだけが感じられて、こちらが救われる。
情けなさと力強い言葉を行ったり来たりする父親の風間杜夫さん。まだまだ!と突き進む強さと衰えが見え隠れして、胸をつかれる。平さんより、哀れな感じが素直に伝わりました。
大事な役者さんです。もっと芝居を観たい!
萩原聖人さん、麻雀に行ってしまったのかと気がかりだったけれど(笑)、芝居を観られてよかった。暗さが魅力です!
竪山隼太さん、動きも口跡もシャープでさすがでした。
俳優座劇場は若いころ、よく通ったけれど、改築されてからは、2007年に芝居を見に行って以来(ココ)。
このときは、東京ミッドタウンが開業したばかりで建物は出来上がっていても、周辺の工事は途中だったみたい。晩秋の夜の部だったので暗い中、劇場にたどり着くまで、迷路みたいなところを抜けていった記憶がある。
遠い昔のことだけどね。
東京っ子の私は、中学の頃から六本木のあたりをうろちょろしていた時代があって、六本木の変わりようを当時の友人たちと語り合いたいもんだ。もう会えないんだけど。
最近、六本木にちょっと縁がある。誰か連絡してきてよ。話そうよ・・・。