2013.9.21(土) 22:00-22:30
J-POP TALKIN'
by 田家秀樹
先週の分はコチラです。
田家さんの最初のコメント。
「ロックバンドという言葉でスピッツを思い浮かべる人はそんなに多くないのかもしれませんが、『どこにも属さず、誰にも似てない』という旗印を掲げて、25年前に解散したバンドがありましたが、同じようなスピリットをもって活動しているのがスピッツじゃないでしょうか」
オープニングに流れた斉藤和義「Always」、カップリング「カーラジオ」。とがってて胸のどこかに突き刺さる、でもすごく気持ちのいいサウンドだ。
「野生のポルカ」流れる
■「野生」
ツービートのアイリッシュサウンドにギターロックをのせた曲。
田家さんは、「ランプ」とこの曲は、田舎、大きく言えば「脱文明」を歌ったものだと。スピッツの曲には「野生のチューリップ」「田舎の生活」「けもの道」など、「野生」という言葉をイメージさせる曲も多いと。
田家「ポルカといえば、19世紀の音楽でしょ」
草野「はい。でもどっちかというと、Pogues とかで、ロックにアイリッシュサウンドを取り入れた曲で「なんとかポルカ」っていう曲がけっこうあるんですよ。そこからちょっともってきてるんですけど」
田家「野生っていうのも、スピッツの曲にはこれまでもあるわけで」
草野「そうですね、失っているようで、実はまだあるものということで」
最後の「男のコーラスについて。
草野「なんか、こういうの、やってみたかったんですよ。スマップみたいに全員でユニゾンで歌うっていうのもいつかやってみたいんですけど」
田家「楽器置いて、みんな前に出て(笑)」
草野「そう、そう、そう(笑)。『あれから~』とか。でも今回はサッカーのサポーターのような、sing along な感じで。今までやったことなかったんで」
田村「かわいくなるのはヤだったんだよね」
草野「そう。オレらだけでやるとかわいくなるかなと思って、フワラーカンパニーズのみんなを呼んで、亀田さんにも参加してもらって、総勢9名で歌いました」
田家「歌ってて、どんな気分でしたか」
崎山「なかなか気持ちよかったですよ」
草野「レコーディングの中で、いちばん楽しんでやれた(笑)」
田家「(笑) そうじゃないと野生の感じが出ないんでしょうね」
草野「フラカンのベースのグレートくんは、いろんな声色を使って、フーリガン的な歌唱もやってくれて、ちょっとやさぐれた感じで」
(笑)
田家「そのあとは、歌詞もなくスキャットだけの『scat』がきて・・・」
草野「最初はスキャットもなく、インストの曲を作りたいと思ってたんですけど、ちょっと寂しいかなと思って入れてみました。こういう曲が入ると、ギューッて詰め込んだ感じじゃなくなるかなと思って。昔は『宇宙虫』とかもあったし、そんな感じですかね」
■ベタなディスコサウンドを
田家「『エンドロールには早すぎる』はどうだったんですか。このおしゃれな」
草野「これ、(ドラムとベースは)打ち込みなんですよね。この曲くらいかな、遊んでる曲っていうのは。『潮騒ちゃん』も遊んでるかもしれないけど(笑)、演奏はマジだからね」
田村「『エンドロール』も遊んでるっていっても、けっこう真っ当じゃない? メロディーとか」
草野「そうだね。バンドがディスコサウンドに挑戦するのってよくあるじゃないですか。そういうの、オレ、好きなんですけど。『ガッツだぜ』とか『シャングリラ』とか、トライセラの『FEVER』とか。でもそっちじゃないほうをやりたかったんですよね。もうちょっと、トレンディードラマで使われるような(笑)。ベタな感じのディスコサウンドをやってみたいと思ってたんで。で、あえて打ち込みにしたんですよね」
崎山「打ち込みの音もつくるのはけっこう大変で。やりとりするのもね」
草野「ふだん、そういうのやってないしね」
■そぎ落とした音
田家「『エンドロールには早すぎる』のあとに、70'sっぽい『遠吠えシャッフル』がきて、いろんな音楽をたのしんでいますよ、というのがありながら・・・」
草野「そうですね。根っこにあるハードロックっぽい、Uriah Heep みたいな(笑)」
田家「音に引っ張られているようなね」
草野「キーボードも、ロックっぽい人、ソウル・フラワー・ユニオンの奥野君にお願いして、すごい楽しかったですね」
田家「『遠吠えシャッフル』っていうタイトルは?」
草野「これがタイトルでもいいかなと思ってたくらいで。遠吠えシャッフルも検索してみたら、使ってる人はいなかったですね(笑)」
田村「なかったんだ(笑)」
草野「なかった。オリジナル。遠吠えだとわかってても遠吠えする・・・という感じ」
田家「正義なんか信じないってね」
田村「『遠吠えシャッフル』と『scat』はセルフプロデュースで、むき出し感はほかの曲よりはあるかもしれない。よけいなものは入ってないし。よけいなものっていうか・・・。ホントにそぎ落としたバンドの音とキーボード・・・という感じはあるかもしれないですね」
■「流されやすいから・・・」
田家「遊びというと『潮騒ちゃん』ということになるのかもしれないけど。これは遊びと言っちゃっていいんでしょうかね」
草野「そうですね・・・。でもこういう曲はけっこう歌詞とかが遊べるので。博多弁を使ったりとか」
田家「茶化しているようにみえて、でも・・・っていうのがありますね」
草野「・・・なんだろう。永遠のテーマでもあるんですけど、流されないというか。結局、流されやすいんですよ、オレが」
(笑)
草野「それを戒めるように生きてきた、というか。浮いちゃうことを恐れないというか。前にそういう曲もありましたけど。そういうのは根底にあって、歌詞を作るときのテーマなんですが。そのへんが(この曲には)色濃く出ているかな、と」
「エンドロールには早すぎる」流れる
田家さんコメント「ウルフルズをはじめ、いろいろなバンドの名前が出てきました。スピッツはマスコミの中ではそんなふうに見えてないのかもしれないけれど、今のシーンの中でいろんなバンドと一緒にやっているということで、わりとシーンの中心になっているんですね」
・・・と、夏のスピッツ主催のイベントに参加した、バラエティーに富んだアーティスト名を列挙。
田家さんは、今回のアルバムの前半と後半の曲たちの違いを語る。
田家「前半はアルバムタイトルの『小さな生き物』に即した作品を並べている。テーマの強いものが『未来コオロギ』から『野生のポルカ』までですか。そして『scat』のあとに『エンドロールには早すぎる』が続き、スキャットで終わっちゃったら早すぎるよ・・という意味があるのかとも思いましたが(笑)。1曲1曲に意味があり、とても吟味されたアルバムだと思います。そして最後が、シングルにもなった『僕はきっと旅に出る』なんです」
■外されてたかもしれない・・・
田家「最後が『僕はきっと旅に出る』というのは、わりとすんなり決まった感じですか」
テツヤ「どうだったっけ?」
田村「困ったんだよ」
草野「入れるところがなくて困った」
テツヤ「この曲の入るところがなくて困った」
田家「ああ、そうなんですか」
草野「ひょっとしたら外してもいい・・・くらいの」
田家「ええっ」
テツヤ「でもシングルだし・・・みたいな。で、苦肉の策で最後においたら、はまりがよかった」
草野「エンディングっぽねっつって」
田家「見事にはまりましたね~」
田村「そういえば5月のインタビューで、田家さん、推してたなあって浮かんで(笑)」
草野「『潮騒ちゃん』で終わるとね、ちょっと軽いもんね(笑)」
田家「だって潮騒ちゃんが『飛びたい 飛びたい』って歌ってて、これで旅に出してくれたわけですから」
草野「それこそ、ここでちゃんとエンドロールが出てくる感じですか。早すぎない・・・(笑)」
田家「それまで(の曲にある)の再生の気持ちをここで救ってもらっている・・・」
草野「自分が歌ってほしい曲という意味では、この『僕はきっと旅に出る』はまさにそういう曲ですね」
田家「シングルで聴いたときはだれかが旅に出る・・・という印象でしたが、(アルバムでは)全然違って(聴こえて)感動的でしたよ」
草野「ありがとうございます」
■小さな宣言?
田家「『小さな生き物』が、これからのスピッツにいろんな意味をもつアルバムんなったんじゃないかと思ったのですが」
草野「そうですね。ツアーで力を発揮できる曲が並んでいるなという気がしますし。ベテランバンドになると、ヒット曲ばかりで新しいアルバムからはちょこっとしかやらない人も多いみたいですけど、このアルバムからはしっかりとやりたいですね」
田家「『小さなアルバム』というタイトルもそうなんですけど、スピッツに似合わない言葉なんですけど、『宣言』って思っちゃったんですよ」
草野「あ、そうですか」
テツヤ「小さいとはよく言われるけどね(笑)」
草野「ああ、物理的にね(笑)。
田家さんはこのアルバムのタイトルはもちろんスピッツらしいと思ったけれど、曲たちの印象を「静かな宣言」と感じたようです。
草野「ああ、そういうことね。そうですね、そういう強い言葉は似合わないかもしれないですね。・・・ほー、そうすか・・・。がんばります(笑)」
田家「(笑) そういう意識はおありなんでしょうかね」
草野「うーん、ゆるい感じでやらせてもらっているんですけど、たまには気合を入れてやんなきゃ、っていうね(笑)。ここまで音楽を続けさせてもらってるわけだから、そういうところはありがたいし、与えられた役割だと思うので、しっかりやらなくちゃいけないなと思うんですよね。責任感とかいうことを考えると疲れちゃうんですけど、でもやるときはやらなければ・・・と」
田家「スピッツが何かを宣言した、という感じはありますか」
崎山「マサムネの言葉にもあったように、やるときはやる、というのはありますね。そういう気持ちが凝縮されて。今回のレコーディングとかでも、基本的に気持ちいいグルーヴを奏でるというのが自分の中にあって、そういうのがライブでもレコーディングでも練習でも。そういうみんなで気持ちいいグルーヴを共有するっていうのは前より強くなりましたね」
草野「ロックバンドとしての再認識というか・・・。ロックって言葉も最近古くなってますけど、自分が思ってるロックって、ヘンなことやったり、人と違うことやったり、とか。自分は世の中の異物じゃないかって思っている人でも、これでいいのかもしんねーって思ってもらえる音楽だったらいいなと思っているんで、そういうところを忘れないでいたいな、と。だから、完全にはPOPSにはなりたくない・・・。そういうところを再認識してやっていきたい」
田家「小さな生き物ではあるけれど…」
田村「・・・宣言じゃん・・・」
草野「うん、ヘンな生き物かもしれないっすけどね(笑)。それでもOKなんだと」
田家「守りたい生き物を抱きしめて・・・もう一度果てを目指すんだ、と」
草野「そうですね。美しすぎるクニには居場所がないかもしれないけど」
田家「ないっすね。僕らもないっすよ」
田村「言葉で出すことはないけど、毎回アルバムを出すことで伝えているつもりですよ」
田家「はい。それで、今回は言葉でも言ったと思ったんですよ。それである種の宣言と言ったわけです」
草野「『とげまる』くらいまでは、時代の空気みたいなものを曲に反映させすぎると、説教くさい親父ロックみたいになるのがヤだったんで。でも、もうそうなっちゃってもしかたないかっていう気分」
田村「フン(笑)。全然説教臭くないよ」
草野「これからなっていくかもしれないですけど(笑)、それはそれでもうしかたないのかなっていう・・・」
「僕はきっと旅に出る」流れる
田家さん、コメント
世の中の流れからはみ出して少し生きづらくなっている人がこれでいいんだと思える音楽がロックだという草野マサムネ。田家さんは、それに対してポップスはみんなが楽しくなれる音楽という位置づけをしていた。
会社や家庭や、そして社会の中にあっても、自分の居場所がなかなか見つからない「小さな生き物」が最後に旅に出る・・・このアルバムを、そんなふうにとらえたんだそうだ。
ジャーナリズムというのは「これでいいのか」という疑問を真正面から問うもの。ファンタジーやメルヘンはそういうことをじんわりと感じさせる。
「今回のアルバムは、スピッツならではのロックであり、スピッツならではのファンタジー、メルヘンなのではないかと思いました」
なお、このようす、というかインタビューのすべてをココのpost castingで聴くことができます。
この文字オコシより、そちらを聴いたほうがずっとおもしろいと思います。本当に。
ラジオ用の・・・というより、雑誌のインタビューを少し編集してラジオで流すというのがこの番組のコンセプトだと思うので、なんとなくふだんのスピッツの雰囲気が伝わる番組という気がする。
それにしても、しゃべりはほんわかまったりだけど、じつは中に強いこだわりをもっている人たちだから、よく聴いていると、インタビュアーの田家さんの解釈には簡単に乗らないところがおもしろい。
それにしても、あの「僕はきっと旅に出る」が、外される憂き目にあう可能性もあったとは・・・。
ベタなディスコサウンドを目指したかったという「エンドロールには早すぎる」。
そうか~、それで納得。だからこそ、草野正宗が書きそうにない「君の過去」とか「そんで抱き合って 追いかけっこしてさ」なんてフレーズが妙に心地よい引っ掛かりで残ってしまうんだな。
爆音で聴くこのアルバム・・・。
これとともにいくつもの季節を越えていこうかな。
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