ビター

■ビター

声をあげて　唇を押さえて
柔らかな時間の流れを　慈しむ
この瞬間が　瞬間ではなくなって
わたしの一部に　溶けていくまで

標本のなかに　少年を閉じこめて
虫眼鏡で　観察記録
どこで生まれて　何を見て
何を殺して　食べてきたのか

苦いものも　とろけるものも
ボウルの中でかきまぜる
わたしを騙すためだと言って
エッセンスなんか　利用している

ボウルの中で　逃げ回りながら
わたしに媚びをうる　少年の悪あがき
最後の光だとわかっていながら
悟らずに　うなずかずに

ここにいても　待っていても
光のトビラは　たぶん開かない
だから　冒険のつもりで
私のゲームに　乗ってみない？