2017.11.30
ナイロン100℃
「ちょっと、まってください」
at 本多劇場
http://sillywalk.com/nylon/schedule.html
作・演出 ケラリーノ・サンドロウ”ィッチ
出 演 みのすけ/大倉孝二/三宅弘城/遠藤雄弥/マギー/廣川三憲
村岡希美/水野美紀/藤田秀世/犬山イヌコ・峯村リエ/木乃江祐希/小園茉奈
2006年の『ナイス・エイジ』(ココです)、2007年の『犬は鎖につなぐべからず』(ココです)、2013年の『わが闇』(ココです)が私の「ナイロン100℃歴」。ナイロン100℃の芝居と語れるほどの歴史は私にはない、ということだ。
レビューを今さらながら読むと、「ナイス・エイジ」を見たときの驚きから何も越えていないみたいだ。時空を越えて、とかタイムスリップというテーマが個人的に好きなのことも理由のひとつかもしれない。それでも案外「え~、こんな感じで終わっちゃうの~」という軽い失望があったりするんだけれど、今覚えている限りにおいて、「ナイス・エイジ」はフルに近い満足度だった。
あれも「わが闇」も家族の歴史だし、家族劇とも言える。けれど、今回の『ちょっと、待ってください』の「御来場のお客様へ」の中で、KERAさんは「戯画化された家族劇を一本書いてみたいと、ずっと思っていました。この芝居はそれをやってみたものです」と書いている。家族の物語だけれど、それらとは異なる「戯画化された家族劇」がこれなのだ。
劇団初めての不条理劇挑戦。
なにより、時間の進み具合のゆがみ、誰かの行動が思いがけない経路でほかの人の状況に影響を及ぼすおかしさ、スムーズに進んでいるかと思うと突然破綻する会話。それらがKERAさん特有のナンセンスなスピードアップされた言葉の応酬の中で、ちょっと立ち止まって反芻する間もなく進んでいく。
裕福そうだしお互いの表面的ないたわりも垣間見えるけれど「退屈」から目をそむけているのか?と思わせる屋敷の家族たち、一方はその屋敷の敷地に住みつこうとしている一家(「乞食」という刺激的な身分紹介がされているが、むしろ娘の男探しで食いつないでいる放浪一家)。その二組が諸々のすったもんだで入れ替わり、だけど結局は元に戻って、「チャンチャン」という幕切れ。
役者たちが大量の言葉を体で発している感じが気持ちいい。なんだか楽しんでいるようにさえ見える。客演のマギーの少々不気味な感じを伴うとぼけた人物設定(この人はどちらの家族でもないし)も、同じく客演の水野美紀のしたたかな娘のある種の向上心?さえも、尋常ではないような、でもありうる要素も漂わせる。
個人的には、いつもながら犬山イヌコの巧妙な演技、外れっぱなしの大倉孝二、大河ドラマのイメージとは一変する若い娘役の峯村リエの抑え気味の演技に笑ってしまう。
この家族たちの狂った顛末を追っているうちに、それは案外平穏で、現実の世の中のほうがもっとハチャメチャに思えてきたり。絶望感が静かであるだけ、むしろ怖さがあとでしみこんでくる。
舞台転換の際のCG?を使った効果がおもしろく、それがよいテンポになっていた。
どんな感想をつじつま合わせで述べても意味がなく、腹をかかえて笑った数だけ、この夜の帰り道は満ち足りていたっけ。
こんなに遅くなっての感想で、この芝居自体はあれから地方公演を出て、そろそろ千秋楽を迎えるとか。
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