隠れ家-かけらの世界-

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マイノリティーとともに駆け抜けて~映画 「ミルク」

2009年11月25日 20時30分34秒 | 映画レビュー
ミルク (2008年 アメリカ)

監督  ガス・ヴァン・サント
出演  ショーン・ペン/ジェームズ・フランコ/エミール・ハーシュ/ジョシュ・ブローリン


■ハーヴェイ・ミルクがとにかく魅力的なのだ
 ハーヴェイ・ミルクという人物がとにかく魅力的。
 精力的に政治活動を進め、人々をリードしていくカリスマ性ももちろんだけれど、恋愛体質?のセクシーさが対極にあるところが、不思議な魅力となっている。
 途中で別れたけれどある意味で生涯の恋人と思われるスコット・スミス(ジェームス・フランコ。年をへるにしたがいステキになります)との出会いなんて、恋愛映画か?と思わせるくらいに濃い。
 マイノリティーのために闘い、何度も挫折しながら信念を貫き通す強さ。
 小賢しいくらいにうまい演説。
 人の気をそらさない言葉の選択。
 そういう要素がいくつも重なって、「ゲイをカミングアウトして公職についた最初の人」になる。
 ドキュメンタリーの要素も残しつつ、あくまでミルクという人物像をストーリーに乗せて「おもしろく」描いたことが、この映画に色彩と躍動感を与えたのか。
 映画のコピーにもなっているが、「希望がなければ、人生は生きる価値などない」という思いを発端に突き進んでいく。
 ゲイが社会に受け入れられるなどと甘い夢はみていなかったのだろう。暗殺の予感を冷静に受け止め、最後の言葉を録音しているミルクをバックに、彼の闘いが描かれていく。
 仲間の一人ひとりが総じて個性的。背負っているものの重さと、軽やかな生きざまが描かれる。
 ミルク亡きあと、それぞれがどんな道を勇敢に生き生きと歩いていったかがエンドロールの前に紹介される。
 ミルクの意思と愛がちゃんと受け継がれていたことを知って、ほっとする。そうでなければ、同僚議員であるドン・ホワイトの凶弾に倒れた最期はあまりにあっけなく悲しい。


■ショーン・ペンが圧巻です
 ショーン・ペンがゲイの男を魅力的に演じている。ゲイはいや!っていう人には、ひょっとしてたまらなく嫌悪感かもしれないけど。
 「デッドマン・ウォーキング」「ミスティック・リバー」とは真逆に,生きることに前向きな上昇志向の男を強く、優しく、ちょっと淫靡に演じて秀逸。
 かわいくて賢くてめっぽう明るいゲイの青年を演じたエミール・ハーシュは踊るように画面を華やかにする。
 そしてミルクの20歳年下の恋人スコットを演じたジェームス・フランコ。ただ若くてハンサムなだけの男だったのに、ミルクと別れて、そして戻ってきてからは、包容力と思慮を兼ね備えた大人のゲイに成長していた。
 
 すべてを受け入れてくれる社会なんて、マジョリティーの人間にもないけれど、でもマイナーな部分の大きさを思うと、彼らの闘いはどんなに熾烈だっただろう。
 なにをくだらないことを!と思われるのを覚悟で言えば、社会に背を向けられた人々の美しさに圧倒されてしまうのです。

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