今朝の“あなた”にありがとう！

　今日、とある私鉄の電車内であなたを見かけました。
　今日は幼稚園の遠足だったのかな？
　私が乗ったら、すでにあなたたち幼稚園児で座席はいっぱいで。でも、みんな、先生の注意をよくきいて、小さな声でおしゃべりして、いい子にしていましたね。
　車内はすいていて、私はドアのところに立って、あなたたちの楽しそうな様子を見ていました。

　次の駅でドアがあいたら、70代後半くらいの高齢の女性が乗ってきて、ドアのところに立ちました。
　あなたたちを引率していた先生方のなかには、明らかにその女性の存在に気づかれた方もいらっしゃいました。先生方はあなたたちと一緒に座っていましたが。
　ふと見ると、優先席にも先生が1人、子どもたちと座っていましたね。
　どうするのかなあ、と思っていたら、それまで黙って静かに友だちの話をきいていたあなたが、ちょっと迷って、困ったような表情で立ち上がって、横にいるその女性の目を見たのよね。
　その女性はちょっと驚いていたけれど、優しい声で、
　「ありがとう。じゃ、座らせていただきます」
　そう言って、腰をおろしてくれましたね。そして、「どこに行くの？」と、あなたに話しかけていました。
　あなたはきっと恥ずかしがりやの女の子なんでしょうね。困った表情で、でもしっかり答えていました。
　次の駅で降りるときに、あなたに「いいことをしたわね」と声をかけたら、あなたはニコッと笑ってくれました。
　
　勇気がふりしぼって席を立ったんでしょうね、きっと。
　いつもおとうさんやおかあさんに、「お年寄りがいたら席を譲りなさい」と言われていて、それをちゃんと守ったのかな。
　それとも大好きなおばあちゃんのことを思い出したのかな。
　恥ずかしかったでしょうけど、ほんとうにとてもいいことをしたんですよ、あなたは。
　願わくば、あなたの先生方が、あなたの今朝の行為をちゃんと褒めてくれるといいなと思います。
　
　あなたのおかげで、今日はとても気持ちよく仕事ができています。
　ありがとう！

　　　　　　　　　　　　　　　　　2010.10.15 （金）