神子屋教育🇯🇵(かみこやきょういく)

我が家流/みみかとママの「おうち」教育

≪ ぼくの友だち ≫

2008年03月21日 | 夢見る夢子
「やめて!その木を切らないで!!」
叫びながら、少年は駆け足でやって来た。
「この木はぼくの大切な友だちなんだ。 
だからお願い、この木を切らないで!!」と、少年は言った。

僕はハッとした。
それから、遠い昔のことを思い出していた。
『そうなんだ、この木は僕にとっても大切な友だちだった。』
僕がまだ風や雲と遊んだり、花や草と話が出来たこの少年ぐらいの頃に、僕たちは確かに友だちだった。

僕はいま大人になり、たくさんのお金を稼ぐために木を切っている。
木を切ったお金できれいな服を買い、ピカピカの靴を履き、おいしいものを食べて、僕はお金のために生きている。
僕の心の中はお金でいっぱいに満たされて、枯れかけた草の気持ちや、傷つけられた花の痛みを感じることなど忘れていった。
僕はいつの間にか、何も感じない大人になっていた。

僕のために素敵な歌を聴かせてくれた小鳥たち。
激しい雨から僕を守ってくれた大きな葉っぱたち。
悲しいときには、とびきり楽しいダンスを見せてくれた季節の花々たち。
いつも、僕のそばにいてくれたのに・・。
素敵な歌も楽しいダンスも、大人の僕にはもう聞こえることも見えることもなくなった。
そして僕はいま、友だちだったこの木を切ろうとしている。
この木を切って、お金に代えて物を買う。
・・そのために。

目の前の少年は言った。
「おじさんたちには聞こえないの?木たちは泣いているよ。
『昔はあんなに仲良しで、大人になってもず~と友だちでいようねって約束したのに。
大人になるとみんな私たちを忘れてしまう。
私たちの声は届かなくなった』って。
おじさんだって、この木と友だちだったんじゃないのかい!?
この木はおじさんをずっと待っていたんだよ。
どうしてその友だちを傷つけるんだよ!」
少年の声はだんだんと涙声になっていった。

僕は少年に何て答えていいのか分からなかった。
「ちがう、ちがうんだ!!」と言いかけたその時、僕は目が覚めた。
僕は切ろうとしていた大きな木にもたれながら眠っていた。
そこにはもう、少年の姿はなかった。

気がつけば、僕の頬には涙が流れていた。
消えた少年は、僕の中にいた。
少年は僕自身だったんだ!
忘れていたはずの何かが、僕に話しかけてきた。
僕はしばらくそのまま、その木にもたれかけていた。
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