イラストレーター 岡田知子さん。
彼女がかつて師事していた大御所、灘本唯人さんの追悼展が
都内であると聞き、仕事の前に立ち寄った。
この日の着物は……
スーツ着物に、きはだ色の読谷山花織の帯。
場所は新宿御苑駅 新宿門口のすぐ近く。
写真店に併設されている小ぢんまりしたギャラリー。
私は、近代西洋画なら高校時代からそこそこ鑑賞経験があるけれど
イラストレーションとなるとさっぱりで、
和田誠、安西水丸、宇野亜喜良……名前くらいしかわからない。
でも灘本さんの作品は、「あっ、見たことある…!」
書店で、劇場で、街なかで。
知らず知らずのうちに、記憶に刷り込まれている。きっと誰もがそう。
例えば
細木数子さんの占術本は、10数年にわたり灘本さんのイラストを
表紙に採用。
画集をめくって「これ、いいな!」ぱっと目についた
佐藤愛子さんの著書の表紙。
ユーミンの企画物アルバムのジャケットも。
画集の解説にもあったけれど、
灘本さんの描く女性は、決して整った造形ではなく、
ピカソのように崩れていたり歪んでいたりすることもあるのに
みな“美人”で色香が漂う。
私はむしろ、カシニョールの女性像を連想しました
(素人の感想です)。
白くてはかなくて、ちょっとアンニュイな感じ。
灘本さんは、歳を重ねた女性の気品や艶を
描き出すのが得意で
特に、和装女性のイラストは
浮ついていない、お腹の底から見つめているかのような眼差しに
どきっとさせられる。
“美しさ”って何だろう?
“美人”の条件って何だろう?
改めて、細かな造形よりも、表情やたたずまいがものを言うことに
灘本さんの作品を眺めていると、気づかされる。
私も私の表情を切り取ったとき、
こんな柔らかな、余裕のある印象を、人に与えられたらいいのに。
代表作の前で、スタッフの方が撮ってくださいました。
作品は女性だけではなく、
ダンディな男性や時代物、動物も多い。
タッチも、大人向け書籍と童話とでは全然違う。
画集に収められていた灘本さんの談話で
-もっとも表現が難しいのは“悲しみ”-との内容が目を引いた。
イラストレーションの世界で、ということなのだろうか、
確かに灘本さんの作品には、
こちらの心が引きずられてしまうほど、悲しい表情の人物はいないような。
悲しくても、怒っていても
どこかユーモアというオブラートでくるんで
親しみやすさに変えてしまう。
表紙やポスターなど、商材の「顔」として多くの人に
受け入れられる作品を描く人は、その人自身もどこか達観しているところが
あるのかも知れないな。
※「MY FAVORITE 灘本唯人のにんげんもよう展」は26日まで。
会期残りわずかです。ご興味ある方はお急ぎを。
案内はコチラ。
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