1つ上の、何かと太っ腹で面倒見の良い先輩が、
「ねーぇ、絵美ちゃん、これってどう思う?」と、昼休みに。
旅行好きな彼女は、少し前に中央アジア~トルコの一人旅から
帰ってきたばかりだった。
「私、実は現地でプロポーズされたの」 えっ!?
その言葉がねぇ……
「君は羊10頭分ほど素晴らしい。
もしお嫁にきてくれたら喜んで差し出すよ」
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先日訪れたサントリー美術館での紅型展。
最初に目に飛び込んできたのが、鮮やかな黄色地に
鳳凰の描かれた着物だった。
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黄色も、鳳凰も、琉球王朝における権力の象徴の一つ。
身分の高い王族だけが、身に着けることを許されたそう。
そこでふと考えた。世界の「権力の象徴」って何だろう?
家に帰ってからざーっとネットで調べてみると……
韓国 … 孔雀
ドイツ … 鷲
フランス … 蜂、バラ
インドネシア … 馬
イランの遊牧民 … ライオン などなど。
(諸説あり、この限りではないと思います)
鳳凰も含めると、鳥というのは「飛ぶ」という人間にはない能力を持っているから
象徴にされやすいのだろうか。
確かに、それらを冠する意味が伝わらないと、
(羊10頭! と藪から棒に言われても、「?」となってしまうように)
象徴の役割は果たせないから
いかにも「強そう」「すごそう」「めったに見られなさそう」なものが
選ばれるのは、わかる。
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(青はおもに一般士族が身に着けた色だそう)
色については、
中世~近代ヨーロッパでは黄色は決して良いイメージを持たれていなかったが、
それは一般的に普及していた黄色がくすんでいたり、濁っていたり、
褐色がかっていたためで
鮮やかな美しい黄色はやはり、権力者しか手に入れることができなかった
という推察がある。
紅型だって、仮に黄色の発色がこんなに良くなければ、
権力をあらわす色にはなりえなかっただろう。
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(紅型は庶民にも特別な場合のみ着用が許されたが、小紋柄で裏地のみ、という制約があったそう)
権力という概念そのものが、昔のような力を失った
今の日本では、
黄色も鳳凰もこうして、美術品としてショーケースに飾られ
「きれいねえ」と言われることが、最も相応しい役回りといえよう。
そしてもう二度と、
着物で権力を表す日などは訪れないとも思っている。
それは、いいことなのか、どうなのか、
平和なのか、そうでないのか、
複雑な思いがよぎった。