神奈川絵美の「えみごのみ」

ハマショーの茶碗 - 日本民藝館にて -

昨年末にいただいた、“東の京都”桐生の帯。

酒井抱一の作品を下絵にし、四季折々の花を複雑に織り込んで、
春夏秋冬、いろいろな柄を出して楽しめる、
通称「パズル帯」。

季節は巡り…先日、春の柄出しにトライしました!


文庫にたれを被せた結び方。
前帯と後ろのたれは桜、文庫の部分は牡丹。
今でこそ冬牡丹もあるけれど、江戸時代は4~5月咲きのものしかなく、
「夏の花」扱いだったそう。
まあ、現代なら少しだけフライングということで

着物は藍色の大島。そして
今回は白い羽織を合わせてみました。

帯が私にはやや長く、その分文庫が下がりやすいので、
念のため帯締めで押さえ、オシドリの帯留めを。

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この日は港区で取材。お昼過ぎから時間が空いたので
日本民藝館へ行った。


向かいの柳宗悦邸も公開されていて、ラッキー
前回訪れたのは、4、5年前だったか。


当時はまだそれほど、民藝運動のことを知らず
(今も大してわかっていませんが)
家具、しつらいなど漠然と眺めていたものも多かった。
今回、はっと目を奪われたのが

人間国宝 黒田辰秋が創った机だ。
柳氏の書斎にあり、今でも十分過ぎるほどの存在感を誇っている。

昨夏、パナソニック美術館で、松下幸之助ゆかりの芸術家たちの作品展を観たとき、
もっとも印象に残った一つが、黒田辰秋の棗だった。
ねじり梅のような、柔らかな螺旋が彫られていて、それまで観たことのない
造形美を感じた。
そして今年に入り、横浜のそごう美術館で同氏の回顧展があり、
実に多くの、美意識の高い文人や知識人が、黒田氏の作品や人柄を愛していたことを知った。
柳宗悦も、その一人だ。

ちなみに、(写真はありませんが)
書斎にはこの机に向かうための椅子もあり、肘かけの先が獅子のような顔に
なっていてとても個性的だったのだが、それは黒田氏の作品ではないそう。
「18、9世紀のイギリスの椅子で、柳宗悦が気に入って持ち帰ったものです」と
係の方が言っていた。
機会があれば、ぜひこの机と椅子、観てみてくださいね。

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さて、民藝館の方は、その柳宗悦が好んだ茶道具の展示がメイン。
ここで私が見入ってしまったのは、
やはり人間国宝の、ハマショーこと濱田庄司の茶碗だ。
(スミマセン、ハマショーは私が勝手にそう呼んでいるだけです


パンフレットの写真なので小さいし歪んでしまっていますが…。
柳氏が1955年に民藝館にて主催した、第一回民藝館茶会での茶会室飾り(一部)。
中段右端と、下段左端他が濱田庄司の茶碗。

素朴だが、「滋味がある」といえばいいのだろうか。
飴釉という、半透明でツヤのある茶色がかった茶碗が美しくて……。
大きさも、両手におさまり使いやすい、まさに「用の美」で
決して奇をてらわず、日常に馴染んでいるのに、芸術としての「力」もある。

これは民藝館所蔵品ではなく、ネットから探した濱田庄司の飴釉作品の一例。

以前にも少し書いたが、
父方の祖父が益子焼をずいぶんひいきにしていて、
父も…私が6、7歳のころからだから…30代からよく、
祖父についていって、益子へ出かけていた。


民藝館所蔵のこの大皿と同じタイプの作品が実家にある。

幼い私は、正直、色が綺麗なわけでもない益子焼にぜーんぜん興味が持てなかった。
まさか今になってこんな風に、ハマショーの作品に感じ入っているとは……。

他に河井寛次郎の作品や、
柳氏が蒐集した朝鮮や江戸時代の茶碗、器もたくさん。
柳氏自身は、茶の道に入ることはなかったそうだが、
茶における「型の美」を尊重し、かつ「暮らしと茶の交わり」にも心を注いだとのこと。
華やかさには欠けるかも知れないが、いつも傍に置いておきたい、
いつも眺めていたい…そんな心地よさを感じる展示でした。


※会期は23日(日)まで。日本民藝館のサイトはコチラ

コメント一覧

神奈川絵美
ねねさんへ
こんにちは
ブログ記事、拝読しました~みなさん麗しいお着物姿で、
楽しいひとときを過ごされたのですね。
ワタシ、そーんなに日本文化のことよくわかっていない
のですが、
ハマショーは祖父や父が好きということもあり、
時間が許せば展示を観るようにしています
ねね
私も先月、民芸館に行ってまいりました。
同じ場所に立ち寄っても
こんなに、内容の違いがうものになってさまうなんて、絵美さんはやっぱり知的で素敵ですね。
小さな共通項が、うれしいです。
神奈川絵美
straycatさんへ
こんにちは
益子焼に惹かれるようになると、ああ、私も歳をとったのかなーなんて思ってしまいます(笑)。何でしょうねぇ、渋いのですが、安心感があるというか、、、。
黒田辰秋は、黒澤明、白洲正子、志賀直哉…と各分野の著名人にとても愛された人のようで、
横浜の展示ではそうした有名人所蔵の品も数多く観ることができました。また機会があるといいですね。
straycat
黒田辰秋の回顧展、絵美さんのレポで拝見して行きたかったんですが、やっぱり忙しくて行けず、残念。
益子焼のお皿は、釉の灰緑が落ち着きを感じさせて、その中の墨書きのような線が効いていますね。
父が趣味でやっていた陶芸の鉢にもこんな釉薬のものがあるのですが、絵美さんと同じく、あんまりパッとしない地味で肉厚の鉢に最初は全然魅力を感じませんでした。父の作だから仕方なく・・と云う感じで使っていたのですが、使ううちに味わいというか、それこそ滋味のようなものを感じるようになり、今では食卓の景色になくてはならないものになっています。やっぱり用の美のなせる業なんでしょうか?
神奈川絵美
yukikoさんへ
こんにちは~
民藝館はどの部屋も、広い玄関も階段の吹き抜けも
心地良いですよね。
私が行ったときはTV放映前でしが、平日にも関わらず
やはり混んでいました。柳邸の公開日と重なっていた
からかな・・・。柳邸、公開日が限られているのが残念ですよね。

>目線より高い棚にお茶碗が飾ってあって
そうでしたよね!
高台はよく見えて、「ハマショーの茶碗って意外と
高台高いんだな」なんて思ったり(笑)。
見込みは私も、見難かったです・・・民藝的には、あまり重要視されていないのかしら。
yukiko
ご一緒できませんでしたが、昨日行ってきました。残念ながら柳邸の公開日ではなかったので、本館の展示を一人ゆっくりじっくり見てきました。本当に贅沢で居心地のいい空間ですよね、あそこ。
TVの日曜美術館でも紹介されたそうで、入った時は靴の脱ぎ場がないくらい混み合っていました。陳列棚も民藝家具を使っているせいか、目線より高い棚にお茶碗が飾ってあって、見込み(お茶碗の内側)が背伸びしないと見えない(^^;; 背の高い若い青年は難なく覗き込んでましたけど。
神奈川絵美
やまももさんへ
こんばんは! 初めまして
コメントくださいまして、ありがとうございます。

今、私の手元に、民藝館発行の『民藝』2012年10月号が
ありまして(黒田辰秋特集)、調べてみましたら、
木工家の谷進一郎さんの寄稿にこんな文章がありました。引用しますね。

-私が木工の仕事を始めた四十年ほど前のこと、京都で黒田辰秋の作品を見て歩きました。京大北門前「進々堂」の店内の大テーブルでは若者たちが本を読んだりレポートを書いたりしていました。楢材の厚板を使った長さ二メートルを超える大テーブルは、脚部は擬宝珠を象ったデザインで、甲板はシンプルな長方形です。拭漆仕上げですが、作られてから数十年の長い年月、多くの人に使い続けられて素晴らしい木肌になっています。(後略)-

ということで、間違いなくそのテーブルは、黒田さんの作品ですね。
私もコメントを拝読するまで知りませんでした。
やまももさんのおかげで、京都へ行く楽しみがまた増えました
進々堂、機会あったらぜひ立ち寄りたいと思います…!
やまもも
京大前の進々堂
こんばんは。絵美様のブログが大好きで、いつも楽しみに拝見しています。
黒田辰秋氏のテーブルを拝見し、京大前の進々堂のテーブルはこの人の作だとはっと気づきました。人間国宝の作だと聞いていたのですが、誰だか知らなかったのです。似ています!
京都にお出ましの際は是非!百万遍の進々堂でのランチをお試し下さい!
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