神奈川絵美の「えみごのみ」

Joanな私たち

知らなかった。

人口約150万、神奈川県の政令指定都市のひとつ、川崎市。
その中心部に


こんなお茶室があったなんて。

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着物&美術&音楽友のtmkさんが、
所属している不白流の社中主催のお茶会にお招きくださった。

昨年は、秋晴れの海の近くで、ヨコハマ尽くしの会だった。
     ↓



今回は何と
「国宝『如庵』の写しの小間なんですって!」
   「わー、行きます、楽しみです!」
というワケで、
イラストレーターの岡田知子さんと連れ立ち、川崎市民プラザへ。

イベントホールや、プールもある立派な施設を通り過ぎ
数分も歩けば

小川の流れる音がさらさらと心地良い、自然豊かな日本庭園が
広がっていて、
お茶室はそのもっとも奥まったところにあり、
端正なたたずまいで私たちを迎えてくれた。


如庵は織田信長の末弟で、俗に言うキリシタン大名の一人、
織田有楽斎(うらくさい)の手による武家好みの茶室。
オリジナルは現在、愛知県にあるが、そちらは見学のみとのこと。
こちらの、市民プラザ内にある小高庵は、その如庵を模した造り。
当時の要人が一服の茶を愉しんだひとときを疑似体験できる、
めったにない機会だ。

上の写真左上の正面は、刀を預ける部屋。
小間には茶室内に刀をかける場所があるところも多いが、
如庵はその点、贅沢なつくりで、刀を保管するためだけの部屋が別にあり、
お付の者が見張りで居ることもあったそう。

間取りは2畳半。5人の客と亭主、そして社中の先生が同席の計7人で
ちょうど良いくらいの広さ。
「電灯をつけることもできるのだけれど、
今回は敢えて自然光だけで……」

外はときおり小雨が落ちてくる、重い曇天。
小間では炉の炭だけが、生き生きした赤色を持ち、
お道具も、壁の「暦張り」も、私たちの着物すらも
深いセピアのベールがかかったよう。
茶花の石蕗も、九谷の可愛い巾着型の香合も、
シルエットがほんのり浮かび上がるくらいにしか見えない。
ただ一つ、季節の変わり目にかけられることが多いと聞いた
お軸の「関」の字の墨が、色濃く壁から浮き上がり、
小間を見守っている。

手元の茶碗すらも、柄をみとめることが難しいが、
それでも、窓から透けてくるわずかな光が
計算されたように客の顔や、亭主の手元をほんのり照らし、
小間のあらゆるものに、優しい、でもまっすぐな、影をつくる。

私はその影を、ずっと感じていた。
二畳半の小さな部屋に、包みこまれるような気がしていた。
ともすると、この別世界に、放心したまま何時間でも座っていたい感情が
湧き上がり、
それを、外からわずかに入る光が、そっといなしていた。

小間でのお茶会は初めてで、
私自身のお作法はあれもこれも至らず、反省も多かったが、
少人数での静かで穏やかなひとときは、五感が開放されるようで
とても心地良かった。


如庵の間取りは、岡田知子さんがご自身のブログで
レポとともにイラストで紹介しています →コチラ
「暦張り」や「有楽窓」といった
個性を語るさまざまな造りについては、コチラのサイトが比較的
わかりやすいと思います。
ちなみに、東京の有楽町は有楽斎に因んだ命名との説があるとか…面白いですね。


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この日の私は……

東雲色の色無地に、変わり七宝の織名古屋。
少し前に買った、渋い深緑の帯揚げを合わせてみました。
この写真では敢えて襦袢を少し見せました。僅かにベージュ味のある薄緑。


足元は、着物の色味に合った、ぜん屋さんの草履。

ご一緒した岡田知子さんは……

透明感ある薄めの青磁色の色無地に、
能装束からとったという松や青海波、帆掛け船をあしらった織名古屋。
品好くゴージャスで、うっとり

裾にはこのような柄が。(なので訪問着づけですね)


お声掛けくださったtmkさんは、とても秋らしい柄の訪問着(写真は裾模様)。

コメント一覧

神奈川絵美
straycatさんへ
こんにちは
茶室の間取りについてですが、
イラストでは、平面図で床の間も描かれているので、
(「床」と書きこみされているのがそれです)
一見、四畳半に見えるのでは…?
http://verdure.tyanoyu.net/cyasitu020306.html
間取りはコチラのサイトが、
わかりやすいと思います~。
私も、本来は「二畳半台目」と書くべきところ、
台目を省いてしまいました、スミマセン。
二畳+半畳+台目という小さ目の一畳という構成です。
如庵はさらに、鱗板といって、
半畳を三角形に半分にした床板もあるので、
結構広いんじゃないかなーと思います。

小間でのお茶、非日常感たっぷりで、
感覚が研ぎ澄まされるようでした
straycat
皆さまお美しい~、しっとりとした佇まいにうっとりです。
いいなぁ、お茶のたしなみと正座のできる膝(爆)
小間での親密な喫茶の味わいって、お茶本来の姿でしょうか?
ところで、見当違いだったらごめんなさい。
絵美さんが二畳半っておっしゃってる間取りですが、tomokoさんのイラストを拝見すると四畳半に見えるんですけれど、これを二畳半って言うんでしょうか?
とんでもない無知丸出しの質問のような気がしないでも、な、い、、、
神奈川絵美
yukikoさんへ
こんにちは
生憎の曇天で、室内はかなり暗かったのですが、
それもまた趣というものでしょうか。
有楽斎が生きていた時代は、この暗さが普通だった
のかな、と思ってみたり。
大寄せは大寄せの楽しさがありますが、
小間でしっとりゆっくり、もいいものですね
(お作法はダメダメでしたが)。
yukiko
如庵の写しのお茶室(川崎市スゴイ!)で自然光でゆったりとお茶会とは羨ましい限りです。
こじんまりと親しい方々との会話を楽しみながら、立ち上がる湯気や松風のように音を立ててお湯が沸くのに耳をすませ、美味しいお菓子とお茶をいただく、そういうシンプルなお茶会、なかなか機会がありません。訪問着or色無地&袋帯の出番はけっこう多いんですけどねぇ(^^;;
神奈川絵美
環さんへ
こちらこそ、素敵なお茶会にお誘いくださり
ありがとうございました。
(あと、カレン情報も…
主茶碗、手に持った感じがなんとも…皮膚に
すいつくようで、心地良かったです。

環さんのお召し物こそ、洗練された優しい雰囲気の
お柄で、環さんにぴったり、お似合いでした
神奈川絵美
とうこさんへ
こんにちは
しののめ色…ネットで調べるとピンク系で曙色に近いと
出るんですが、
この着物はどちらかというとオレンジ系かな。
でもまあ、秋に通じる色味で、気に入っています。

お道具、今回は暗くてはっきりとは見えなかった
のですが、
確か建水は 「壁が暦張りなので柄があると
うるさくなる」と先生がおっしゃっていて、黒一色
だったのを憶えています。
主茶碗も柄のない黒系で、肉厚の質感なのに
とても軽かったです。次客の茶碗は、「今、流行の
(笑)」とのことで富士山の絵付けでした。
神奈川絵美
セージグリーンさんへ
こんにちは
なるほどバブルの遺産! ザ・ハコモノって
感じはします
日本庭園など、メンテナンスがたいへんそう…って
Tomokoさんと話していました。

この色無地、やや抑え目で私にとっては
秋色なんですよね。この8年余で2回着たか着ないかだったので
出番があって良かったです。
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こちらこそ、お付き合いくださいまして
ありがとうございました
青磁色のお着物に能装束からとった帯、
麗しく眼福でした。

あの炉の炭は、茶室の命そのもののように
感じられました。
やっぱり火を入れて、お茶を点ててこそ
茶室ですよねぇ。

お茶の先生、私はお会いするのは2度目でしたが
あったかくて懐が深くて、いい方ですよね。
また機会に恵まれますように
神奈川絵美
香子さんへ
こんにちは
個人的には、この日のような小雨交じりの
くらーい日には、
こうした小間でこわーい話大会をしてみたいような

色無地、なかなか着る機会がなかったので、
良かったです
神奈川絵美
朋百香さんへ
こんにちは~
いつか色無地シスターズでお茶会しましょう
川崎市って今までお出かけにとんと縁がなかったのですが、
ここはいいところでした。

お茶会のお作法、私はにじり口から入った途端、
頭が真っ白になってしまい
顔を洗って出直したいと思います。
神奈川絵美
misalynさんへ
こんにちは~
住民税と法人税が多そうな川崎市ならではの
施設かしら、と思ったり(笑)。
庭園の散策はフリーのようですよ。
お茶室の見学はどうか、もしご興味があれば
川崎市民プラザにお問い合わせになると
良いと思います。
(ただ、アクセスがあまりよくなくて…、
複数名で溝の口駅からタクシーが、ストレスなさそう)

>文章は流れるようで
いえいえぜんぜん…私、お茶の知識は僅少なので、
感じたことを書くしかなくて…
神奈川絵美
U1さんへ
こんにちは
他の方のコメントにもありますが、
やっぱり茶室を見学するだけと、実際にそこで
お茶をいただくのとではぜんぜん、感じるものが
違うと思いました。
貴重な体験をさせていただきました。
この度はお越しいただきありがとうございました。
ご一緒できて嬉しかったです。
絵美さんの文章を読んで余韻を思い出しています。
ほの暗い空間では触覚が冴えてくるのか、主茶碗と茶杓の触感が忘れられません。
絵美さんの装い、とてもお似合いで素敵でした。
オレンジ系とグリーン系てコントラストが強い?という印象ですが、こんな風にお色が抑えられていると馴染むものですね。参考になります~
深緑の帯揚げは普段使いにも活躍しそうですね。
私も欲しいです!

>朋百香さま
この場をお借りして…
お作法、そんなにご心配要りませんです。
お茶を楽しむお気持ちだけで充分ですので
来年は是非いらして下さいませ。
とうこ
日本の佇まいはやはり、いいですねえ。秋が似合うし。
そして、お召し物もぴったり。
東雲色というのですね。美しい!お襦袢と帯周りと・・・眼福です。
お茶会はお着物もですが、お道具や設えを拝見できるのが楽しみです。
セージグリーン
Joan!
川崎市のバブルの遺産と聞き及びましたが、こんな趣向のお茶室にお金を遣ってくれたのなら結構なことですね。
絵美様のお写真と先に拝読したTomoko様のイラストで、お茶会の雰囲気が十分に味わえました。
珊瑚色の色無地は紅葉の色ですし、深みのある小物あわせでこの時期らしく着こなしていらして、ステキです。
Tomoko
先日はありがたいお誘いをいただいて
どうもありがとうございました~。
お茶室の空間って、やっぱりただ見学するものではなく
炉に釜を据え、人が茶を点てていただくときが一番生き生きするように思います。
って、そりゃそうですよね(笑)。そのために建てられてるんですもんね。
おかげさまでとってもいい心持ちで過ごすことができました。
S先生のお茶会は懐が深くていいですね。
また機会に恵まれるといいな~って思っちゃいます(笑)。
東雲色のお召し物に、胸元、袖口のあたり、
抑えた緑の色調が効いていて好きでしたよ~。(♡)

香子
一足お先にT子さんのところでご様子を拝読させていただいて
絵美さんのところでもこうして読ませていただける。。。
すっかりお茶会に出席した心持ちになりました。
ありがとうございます♪

やぁ、お着物も眼福×2
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
皆様、素敵ー! こちらの場所にピッタリな
秋の装い、福眼です。
私も例のアクシデントがなければ、紫の色無地で
参加したのに・・・と(残念)
とても雰囲気の良い庵ですね。
川崎にこんな所があるなんて・・・知りません
でした。それより、お茶の作法なんてすっかり
忘れている私、まずはお勉強せねば(汗)と思い
ました。何しろ娘時代ですからねぇ、お稽古して
いたのは・・・。ああ、もっとちゃんとしておけば
良かった。
misalyn
川崎と言えば小さい頃から“工場地帯”と擦れこまれている私(達)には、このような素敵な場所があったことが驚きです。
お茶室でなければ一般人も入れるのでしょうか?

秋晴れの一日を優雅に過ごされましたね。お二人のお召し物も緑に映えて素敵です。
それにしても絵美さんの文章は流れるようで、それでいてその場にいるように場景が思い浮かべられて…素晴らしいです って、文章を書くお仕事をされているのだから当たり前でしたか(失礼)
U1
おはようございます。
国宝如庵の写しの茶室でお茶会、いいですね~。
茶室を見学することはあってもそこでお茶をいただく機会はめったにありませんから・・・。

茶室、名陶、歌舞伎、文楽、・・・、着物は日本の伝統文化を繋ぎますね。
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