神奈川絵美の「えみごのみ」

ここは、じゅうたん王国

「ペルシャ絨毯を、観に行きませんか?」

着物友で、私のオペラの師でもあるSさんにお声掛けいただいて。

ペルシャ絨毯といえば、かなり前に高島屋の上品會で
着物の“ついで”に眺めたことがあるくらいで知識はゼロ。

(こんな機会でもないと、なかなか観られないかも)

そんな好奇心もあり、ご一緒することに。


場所は、着物好きさんならおなじみ、中野区の「シルクラブ」。
外観も内装も居心地の良い日本家屋の造り。その会場に今回は……



どこもかしこも、じゅうたんです!

「ペルシャ絨毯は、踏む芸術なんです」と
製造元、ミーリー社の方。
イランにて、伝統的な手紡ぎ、手織り、草木染にこだわり、
高いクオリティに定評があるメーカーです。

ペルシャ絨毯と一口に言えど
イラン革命後に近代化が進み、
紡績糸、化学染料がつかわれているものが今は広く流通しているそうですが、

「それではペルシャ絨毯の“売り”がなくなってしまうわけです。
その結果、柄の細かさ(ノット)だけを追求せざるをえなくなる。
紡績糸なら細いから、細かい柄は得意なんです。
昨今、『ペルシャ絨毯は柄が細かいほどいい』という(誤った)価値観が
浸透してしまっていることを残念に思っています」

ミーリー社で使用している糸は

こんな、一見、麻のような節だった、
手紡ぎの羊毛。一頭から150gしかとれないそう。

柄にもさまざまなスタイルがあって

例えば左と右ではまったく、受ける印象が違います。
左は昔ながらの遊牧民のコロニーに伝わる絵画的な柄。
それに比べ、右は幾何学的。
こちらはかつて王朝が町の職人にオーダーし、下絵師と織り手の
分業でつくられている図柄だそう。

(ミーリー社はいずれのスタイルも、下絵、染め、織り手を
完全分業で製造しています)

ちなみに柄起こしはコンピュータを使わず、原寸大の紙に実際の染料をおいて
つくっているそう。

なるほど手紡ぎ、手織りのあたたかみというのか、
実際に踏んでみると、一枚いちまい微妙に感触が違ったりして、
面白かったです。


2階の喫茶スペースもじゅうたん王国


色とりどりの羊毛でできたタッセルが下がっています。
ここで、クルーチェというイランの焼き菓子と
(クルミあんの入った、ちょっと中東のスパイスが効いた月餅のようなもの)
やはり少しスパイシーな紅茶のセットをいただきました。


話が前後しましたが、ご一緒したお友達は

お誘いくださったSさん、歌舞伎等伝芸に詳しいYさん、
そして、写真にはうつっていませんが、お洋服で参加のRさん。


Sさんは山下八百子さんの黄八丈。
やわらかな黄色や茶色のゆらぎが、もう春ですね。

私は……

明るい黄緑の絣が春を呼び込む
ソテツで先染めした久米島紬。
仁平幸春さんの染帯「優しい月」を合わせました。
帯揚げはイチイで染められた絞り。帯締めは三分の二本遣いで
琥珀の帯留めをアクセントに。


羽織つきの上半身と、お太鼓はこんな感じ。


写りがよくありませんが、
昨秋、千葉の衣舞さんでいただいたお襦袢を初おろし。
ソフトな金茶色で、このきものに合うかなと思って……。


要所要所に黒を効かせたくて、
お草履は黒のエナメルにシコロの鼻緒。
羽織紐、帯留め、草履のツボを赤系で揃えてみました。


※この展示の会期は25日(土)まで。シルクラブのサイトはコチラです。

コメント一覧

神奈川絵美
セージグリーンさんへ
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi
こんにちは
ぜひぜひ、じゅうたん踏みに(笑)行ってみてくださーい
楽しいと思います。
ミーリー社が帯地にできるよう特別に織った布も
おそらく見られるのではと。
こちらの沿線、佐藤節子先生宅の最寄りがすぐ
なんですが、
沼袋までなかなか足が伸ばせず…シルクラブさん、
いい展示が多いですよね。
セージグリーン
あーらー、わが沿線へようこそ。
私もシルクラブへは何度か伺っています。
沼袋は大学卒業一月前から住み始め、3年半おりました。こちらの佇まい、ほっとしますよね。
私も行って見ようと思います。
神奈川絵美
straycatさんへ
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi
こちらこそ、先日はありがとうございました
そうそう、左の意匠ですよねー。世界はつながっていると、改めて実感しました
まさかあのように、床に敷かれていて、自由に踏んで
OKな展示になっているとは思わず、
楽しい経験でした。
また遊んでくださーい
神奈川絵美
れいこさんへ
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi
先日はお会いできて嬉しかったです
製作工程のフィルムを見ているとなおさら、
日本での着尺や帯地のそれと重なってきますよね。
小さいものが玄関にあるだけでも、毎日いい気分で
過ごせそうです。
もうちょっと、チビワンのお行儀がよかったらなあ…
stracat
先日は遠いところまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
私も、これを縦横縮めて帯の長さにすれば、龍村帯のできあがり~などと(不謹慎にも)思ってしまいました
帯の意匠はシルクロードを渡ってきていますものね。
また何かあったらお付き合いくださいね
れいこ
すみません、洋服で。
でも行ってよかったです。
本当に、日本の伝統工芸と共通することが多いですね。
自分の家に敷くならどれがいいかな、と妄想しながら拝見していました。
神奈川絵美
Medalogさんへ
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi
こんにちは
>踏めば踏むほど価値が上がる
おお、そうなのですね。羊毛も艶が出そうですし、
それだけ年季が入っていると
芸術品としての価値も高評価されそうですね。

用途は違えど、糸や織りにかける手間を考えると
着物と共通しているなあ、と、私も思いました
Medalog
きものと絨毯って、なんだか相性がいいですね!

最近テレビで「ペルシャ絨毯は踏めば踏むほど価値が上がる」と見ました。今我が家のリビングに敷いてある安いラグは2回目の冬で風合いが劣化してしまったのですが、ペルシャ絨毯はそんなものとは別の次元にあるのでしょうね…。
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