神奈川絵美の「えみごのみ」

複雑な思い

先週のある日、私が制作に関わった書籍の出版記念パーティがあった。
「ぜひ、着物で来てくださいね」と、若い編集者からのメール。
少し前に、「私も着物が着たいんです」と
澄んだ目で話してくれた
、20代の可愛らしい女性だ。

私は迷っていた。
制作に関わったとはいえ、私はあくまで裏方だ。
監修者、クライアントも集まる中で、着て行っていいものだろうか…。
彼女には申し訳ないが、
パーティの出席そのものも、実は気が進まなかった。

だけど、私もそんなに人間ができていないので、
結局は、着物を着てみたい気持ちが勝り…

選んだのは、チャコールグレーの絽の軽い附け下げに、
西陣の夏帯。

ピンクの絽と迷ったが、こちらにしてよかった。
というのも、出席者のほとんどは、見事に黒やグレーの服で身を固めた、
50~60代の男性ばかりだったからだ。



「わぁ、今日もステキですねぇ」
編集者は無邪気に歓迎してくれる。
クライアントさんも、私が仕事で着物を着ている姿を
見慣れているので、特別なリアクションもなく、
いつものように、丁寧に対応してくれる。
だけど…、出過ぎないようにと会場の隅にいても
落ち着かないし、
取材のときにはフランクに接してくださった医師たちとも、
顔を合わせにくく、距離を感じてしまった。


(やっぱりこういうときには着物は難しいな)
適当な時間いて、先に失礼しようとしたそのとき。

「あの…、私実は、会社辞めるんです」と編集の彼女。
「えっ? そ、そうなの…」と私。

詳しくは訊かなかったが、新たな道を探したいとのこと。
そうなんだ…、それじゃいったんここでお別れなんだね。

と思ったら、着物姿を楽しみにしていた彼女に、
最後に夏着物を見せてあげられてよかったかな、と、気持ちが少し軽くなった。

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複雑な思いのまま帰宅し、翌日。
ふと思い立って、今までの仕事の資料をばっさばっさと捨て始めた。
次に同じような案件がきたら役立つかも…と
保管しておいた書類を、古いものからどんどん破る。

捨てることで、新たに得るものもあるのだ。きっと。

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この話には実は後日談がある。
処分が進んでスッキリしてきたときに、
「こ、これは…!?」



何と、高校時代につくった自作の曲のデモテープが出てきたのだ。
ラベルに「S58.3.26」と書いてあるから、1983年、16歳になったばかりのころ。
日付の下には「○○先輩へ」と、当時私が懐いていた中学時代の一級上の
男性の名前が。
どうして贈らなかったんだろう…。まったく思いだせないが、
取材用のカセットレコーダーで聴いてみて納得。
贈らないでよかった…

ユーミンなど、当時よく聴いていたアーティストの影響が色濃い
曲の数々。(それ自体が悪いのではなく、出来と録音状態が悪いので、
贈らないでよかったと思ったのです)
でもまあ、懐かしいので、そのうち手頃な打ち込みソフトが見つかったら、
再現してみよう…。


捨てることで、取り戻したものは確かに、あった。

コメント一覧

神奈川絵美
運動会の足袋さんへ☆
こんにちは 「和装のスーツ」いいコンセプトですねー。現代の着物スタイルって感じで、個人的に好感が持てます。森田空美さんの装いも参考になりますよね。

荒井由実(「美」ではありませんでしたね、失礼しました)時代は、私はリアルタイムで聴いていなかったのですが、独特の水彩画のような世界観があったような…子どもながらそんなイメージを持っていました。

うちに、1987年ごろの「アラーム・アラモード」というCDがあるのですが、そのあたりはもう、敢えて「狙う」「仕掛ける」感じが出ているかなあ、個人的な感想ですが。
私の知人のマーケッターはかつて、ユーミンの成功を「マーケティングの勝利」と言っていました。まあ、レコード一枚売るにもたくさんのスタッフがいるでしょうから、戦略的なものはたぶんにあるのでしょうね。
運動会の足袋
「荒井由実」時代
http://blogs.yahoo.co.jp/tanbishugi
私が好きなユーミンの曲って、
「荒井由実」の頃のものばかりなんですよぉ~。
「松任谷由実」になってからのも
ちゃんと聴いているのになぁ~???

ユーミンの感性の鋭さは
いつまでも変わりないものの、
どうも“理屈”とか“思惑”とかの
作為的なモノが介入してきて
あの独特の世界観・透明感が
薄れてきてしまったような気がします・・・。

商業的は「成功」なのでしょうが、
私にはどうにも「つまんない・・・」。

運動会の足袋
難しいモンですなぁ~・・・
http://blogs.yahoo.co.jp/tanbishugi
こんにちは♪

「パーティ」とはいえ、お仕事の関係だと
イロイロと気を遣わないと
イケナイのですねぇ! (゜o゜)

でも、絵美さんの場合、
「ステキな私を見て!!」的な
“でしゃばり感”や“これ見よがし感”が
全く無いので、問題ないのではないでしょうか♪

「和装のスーツ」というスタンスで
これからも愉しんで下さいませ★ (^o^)丿
神奈川絵美
りらさんへ♪
こんにちは いやー着物だといかにも「特別なゲスト」みたいに見えちゃって…反省です。でもまあ、これも経験ということで。自分が思うほど、周りは気にしていないかも知れないですしね。

自作の曲、歌も入っているんですが驚くほどキーが高いんです。やっぱり若いときって声が高いものなのねーと実感しました。余裕があるときにでも、再現にトライしたいと思います。
りら
素敵です!
今は「着物」というと、とても特別なものとして見られてしまいますけれど、着物としてのTPOを守って着る分には、全く問題は無いと思います。
とは言え・・・・ちょっと居心地が悪かったと感じる絵美さんの感性が、お仕事をする方の常識なのかもしれませんね。
でも、素敵です!
お仕事でもいつも着てらっしゃるんですから、きっと周りの方々も絵美さんのお着物姿に抵抗を感じてらしたのでは無いのではないでしょうか?

捨てることで新たに得る物・・・ホント、そうなんですよねぇ・・・
私もあれこれ見直してみようと思いました。

自作の曲!聞かせていただきたいですわぁ♪
神奈川絵美
かんなママさんへ♪
こんにちは 私の経験上では、「とりあえず」買ったもので、後あとヘビロテになるものってほとんどないような
でも着物関係って、なかなか処分できないんですよね…。

いいとこどりをやめる、という潔さも、人生には大切なときってありますよね。

青春の~うしろ姿を~って「あの日にかえりたい」でしたっけ。その歌も好きでした。

かんなママ
贅肉をそぎ落とす
http://blogs.yahoo.co.jp/kannaoooo
絵美さんこんにちは!
私、毎年思うんですよね。
生活にも、体(笑)にも、いつの間にか付いてしまった贅肉を、削ぎ落としたい! と。
気に入って買った物達が、沢山あって、「いつか又
使うかも」と、捨てられないのです。
私の場合は資料ではなく、主に食器類。それに、
「買っとこか!」と、取り敢えず買った、和装小物や、どの着物にも合わない、役立たずの帯など。
少ない物で、豊かに暮らしたいと、願ってはいるのですが・・・
便利な生活を捨てて、素晴らしい眺望を得たいな~
とか、考えたりします。
昔、「良い嫁である」ことを捨てて、
「自分らしい家族の生活」を得ました。

絽の付け下げ、お似合いですね。
半襟の出し方が参考になります。

私も、荒井由美時代聞いていました。
卒業写真は今もよく聞くし、カラオケでも歌います。
神奈川絵美
はつきさんへ☆
こんにちは そうなんですよねー古い書類の処分はいつも頭が痛いところです。
フリーの立場だと、すべて自分で管理しなくてはならないので、「何か」のときのために…と、つい溜めてしまうのですよね。「何か」なんて永遠にこないかも知れないのに!

>「エアチェック」って死語?
おおお、そうかも! 今や一曲バラで、mp3で買えますものねー。
中学当時は、エアチェックしたものの曲名がわからずに、15年以上経ってようやくわかったなんてのもありました。
あの時代は、片面23分とか30分のテープに、いかに曲をきっちり切らさずにおさめるか、いかに雑音を入れないようにするか、なんてことに熱を入れていたような
今と比べものにならないほどアナログで、不便で、スローでしたが、懐かしくいい思い出として心に残っています。
はつき
耳の痛い
http://blog.goo.ne.jp/asochan0930
今の私のオフィスでの机を見ると、ほんと、「捨てなくては」といやになります。
捨てないと新しいものって入ってこないんですよね。
あ、着物も一緒…。

音楽と言えば、今日の絵美さんのエピソードで、学生時代はレコードが買えず、エアチェックを一生懸命していたのって、私の世代が最後かもしれないなあなどとと思ったのでした。「エアチェック」って死語?
神奈川絵美
straycatさんへ★
こんにちは 連投、大歓迎です
今、改めて調べたら、私のリアルタイムは「守ってあげたい」(アルバムなら「昨晩お会いしましょう」1981年リリース)でしたから、同アルバム収録の「カンナ8号線」は昔の歌ではありませんでした。スミマセン、記憶が曖昧で。

当時、そこから遡って、荒井由美時代も聴きましたよ~「ひこうき雲」も「ベルベット-」も知っています。「卒業写真」も中学時代のクラブで演ったなあ…。
いわゆる「四畳半フォーク」がまだ主流だった時代、金持ちの音楽だなどと批判もあったとか。でも80年代に入って一気にそういうスタイルの音楽が広まり、ユーミンブランドともいえる地位を確立させましたよね。

ニューミュージックという言葉は、私が中学くらいまではあったような気がします。和製ポップスとか、フォーク・ロックという言葉も記憶の片隅に…。
私はラジオっ娘で、今思うといろいろ耳に入っていたなあ

あのあたりって、あのあたりかしら…前を通ったことありますよ(って、話題が違っていたらスミマセン)
straycat
連投スミマセン
>当時の顧問の先生がちょうど一回り年上
だから私がその世代だと思いますよ~(^^;
「まぶしい草野球」知ってますよ、某お菓子のCMで流れてましたよね?
私の時代はもっとその前、荒井由美の時代ですよ~
初めて聞いた時にはその斬新さに目を見張りました、「ひこうき雲」とか「ベルベット・イースター」とか、懐かしいな。
あんまりテレビに出てくれなくて、地方に住んでた私はニューミュージック(古っ)の特集を食い入るように見たのを覚えてます。

余談ですが、某呉服屋さんのおばちゃんからチラッと聞いた事あります。ほら、あのあたりでしょう?(ってナンノコトやら^^;
神奈川絵美
straycatさんへ♪
こんにちは 私もまったく同じです~いつか使うかも、と思っていても、確か情報って一年経つと価値は100分の1になるとか、そんな話を聞いたことがあるような。
でも捨てられないんですよね…。

ポンポン、瞬時にデジタルデータ化するような機械が開発されたら、全部HDDに入れちゃうのに!

ユーミン、そうなんです。私、中学のときフォークソングクラブにいまして、初めて同級生で組んだバンド(もどき)で演ったのが、「まぶしい草野球」でした。ご存知ですか?
懐かしくなって動画探しちゃいました。
http://www.youtube.com/watch?v=IxNPysY4lEA
あと、「カンナ8号線」とか…私の世代ですとほんの少し古い時代の歌になるのですが、当時の顧問の先生がちょうど一回り年上だったので、その影響もあったのかも知れません。
straycat
絵美さん こんにちは!
資料の山、よくわかります~
資料ってほんと、どんどん溜まっていきますよね。
いつか見るかも・・と思ってとっといたら、いつのまにこんなに!というほど増えてます。
それで結局情報が古くなってて使えないし、お目当てのものを取り出そうとしても効率悪くて・・それで結局使わないんですよね。

自分の頭のメモリーに全て保存できればそれが一番良いんですけれど、なにせ容量が少なくて(^^;;

捨てる事でみつかったデモテープって興味あるなぁ
ユーミン、好きでした
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