神奈川絵美の「えみごのみ」

2つのワルツ

私が仕事でお世話になっているある人は、画家をパートナーに持つ。
3月中旬、関西で個展を開いたが
時期が時期だけに、客入りが思わしくなかったそう。
「震災で、人は音楽には癒しを求めるけれど
 絵には癒しを求めないものなのね、きっと」自嘲気味に彼女はそう言った。
(そんなものなのかな)それに対する答えは、私の中でまだ見つかっていない。

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少し前、私の着物「シスレーの居る風景」のモチーフとなった
アルフレッド・シスレーとフランスの印象派の画家について書いたが、
同じ時期~少し遅れて、音楽の分野にも新たな風が吹いている。

例えば「異端児」と呼ばれたエリック・サティ。
フォーレやドビュッシーとほぼ時期を同じくし、現代音楽への橋渡しをした一人と
言われているが、
アカデミックな教育にあまりなじまず、
働き盛りの多くの時間を、酒場のピアノ弾きとして過ごした。
これは1900年に作曲されたシャンソン「ジュ・トゥ・ヴ(お前が欲しい)」の
ピアノソロバージョン。
聴いたことがある、という人は多いのではないだろうか。



サティはモーリス・ラヴェルに影響を与え、
ラヴェルはジャズ・ピアノの巨匠ビル・エバンスに影響を与えた。
「ジュ・トゥ・ヴ」の誕生後、約半世紀経った1956年、
エバンス本人だけでなく、ジャズの代表曲としても知られる
「ワルツ・フォー・デビィ」が生まれる。
姪っ子のデビィにと創られた曲だ。
これも、ジャズ好きでなくても一度は聴いたことがある、という人は多いだろう。


(ただ、ワルツといっても三拍子なのは最初の一分だけだけど・・・)


2つのワルツの共通点を、音楽理論から説明することは私にはできないが、
その時代、その時代の革新的なものは、風当たりも強いが
ちゃんと世代を超えて受け継がれるのだなあ、と思う。
(余談だが、サティもラヴェルも生涯独身で、才能の“世襲”はなされなかった)

裏を返せば
人を気にした生き方では、
たとえ世渡り上手と本人は思っていても、
結局、人並み以上のことはできないのだ。

コメント一覧

神奈川絵美
ルリ子さんへ
こんにちは ワルツ フォー デビィのあのピュアで繊細な音は、春のアフタヌーンティーにぴったりだと思っています

ロリンズもお好きなんですねー 「セント・トーマス」の明るいカリプソリズムや、「アルフィー」のブルージーな音は、何だかダミ声で歌っているような感もありますが(笑)、朗々としていてフリーダムで、自由なジャズ精神を感じます。

音楽も絵画も、知識があればそれはそれで楽しいのでしょうけれど、心のままに受け止めることこそが感性を豊かにする何よりのエッセンスになると思っています
ルリ子
優しくなれる音
http://linaruli.weblogs.jp/
絵美様、
こんにちは。 

私もビル エヴァンスの Walts for Debby, は彼の曲の中でも大好きな曲です。いつきいても癒されます。 サティもとても好きで、あの憂いのある音色、きいてて優しくなれる音です。ソニーロリンズのサックス、もお気に入りの一つです!

芸術的な才能はぜんぜんありませんが、芸術を音楽、絵画、美術、何でも楽しむことはしたいな、と思います。
神奈川絵美
環さんへ
こんにちは コメントありがとうございます。お元気でいらっしゃいましたか?

CDのお薦め、ありがとうございました!80年代という時代に加え、YMOのメンバー&故大村憲司氏&清水信行氏の参加とは、かなりとんがった(いい意味でですよ)サウンドなのでしょうね。私、mp3を買ったことがないのですが、遠くないうちに聴いてみようと思います!

出遅れコメントすみません
絵美さん、こんにちわ。以前1度コメントさせていただいた環と申します。
私の好きな「ジュ・トゥ・ヴ」は、故・加藤和彦ご夫妻が作られたヨーロッパ三部作(ダンディ&酔狂の極み!)の1つ「ベル・エキセントリック」というアルバムの最後に入っているバージョンです。この曲が録音されたのはフランスの古城を利用したレコーディングスタジオ。弾くのは、当時まだ勢いで弾いてる感が強い(笑)坂本龍一さん。音の纏う空気がとても好きです。iTunes Store で1曲買いもできます。オススメです。
神奈川絵美
りらさんへ
こんにちは 今回、記事のテーマからは外してしまったのですが、おそらくりらさんが考えていることと同じようなことを、私もぼんやりとですが思っています。

絵画の分野で印象派が生まれたのが普仏戦争やら革命やらで世相が不安定なとき。既存の概念の打破とか、もしかしたら反権力的なスピリットが新しい様式を生み出したのかな、と思ったりします。
現代の「不安定さ」は当時のそれとはまたスケールも性質も違うのかも知れませんが、そういう機運が盛り上がる感じは、少なくとも日本にはありませんよね・・・。
りら
選ばれてある者の・・・
というセリフは有名ですが・・・・
確かに、歴史に残る芸術家たちはいわゆる「普通」とは相容れない部分を持っていたのだと思います。
でも、最近ちょっと残念に思うのですが、情報伝達が発達した所為か?
これが資本主義社会の進んだ結果なのか?
芸術家として名を成すには世渡りの部分が随分重要になってきているのではないでしょうか?
果たして今後、サティが生きたベルエポックの時代のような大きな才能が世に出てくることができるのでしょうか??
なぁんて・・・えへへへへ
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは 「Walts for Debby」はジャズを知らなくても、一家に一枚欲しい名盤だと思います
人生をかみしめるほどに、音にも味わいが出てくる・・・そんな音楽との出合いは心を豊かにしますよね

私は中学1年か2年のとき、FMラジオでグレン・ミラー・オーケストラをエアチェックしたのをきっかけにスイング・ジャズに惹かれました。
でも初めて“買った”ジャズのアルバムとなると、(小学生のときのkylynは別として)ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」とソニー・クラークの「クール・ストラッティン」じゃなかったかなあ。18歳のころ。どちらもバリバリのバップで、酒やドラッグのにおいがプンプンする作品だったような
神奈川絵美
セージグリーンさんへ
こんにちは ええっ、ジャズを歌っていらっしゃるんですね、すごーい
80年前というと、まさにガーシュウインやコール・ポーターの時代? 
今なお、聴いて心躍る有名なスタンダードナンバーがたくさんありますよね。

>自分が自分にOKを出せる生き方
そうですよね。生きる道に迷いのない人は強いと思います。
Tomoko
30代も半ばになって、はじめて自分で買ってみたジャズのアルバムが、Bill Evans Trio の「Walts for Debby」と、Charkie Haden の「Night and The City」でした~!
なんとなく選んだだけでしたし、今もそうたくさんジャズCDを持ってるワケではないので、エラそ~なことは言えないんですけど、この最初の2枚のアルバム、年齢がいけばいくほど心地よくハートに響いてくれて大好きなアルバムです。
セージグリーン
本物は、、、
うーん、なんて洗練されていておしゃれな音でしょう。
本物は時が経っても色褪せません。いえ、時が経つほどに輝きを増してきますよね。
私も趣味でジャズを歌っていますが、新しい楽譜を渡され、「え!これが80年前の曲?」と驚かされることがしばしばです。
人が何と言おうが、自分が自分にOKを出せる生き方をしたいものだと思います。

神奈川絵美
すいれんさんへ
こんにちは 「出る杭は打たれる」という言葉通り、人とは違う何かを持っていると(才能であれ何であれ)好奇の目にさらされやすいですよね。
でも、非凡こそが芸術でも科学でも医学でもブレイクスルーをつくる「絶対条件」とすら、私には思えます。

この3人(サティ、ラヴェル、エバンス)、本文には書きませんでしたが、酒や事故、薬!で
一般的には「幸せな人生の幕引き」とはならなかった人ばかりですね。
そういうところにも非凡の宿命みたいなものを感じます。
すいれん
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
確かに才能と非凡は比例していると思います。
私なんか才能のかけらもありませんが、それでも子供の頃から人と違う物の見方をしたので、変人扱いでした(笑) でも、だから描ける絵というのもあるのだと、今は開き直ってますが。才能ある人達の孤独と苦労は、察して余りあるものですね。でもやっぱり、そういう人達の音楽も絵も文章も素晴らしい。非凡、万歳!
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