神奈川絵美の「えみごのみ」

東京春音楽祭 2018

例年なら、お花見のピークでにぎわっているはずの
ここは上野公園。

すっかり、緑一色です!

毎年3月末~4月上旬にかけて
クラシックを中心としたさまざまなコンサートが
開かれる、東京春音楽祭。


ここ数年の目玉はワーグナーのオペラコンサートで
リングの上演が続いていたのですが、
今年は何と


当代髄一のヘルデンテノール、ワーグナー歌いの
K.F.フォークト様が、
聖杯の騎士ローエングリンを歌うとのことで
私は半年以上前にチケットをとり、楽しみにしていました。

着て行ったのは

お友達のリクエストがあり、
浦野理一さんの型絵染のきものに、同じく浦野さんの縦節紬の無地帯を。
秋にフォトグラファー武藤奈緒美さんに撮っていただいたときと
ほぼ同じコーデです。


お昼は公園内の日本料理店「韻松亭」にて。


湯波刺しに菜の花添え、
筍、冥加、酢蓮、黒むつ、蟹真丈、
鯛にハマチのお造りなどなど、春の味覚をふんだんに盛り込んだ
お重のランチをいただきました。

この後、開演前までトーハクで過ごし、
開放されていたお庭の散策や、アラビア展を鑑賞したのですが
それらは後日、余裕があれば改めてアップしますね。

さて、コンサート会場は東京文化会館。

ここで、オペラ通の着物友、ロンドンの椿姫さま(右)、
そして彼女のお友達Kさんと合流。
Kさん、市松のスキッとした着物がとても良くお似合い

ロビーでは
拙ブログを開設時からご覧くださっていたという
Nさんと初めまして!

さらりとした水彩画風なタッチの藤が
爽やかな春~初夏の風を呼んでくれそう。


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(ここからはコンサートレポです。個人の感想を勝手に書いています)

さて、音楽祭のメインイベントといってもいいオペラコンサート。
ところが開演直前に
「フォークトは初日公演後に発熱し……」とアナウンスが。

ここで会場がざわめき、軽い悲鳴も。

「……ましたが、本公演では歌います」と続き、

おおーっと会場どよめき、拍手も起こりました。

ただ、そのようなエクスキューズがあるということは
「本調子ではありませんが許してね」という意味で、

第一幕の第二場、登場したときの第一声
Nun sei bedankt, mein lieber Schwan!
(ぼくの可愛い白鳥よ、ありがとう!)が
何と弱弱しかったことか…。

もともとこの出だし、つーっと細くて清らかで、
でも強い糸がおりてくるようなハイトーンなのですが
いつものフォークト様はこれをそのイメージ通り、
天井から光が差すような精鋭さと、優しさを備えた声で
歌うのです。
それが今回は、何とも心もとなく……

ロンドンの椿姫さまによると
フォークト様は欧州公演でもたびたび風邪をひき、
休演もあるそうなので、
今まで十割、聴くことができた私はラッキーなのかも知れません。

声量はいつもの8割程度(私の感覚です)
低音になるほど声にざらつきが多少感じられ、全体的には7割強の出来
という印象でした。

でも却って
(フォークト様も、人間だったんだ……)と、妙に安心も
王子然としたルックス、甘いマスクは健在で
(本調子でなくていいよ。歌ってくれただけでもいいの)と
(おそらく多くの観客に)思わせるところはさすがです。


実は私にはもうお一人、お目当てがいまして

(過去のパンフレットより)

ハインリヒ王を歌った、バスのアイン・アンガー様。
渋くてカッコいい、力強い声の持ち主です。
この方が出てくると、そのゲルマン然とした風貌に
バックの合唱団の
Zum Gottesgericht!
(神明裁判!)がリアリズム満点になります

アンガー様は(私には)ドイツ語が聞き取りやすいのも魅力で
今回、フリードリヒを歌ったエギルス・シリンスさんも、
声量豊かで素晴らしい歌唱でしたが、
響きが良すぎるのか、言葉は今一つ聞き取りにくかったような。
以前、ほかの方でも感じたのですが
ドイツ語の「sch」(英語の「sh」)が必要以上に強調されるの
ですよね。
(地域にもよりますが、ドイツ人はそんなにシュッシュッ言わない)

エルザ役のレジーネ・ハングラーさんは
美しくピュアで、ちょっと無機質な感じの歌いぶりが
エルザによく合っていたと思います。

オルトルート役のぺトラ・ラングさんは
音程は危なげなかったのですが、抑揚が役に追いつかず、
身振り手振りでカバーした印象。声量も、張り上げるところは良かったのですが
ほかは今ひとつでした。

さて、第一幕でははらはらさせられたフォークト様も、
第3幕には調子を上げてきて
有名なグラール語りや、特にエルザに向かって歌う場面は
以前、新国立で聴いたときと同じ位、うっとりさせていただきました

なお、オケはN響で、指揮はウルフ・シルマーさん。
知人評では一言「薄い!」でしたが、
確かに、初心者の私が聴いてもワーグナーらしくない演奏でした……。
よく言えば、歌手を“たてる”優しく丸い、おとなしい演奏で、
あまりあざといのよりは、私は聴きやすいなと思いましたが……。

ともあれ、本調子でないながらも
今が“旬”であろうフォークト様を
一昨年のローエングリン、昨秋のタンホイザーに引き続き、
こんなに短期間で何度も聴くことができて、とても嬉しかったです。
今のところドイツ語のオペラ鑑賞が圧倒的に多い私ですが、
イタリア語やフランス語(マノン・レスコーはフランス語版
(マスネ作曲「マノン」)がいいと椿姫さまに教えていただきました)の
オペラも聴いてみたいなあ。

コメント一覧

神奈川絵美
straycatさんへ
こんにちは
ぜひぜひまた、ベストな調子のときに
ご一緒いたしましょう
特に海外のオケを聴きなれていると、
日本は薄いのでしょうかね・・・。ベルリンとか
ウイーンは違うのでしょうか、私も今ひとつわからず。
バイエルンも確かに、圧巻、というほどでは
なかったですよね。
でも何と言うか「オペラコンサート」のオケとしては
これもありかな、聴きやすいな、という印象では
ありました。
まあ、ヤノフスキさんと比べると、
精神性みたいなエッセンスはちょっと・・・ではありましたが。。。

浦野さんのお着物、ご覧いただけて良かったです
そうなんです、意外と落ち着いているのです、が、
八掛が赤…
straycat
絵美さま、コンサートが聴けて羨ましいです。
8割でもいいから聴きたかった
日本のワーグナーは「薄い」っていうのは、もう定番というか、いつでもどこでもそう言われます。
私は日本でしか聴いたことがないので、実感としてわからないのですが、「厚い」「うねるような」ワーグナーを一度でいいから聴いてみたいです。
バイエルンもそうじゃなかったですよね??
不思議だ。
Kさん、すらっとして良くお似合いでしたね。
浦野さんの小紋、とっても素敵でした。あの落ち着いた色あいは、もうずーっと着れますよ
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