ここは上野公園。
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すっかり、緑一色です!
毎年3月末~4月上旬にかけて
クラシックを中心としたさまざまなコンサートが
開かれる、東京春音楽祭。
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ここ数年の目玉はワーグナーのオペラコンサートで
リングの上演が続いていたのですが、
今年は何と
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当代髄一のヘルデンテノール、ワーグナー歌いの
K.F.フォークト様が、
聖杯の騎士ローエングリンを歌うとのことで
私は半年以上前にチケットをとり、楽しみにしていました。
着て行ったのは
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お友達のリクエストがあり、
浦野理一さんの型絵染のきものに、同じく浦野さんの縦節紬の無地帯を。
秋にフォトグラファー武藤奈緒美さんに撮っていただいたときと
ほぼ同じコーデです。
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お昼は公園内の日本料理店「韻松亭」にて。
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湯波刺しに菜の花添え、
筍、冥加、酢蓮、黒むつ、蟹真丈、
鯛にハマチのお造りなどなど、春の味覚をふんだんに盛り込んだ
お重のランチをいただきました。
この後、開演前までトーハクで過ごし、
開放されていたお庭の散策や、アラビア展を鑑賞したのですが
それらは後日、余裕があれば改めてアップしますね。
さて、コンサート会場は東京文化会館。
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ここで、オペラ通の着物友、ロンドンの椿姫さま(右)、
そして彼女のお友達Kさんと合流。
Kさん、市松のスキッとした着物がとても良くお似合い
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ロビーでは
拙ブログを開設時からご覧くださっていたという
Nさんと初めまして!
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さらりとした水彩画風なタッチの藤が
爽やかな春~初夏の風を呼んでくれそう。
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(ここからはコンサートレポです。個人の感想を勝手に書いています)
さて、音楽祭のメインイベントといってもいいオペラコンサート。
ところが開演直前に
「フォークトは初日公演後に発熱し……」とアナウンスが。
ここで会場がざわめき、軽い悲鳴も。
「……ましたが、本公演では歌います」と続き、
おおーっと会場どよめき、拍手も起こりました。
ただ、そのようなエクスキューズがあるということは
「本調子ではありませんが許してね」という意味で、
第一幕の第二場、登場したときの第一声
Nun sei bedankt, mein lieber Schwan!
(ぼくの可愛い白鳥よ、ありがとう!)が
何と弱弱しかったことか…。
もともとこの出だし、つーっと細くて清らかで、
でも強い糸がおりてくるようなハイトーンなのですが
いつものフォークト様はこれをそのイメージ通り、
天井から光が差すような精鋭さと、優しさを備えた声で
歌うのです。
それが今回は、何とも心もとなく……
ロンドンの椿姫さまによると
フォークト様は欧州公演でもたびたび風邪をひき、
休演もあるそうなので、
今まで十割、聴くことができた私はラッキーなのかも知れません。
声量はいつもの8割程度(私の感覚です)
低音になるほど声にざらつきが多少感じられ、全体的には7割強の出来
という印象でした。
でも却って
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王子然としたルックス、甘いマスクは健在で
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(おそらく多くの観客に)思わせるところはさすがです。
実は私にはもうお一人、お目当てがいまして
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(過去のパンフレットより)
ハインリヒ王を歌った、バスのアイン・アンガー様。
渋くてカッコいい、力強い声の持ち主です。
この方が出てくると、そのゲルマン然とした風貌に
バックの合唱団の
Zum Gottesgericht!
(神明裁判!)がリアリズム満点になります
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アンガー様は(私には)ドイツ語が聞き取りやすいのも魅力で
今回、フリードリヒを歌ったエギルス・シリンスさんも、
声量豊かで素晴らしい歌唱でしたが、
響きが良すぎるのか、言葉は今一つ聞き取りにくかったような。
以前、ほかの方でも感じたのですが
ドイツ語の「sch」(英語の「sh」)が必要以上に強調されるの
ですよね。
(地域にもよりますが、ドイツ人はそんなにシュッシュッ言わない)
エルザ役のレジーネ・ハングラーさんは
美しくピュアで、ちょっと無機質な感じの歌いぶりが
エルザによく合っていたと思います。
オルトルート役のぺトラ・ラングさんは
音程は危なげなかったのですが、抑揚が役に追いつかず、
身振り手振りでカバーした印象。声量も、張り上げるところは良かったのですが
ほかは今ひとつでした。
さて、第一幕でははらはらさせられたフォークト様も、
第3幕には調子を上げてきて
有名なグラール語りや、特にエルザに向かって歌う場面は
以前、新国立で聴いたときと同じ位、うっとりさせていただきました
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なお、オケはN響で、指揮はウルフ・シルマーさん。
知人評では一言「薄い!」でしたが、
確かに、初心者の私が聴いてもワーグナーらしくない演奏でした……。
よく言えば、歌手を“たてる”優しく丸い、おとなしい演奏で、
あまりあざといのよりは、私は聴きやすいなと思いましたが……。
ともあれ、本調子でないながらも
今が“旬”であろうフォークト様を
一昨年のローエングリン、昨秋のタンホイザーに引き続き、
こんなに短期間で何度も聴くことができて、とても嬉しかったです。
今のところドイツ語のオペラ鑑賞が圧倒的に多い私ですが、
イタリア語やフランス語(マノン・レスコーはフランス語版
(マスネ作曲「マノン」)がいいと椿姫さまに教えていただきました)の
オペラも聴いてみたいなあ。