どうして行かずにすまされようか。
夏日かと言われたほどの快晴の日。
この着物だとかなり暑いけれど……。
国立近代美術館工芸館へ行くなら、
作品が所蔵されている福本潮子さんの着物を
どうして着ないでいられようか。
深い藍染のトルファン綿。
帯は前回の藤の小紋同様、“すべりこみ”で
ツツジ&ハナミズキ風の柄。
抽象的な絵なので、もう少しひっぱれないことは
ないけれど、
生地が塩瀬なので、昨今の温暖化ではせいぜい5月初旬までかな。
帯締めは伊勢由さん、帯揚げは東三季さんの薄紫の花の絞り。
久し振りの工芸館。
竹橋駅からやや歩くのが難点だけれど、
北の丸公園そばの散歩と思えば気分も良いし、
この建物の雰囲気がとても好き。
芹沢介の作品展は、
着物を着るようになってからもう何度か、
いろいろな場所で観ている。
今回は、入場料550円で充実の展示数。おススメです!
本題に入る前に……。
工芸館内の常設展は、事前に受付に申し出れば
撮影可能で、
私にとってはこの一角、まさに「至福の並び」。
左から、ハマショーと愛を込めて呼んでいる浜田庄司、
河井寛次郎、黒田辰秋、そして額絵が芹沢介。
-------------------
観れば観るほど、芹沢介は天性のデザイナーであり
まるで呼吸をするのと同じ感覚で絵を描ける人なんだなあ、と思う。
型染伊呂波文六曲屏風。
「に」は鶏、「を」は扇、「ふ」は葡萄…など
文字と絵を寄り添わせて一つのアイコンに。
どれも活き活きと大らかで、観ていてとても楽しい。
「木の字」。木に因んださまざまなモチーフが踊り、
思わず笑顔が。
これは肉筆画で
「梅にうぐいす」。
芹沢介は旅先でひたすらスケッチするのが好きだったそうで
こうした“完成品”ではない、下絵もたくさん
今回は展示されていました。
ドンキホーテを、確か鎌倉時代の武士の物語に置き換えた
「絵本どんきほうて」。
折口信夫や斉藤茂吉などの文人とも交流があり、
文学的な創作も得意だったよう。
こう思うのもおこがましいけれど、
私ももし、文字や言葉が出てくるのと同じ感覚で
すらすらと絵を描くことができたら、生活が何倍も
楽しくなるだろうになあ…。
そして、ちょっと感激したのがコチラ。
芹沢といえばカレンダー。
終戦後、何もかも焼き尽くされてしまったような
状況の下で、1946年から制作を開始し、
彩を失い荒んだ人々の心を、明るくしたという。
70年代まで制作が続けられた中で、
今回は何年か分のカレンダーが展示されていたけれど、
その中に、
私の生まれ年があって…嬉しい!
1967年の数か月分。
私の誕生日は土曜日だったのですね。
(まあ、曜日くらいは今どき、知りたければネット等ですぐ
調べられるでしょうけれど)
三月は他の年も、真ん中に大胆な絵が入っていたり、
お雛様などの可愛らしい図案が多くて、それも嬉しい。
マッチ箱にもラベルにも団扇にも
描けるものには何でも描く…そこには自己主張とか自己実現と
いったパッションめいたものより、
もっと柔らかい…あふれ出んばかりの素の愛情を感じる。
もちろん、努力なくしてここまで後世に伝えられるものが
遺るはずもないのだけれど、
芹沢介にとって、絵で表現することはそもそも自然の営みであり、
それを迷うことなくまっとうした、そんな潔さが
どの作品にもみてとれる。
だからだろうか、作品に囲まれていると
とても心安らかになるし、前向きにもなるし、
浄化されるような気分にも。
(そういえば、ルノワールもそうだったな…)
「芹沢介のいろは」展は5月8日まで。公式サイトはコチラ。
着物の展示も多数ありました。ご興味のある方はお急ぎくださいね。
5月1日は美術館、工芸館とも無料開放日だそうです。
コメント一覧
神奈川絵美
sogno
神奈川絵美
Tomoko
最新の画像もっと見る
最近の「美術展・工芸展レポート」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2009年
2008年
人気記事